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狂牛病全頭検査から1カ月

給食復帰、東京は10区のみ



◆23区調査結果から…「国の対応不十分」の声も

 狂病病(牛海綿状脳症)騒動の沈静化を図ろうと日本政府による全頭検査が始まって1ヵ月が経過したものの、学校給食での牛肉離れ≠ヘいまだに解消されていない。民団新聞が都内23区を電話調査したところでは、自粛解除を決めたのは16日現在、10地区にしか過ぎなかった。保護者の不安解消に向けた国側の対応がまだ不十分だとする声も根強い。

 調査によれば、各区教委の自粛解除は10月22日前後から始まっており、国の全頭検査に基づく判断であることがわかる。ただし、学校長に「従前に戻す」と解除を通知した10の教育委員会でも、内心はいまだに及び腰。

 荒川区では「自粛は解いたが、(牛肉を)使いなさいということではない」と話している。なかには「保護者の理解を得ることが(解禁の)条件」(板橋区)とわざわざ断るところもあった。これは国側の検査体制がいまひとつ説得力を欠くためと思われる。

 ある区教委の学校給食担当者は「国から取り扱いのFAXはぽんぽん流れてくるが、聞き及んだようなプレス発表ばかりで腹立たしいかぎり。住民と直接接する現場としては『安全と思われる』というような無責任な言い方には追随できない」と憤りを隠さなかった。

 これは狂牛病の発生原因、発生経路がいまだに不明なことが大きいようだ。

 杉並区では「安全宣言」のお墨付きのない17日以前の牛肉を自主的に焼却処分するなど独自に安全確認のル―トづくりを行っているほど。

 給食で牛肉、および牛肉の一部を食材に使った加工品はピビンパ丼やハンバーグ、トマトスパゲティなど多岐にわたっている。しかし、食材そのものが比較的高価なため、給食に登場する頻度は多くても月2、3回程度と少ない。それでも、各教育委員会が必要以上に神経質になるのは「家庭と違って学校では子どもたちが献立を選べない」ため。文京区教委では、自粛解除の条件として「多くの保護者が牛肉を安心して食べられるという状況が来ること」と話している。


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給食メニュ一解禁の状況(23区)

足立区  ◎  10月30日付で解禁
荒川区  ◎  11月1日付で解禁
葛飾区  ×  保護者の不安を取り除くため、豚肉に振り替えている
墨田区  △  シチュ―やカレ―のル―など加工品については自粛中
板橋区  ◎  11月14付けで解禁。保護者の理解を得ることを条件に
江戸川区 ×  現在、検討中
大田区  ×  もう少し様子を見る
北区   ×  冷凍肉の処分がはっきりしていないため
江東区  ◎  10月29日付で解禁
品川区  ◎  10月23日付で解禁
渋谷区  △  来年の1月の解禁に向けて検討中
新宿区  ×  安全性が確認できれば解禁
杉並区  ×  独自の安全体制に取組中
世田谷区 ×  保護者に不安が残っているため
台東区  ◎  11月16日に解禁
中央区  ×  年内は献立が決定済み。来年については未定
千代田区 ◎  来年1月から解禁
豊島区  ×  見合わせている状態
中野区  ◎  11月15日付で解禁
練馬区  ×  急いで解禁する必要性を認めない
文京区  ×  保護者が安心できる状況が来れば解禁する
港区   ◎  10月22日付で解禁した
目黒区  ◎  保護者の理解を得ることを条件に10月23日付で解禁した

◎解禁 △条件付き解禁 ×検討中


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苦境打開へ新メニュー

牛肉離れに対抗家庭料理で活路
都内の同胞焼肉店

 全頭検査から1ヵ月が過ぎたものの、消費者の狂牛病に対する不信感は依然として消えてはいない。厳しい経営を強いられている在日同胞焼肉業界の中には、「牛肉だけに頼ってはいられない」とばかり新しいメニューを取り入れる店も出てきている。

 東京・新宿区歌舞伎町で店を構える「眞一館」(卞保社長)は、新たに北海道産直の海鮮類、鹿児島産の黒豚、鳥取産の大山どりを使った料理をメニューに加えた。

 豚は肉の表面にごま油を塗った。これは豚肉の油を封印し、少しでも牛肉の感覚で食べてもらえたらという卞社長の心遣いから生まれた工夫だ。トントロ(豚トロ)は首の部分で、1頭からわずかしかとれない珍味だ。しかし、牛の味に慣れた客の反応はというと期待していたほどは芳しくなかった。

 一方、韓国の家庭料理のほうは来客からの評判もよく、メニューの数を増やそうと考えている。メニューはいまのところ貝ムンチュ、トラジ、ケジャン、カキ刺しなど20品目以上にのぼる。新宿以外のチエーン店で1品200円の小鉢で出したところ大当たり。

 卞社長は「焼肉店はこれまであまりにも牛肉に頼りすぎた。これからは本来の韓国料理に戻り、1品だけでも看板となる料理を開発していかなければ生き残っていけないのではないか」と強い危機感を持っている。


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農水省・冊子で安全性PRへ
BSE対策チームの話

 農水局が地方にある各都道府県で聞き取り調査したところ、全頭検査を始めてから1ヵ月で10〜20%の地域が自粛を解除している。これからも、牛肉の消費拡大に向けて小学校に児童を通わせているすべての保護者に冊子を配り、安全性をPRしていく。シンポも計画している。

(2001.11.21 民団新聞)



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