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韓日ダブルの染織家・盧恵子さん

日展の工芸部門で入選果たす



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文化・型絵染の魅力に惹かれて14年
工程が好きで楽しい…両国文化融合させた作品も


 型絵染の魅力に惹かれ、精力的な制作活動を続ける一方で、家業の家具工場の手伝い、公民館や自宅などで染め物を教える多忙な日々を送る韓日ダブルの盧恵子さん(53・日本名広田恵子)=静岡県藤枝市在住。

 これまで数々の展覧会や公募展で入選してきた作品の中に、韓国の題材を取り入れたものも少なくない。11年前、第1作目を初出品した静岡県工芸美術展で最高賞を受賞した衝立作品「ソウル・ショッピング」は、姑、夫の孫讃進さん(59)、息子と訪韓した時に買ったコムシンや螺鈿のテーブルなどが、韓国の民画を思わせる色彩で染め上げられている。

 87年当時、油絵教室の仲間たちと、型絵染の第一人者で人間国宝の故芹沢_介氏の美術館を訪れた時、型絵染の世界に魅了された。その後、染物屋で月1回、1年間にわたり型絵染の基本的な手ほどきを受けながら、独学で研究を続けた。

 型絵染は、自分が染めたいものをデザインするところから始まる。渋紙(柿渋を塗った和紙)にデザインした絵柄を切り抜き(型紙)、白布地の上に型紙をのせて糊置きをする。次に色を染めていく色差しや地染めなど、いくつもの工程をふまなければならない。

 染め物は、衝立、着物、座布団、のれんなどに形を変え、新たな作品として生まれ変わる。「1つひとつの工程が好きで楽しい」と目を輝かせながら話す。そんな盧さんが、さらに上を目指して挑戦したのが日展だ。昨年に続く2度目の第33回日展の工芸部門に、型絵染の作品を出品し入選を果たした。

 入選作の「交響」は黄色を基調にした画面に、家業の家具工場の中で回るノコギリの円盤と、飛び散るおがくずをあしらったリズム感あふれる作品。この作品には、一番の理解者である讃進さんと、応援してくれる子どもたちへの感謝の気持ちが込められている。内定の知らせを電話で受け取った時、驚きの中「ありがとう」と讃進さんに飛びついた。

 3年前から年1回、市内の中学校で行っている講演では、生徒たちに自らの出自を語り「目標を持って一生懸命頑張ろう」と話してきた。

 日本生まれの日本育ち。「その中でも韓国の心は忘れたくない」という。日本の伝統工芸の中に、韓国のエッセンスを加えた作品が多いのも、韓国と日本の文化を愛しているからこそ。

 多忙な生活をむしろ楽しんでいるようだ。向上するために日々の勉強を欠かさない。来年、今年以上の作品を出品するために「これから身を引き締めて精進していきたい」と話す。

(2001.11.21 民団新聞)



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