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在日へのメッセージ

小林一博(東京新聞論説委員)



悪政の犠牲は住民に

 政治が悪いと、国民は哀れだ。アフガニスタンのことである。

 国連が中心になって、暫定政権をつくることで合意した。「もっとも小さな第一歩」であるが、まずは原理主義による狂気の統治、戦乱に終止符を打つ合意ができた。

 それにしても、気の毒なのは国民である。長年にわたって、外国の侵略や内戦、圧制に苦しんできた。これから、国連機関や民間団体などが救援に動き出すが、まだまだ困難は続く。

 アフガンには、いくつかの民族が住んでいるが、かつては遊牧と農業ののんびりした国だった。それが19世紀以降いくたの戦争が起き、20年ほど前の旧ソ連侵攻以来、内戦が続いた。

 やがて政治よりも宗教を絶対視するイスラム原理主義が権力を握り、このため、多くの人々が生活苦などから食糧や仕事を求めて、周辺の国に逃れ、難民になった。

 原理主義やイデオロギーは、純粋を求める。これが権力を握ると、極めて偏狭な政治になる。ところが、人間はいい加減な存在である。それを容認せずに押さえ込もうとすると、結果として圧制、あるいは独裁にならざるをえない。

 日本の隣にも、経済は破たんし、餓死者を出すほどの食糧危機に苦しむ国がある。こちらは、アフガンのように内戦も戦争もないのにである。難民も増え続け、韓国への亡命者は、初めて年間500人を超えた。

 国家の指導者、その政治が間違ったため、国民が犠牲になる。共産主義と儒教の原理主義による政治には無理がある。

 昨年の南北和解の動きも雲散霧消した。トンネルの出口は見えない。

(2001.12.12 民団新聞)



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