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本番まで約半年、ヒディンク監督は韓国代表をいかに仕上げていくのか |
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成長著しいヒディンクコリア
奇跡のドラマを期待
2002年W杯の対戦国が決まった。今月1日に釜山で行われたW杯本大会抽選会。世界各国から1300人あまりのマスコミ関係者が集まり、ペレ、ヨハン・クライフ、ミシェル・プラティニなど往年のスター選手たちがドローワーを務めた抽選会の結果、韓国が属するD組にはポーランド、米国、ポルトガルという3カ国が振り分けられることになった。
開催国の特権としてシード権を得ていた韓国は、フランス、ブラジル、ドイツ、アルゼンチン、イタリアといった一流国との対戦こそ回避できたものの、今回の組み分けに落胆した人は多い。
◆韓国、確かに厳しいグループだが
ポーランドは激しい欧州予選をいの一番で勝ち抜いてきた古豪であり、かつてサッカー不毛の地とされてきた米国も、94年W杯開催と翌年から始まったプロリーグMLS(メジャーリーグサッカー)の活況で近年は着実に力をつけてきている。
89年、92年世界ユース選手権連覇を成し遂げたルイス・フィーゴ、ルイ・コスタ、ジュアン・ピンターらゴールデンエイジ≠スちが成熟したポルトガルは、優勝候補の一角だ。もともと苦手にしている欧州勢が2カ国も同居することになったばかりか、そのうちのひとつが優勝候補なのだがら、強気で刺激的な見出しを並べる韓国のスポーツ新聞も「厳しい組に入った」とややトーンダウン気味。
ベルギー、ロシア、チュニジアと対戦することになり、「ベスト16は確実。ベスト8の可能性も十分!」との見出しが派手に躍った日本とは対照的でもあった。
◆強豪の中での予選突破に大きな意義
とはいえ、そもそもW杯に進出した国々はいずれも厳しい大陸予選を勝ち抜いてきたチーム。つまり、どの国も強豪なのだ。それにサッカーは何が起こるかわからないスポーツでもある。過去のW杯でもコスタリカやカメルーンが下馬評を覆してベスト16に進出。逆にスペインやコロンビアなど、本命視されたチームがグループリーグ敗退したケースもあった。W杯に絶対はないのだ。そういう意味で言えば、各グループに有利不利はない。韓国も日本も置かれた状況は同じというのが、私の率直な感想だ。
それに韓国の先行きが暗いわけでもない。むしろオランダの名将、フース・ヒディンク監督率いる韓国代表のこの1年の歩みを振り返れば、今後が楽しみでもある。
◆攻守のコンパクト化、サイドからの速攻が浸透
今年1月の香港カールズバーグ杯から本格始動したヒディンク・コリア。5月のコンフェデ杯ではグループリーグ敗退、8月のチェコ戦では0対5の大敗を喫するなど、もがき苦しむときもあったが、セネガル、クロアチアを迎え撃った11月のAマッチ3連戦では1勝1敗1分けで乗り切り、今月9日に行われた米国との今年最後の親善試合でも1対0の勝利を飾った。
いずれの試合もこの目で見てきたが、「ヒディンク・コリア」は着実に力をつけている印象だ。攻守の間隔がコンパクトになり、スピードあふれるサイド攻撃で活路を見出していくスタイルが浸透。李天秀、崔兌旭、宋鍾國ら若手の台頭で世代交代も進み、激しいレギュラー争いがチーム力向上を促進させる相乗効果も生み出している。
今年のAマッチ通算成績は9勝5敗4分け。招集された選手数はのべ56人。守備の組織力や個々の判断スピードの向上など課題も多いが、ここにきてチームとしての形が整いつつあるのだ。
◆本大会への期待感は膨らむばかり
しかも、監督自らが「テスト期間」と位置付けていた1年が終わり、いよいよ来年からは本大会に照準を合わせた強化プログラムに突入するという。
年明け早々の1月には、ゴールド杯(北中米カリブ海選手権)に参加。3月には長期間の欧州遠征を予定しており、4月からは集中合宿を実施する計画だ。それと平行してW杯対戦国のスカウティングも徹底し、ライバルたちを丸裸にするというのだから、本大会への期待感は膨らむばかりだ。果たして韓国は本番までの数カ月でどれだけ力を蓄えていくのか。興味は尽きないところである。
重ねて言うが、確かに韓国の組分けは厳しいかもしれない。対戦国にはビッグネームが並ぶ。3戦全敗の最悪の事態すらありうるかもしれない。ただし、スリルがあるだけ目標である決勝トーナメント進出を果たしたときの歓喜は格別なものとなるだろう。W杯にスリルとドラマを求めるのなら、断然、韓国で決まりだ。
ヒディンク・コリアが奇跡のドラマを演じてみせてくれることを信じて、私は来年も太極旗戦士たちを追いかける。
(スポーツライター)
(2001.12.12民団新聞)
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