民団新聞 MINDAN
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同胞が徴税や選挙事務

従事課長補佐級管理職にも



土地資産から課税額を算出する
逗子市の金明夫さん

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神奈川県逗子市、兵庫県尼崎市・川西市の
事例から形がい化する「当然の法理」

 住民税の徴収や選挙事務、生活保護の決定などは「公権力の行使」にあたり、「当然の法理」によって外国籍公務員は就けないとされてきた。しかし、一部の自治体ではすでに在日韓国人がこれらの職務に就いており、現実に何も問題が起きていない。「当然の法理」は先進的な自治体によって土台から崩されつつあるかのようだ。

 在日3世の金明夫さん(36)は神奈川県逗子市の課税課資産税係に配属されて今年が3年目。地方税法に基づき、無断で他人の敷地に入る権限を与えられている。徴税吏員証と固定資産税評価補助員証を手に独自の基準で路線価を算出、課税額を決めていく。

 従来の国の見解からすれば、これは市民の自由と権利を制限する「公権力の行使」にあたる。政令市で初めて外国籍に一般職の門戸を開放した川崎市でも税金の徴収など182の職務を「日本の統治作用」に関するものとして外国人の任用を制限しているのが現状だ。

 金さんは「自治省(現総務省)がダメということをやってみたかった」という。欠員が出た段階で手を挙げた。在日外国人が公務員をやっても、税の徴収をやっても何ら問題がないことを自ら証明したかったからだ。

 正式に異動の辞令が出たときは「市の職員に採用されたときのようにうれしかった」。支援者からは「逗子市はよくやるね」という声を聞いた。

 金さんのような事例は東日本では珍しいが、関西地区ではごく日常的だ。兵庫県尼崎市では在日同胞職員が滞納税を徴収する「戸別訪問隊」に応援で加わり、選挙事務にもごくあたりまえに携わってきた。同市役所で建築職に携わる黄光男さん(46)も10年ほど前まで建築指導課で「公権力の行使」にあたるとされる許可申請を受け付けていた。黄さんは「建築基準法に基づき審査にあたるので(公権力の行使は)外国人でも何の問題にもならない」という。

 同川西市役所で一昨年、一般行政職の管理職にあたる課長補佐級の副主幹に昇任した在日韓国人2世の孫敏男さん(46)も「本人の能力と周りの評価で昇任していくのは日本人も外国人も同じ。3世世代がどんどん受験して公務員なっていけば、国の見解と現場の実態がいかにかけ離れているかをもっと浮き彫りにできるのでは」と話している。

 これに対して総務省側では「どういう職種が『当然の法理』という基本原則にあたるのかは地方公共団体によって様々で、統一して示してはいない。相談があれば自治体の考えを聞いて相談に応じる」との考えだ。

(2002.01.24 民団新聞)



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