民団新聞 MINDAN
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共生へのキックオフ

鼎談・2002W杯
ホスト都市の韓日・在日<横浜>



左から黄昌柱民団神奈川本部団長
 高秀秀信横浜市長
 徐賢燮駐横浜韓国総領事

◇◇鼎談参加者◇◇
黄昌柱民団神奈川本部団長
高秀秀信横浜市長
徐賢燮駐横浜韓国総領事


■□
市民同士の交流もっと盛んに

 韓日両国が共催するサッカー・ワールドカップ(W杯)の開催が近づいている。韓日それぞれ10の開催地では現在、最後の仕上げに余年がない。「民団新聞」では史上初の共催を成功裏に導きたいとの思いから、開催地の自治体長、開催地を統轄する韓国総領事、そして当該の民団本部団長による鼎談を企画した。第1回は横浜(神奈川)。W杯の準備状況や雰囲気高揚、そして今年が「韓日国民交流の年」であることを踏まえ、「ポストW杯」についても話し合ってもらった。(敬称略)


黄団長

■□横浜の準備状況
「住民」として最善尽くす…黄
県内「在日」の協力に期待…高秀

 高秀 開幕戦と決勝戦には元首級が出席するのを見ても明らかなように、他の試合とは重みが違う。要人に限らず大勢の方の受け入れに当たって遺漏のないように、応援の人も含め内外の人をスムーズに受け入れる準備を進めてきた。試合で選手が十分活躍できるように、競技場の整備も必要だ。韓国からも多くの人が来るだろう。言葉の問題もあるので、県内の在日韓国人の皆さんにも協力いただき、温かく迎え入れたい。

 黄 米国への多発テロによって国際的な心配もあったが、地域に住む韓国人として、最善を尽くしてW杯共催を成功に導いていかなければならないと痛感している。横浜市では昨年、韓国語の通訳ボランティアを公募したが、公募に当たっては民団も全面協力した。また、日本組織委員会から要請のあったメディアセンターでのボランティアには神奈川本部管内から約40人が登録しており、積極的に奉仕したい。

 徐 昨年12月31日、高秀市長がソウルの高建市長と画面上で交歓したが、大変評判がよかった。W杯を通じて横浜を韓国にアピールすることが私の主な仕事だ。また、W杯を契機に文化交流を推進する。横浜市の支援を受けて開催された日韓ガラコンサートも評判がよかったし、今年3月には日韓チェロコンサートも開かれる予定だ。

 高秀 そういう試みは共生社会にプラスになるし、開催が近づくにつれて徐々に市民意識も変わってきたと思う。昨年末、釜山に行き、国を挙げての盛り上がりに感心させられた。横浜も韓国の盛り上がりに引けを取らないようにしたいと思う。市内の各区に「W杯を成功させる会」のような集まりができて、その会が主催して横浜F・マリノスや横浜FCフリューゲルスの選手を呼んで、子どもたちにサッカーを教えている。サッカーに関心をもってもらうことが、W杯に関心をもってもらうことにつながるからだ。コンサートなど各種イベントを通じて韓日共催のイメージを高めていく。政府間交流では教科書問題をはじめ政治的課題が入って、なかなか積極的に進まない現実もある。だからこそ、都市間交流や市民間交流が大事だ。その中心にスポーツがあれば、心の壁を乗り越えて交流できる。


高秀市長

■□韓日の温度差
横浜の開放性の証明へ…高秀
W杯で対日世論好意的…徐

 高秀 よく言われることだが、日本開催と言っても横浜の名前が出てこない。横浜から世界に情報が発信されていないからだ。韓国にすら届いていない。W杯を機に、決勝戦が行われる横浜という都市のよさを発信し、世界に認識してもらいたいと希望を持っている。海洋国家の日本にあって、横浜は港を持っている都市だ。人々と物資の交流も港を通じて行われる。鎖国を解いた最初の都市が横浜だ。港を中心に発展してきた横浜、そこに暮らす人たちや選手の開放性も証明されるのではないか。

 黄 民団では支部団長会議や同胞が集まる場で韓国人として惜しみない協力支援を呼びかけてきた。民団内に構成した「在日韓国人後援会」では1月10日、W杯募金の一部6400万円を日本組織委員会に伝達した。

 韓国では国民性なのか、全国民挙げて祭り騒ぎをしているのに対して、日本は自信があり過ぎるのか、少し冷ややかではないか、温度差がある気がする。高秀市長が音頭をとってお祭りを引っ張っていってほしい。W杯初の共催を韓日が力を合わせ、東洋人として世界の人に成功の見本を見せる絶好の機会だ。

 高秀 韓国では国民に一体感を持たせるためにイベントごとにみんながW杯を成功させようという目標を出そうとしている。私は横浜市民の一体感を醸成するためにW杯の開催を誘致した。一体感を出すための方策を示すのが、政治家や行政に携わる人間の仕事だ。

 徐 韓国で「日本にどのくらい親しみを持っているか」という世論調査をしたら、昨年「教科書問題」で韓日間が揺れたにもかかわらず60%が肯定的だった。日本のタバコが一日50万箱売れるし、日本語がブームで全国200万人の高校生のうち、3分の1が第二外国語に日本語を選択している。日本への好感度はW杯の影響が大きい。W杯が成功すれば横浜の存在感が大きくなる。

 韓国では国をあげてW杯キャンペーンが行われている。マスコミも連日、報道を繰り返す。祭りというよりも国威を世界に見せるチャンスだと認識しているからだ。


徐総領事

■□ポスト2002
自治体のモデルケースに…徐
相互理解¢蛯ォく前進へ…黄

 徐 W杯が起爆剤となって市民同士の文化交流がもっと盛んになると思う。W杯は韓日関係のターニングポイントだ。中国、北朝鮮を入れて韓日が横浜で年に2回くらいサッカー交流を持ってもいいではないか。

 高秀 スポーツも含めた文化交流の継続が大切だ。これからは市民間や都市間交流が重要になる。横浜は韓国の自治体との友好都市関係はないが、まずはW杯を成功させた上で慎重に検討をしたいと思っている。温かい迎え入れがW杯成功のカギだ。在日韓国人の皆さんと一緒になって進めていきたい。

 黄 神奈川にいる同胞がW杯にどういう形で協力、支援したか。成功のために力になったとすれば、日本に住んでいる同胞の思いや希望が地域の人に理解してもらえると思う。そのことが全国津々浦々の同胞に勇気や活力につながると信じている。

 徐 「国籍条項」の撤廃や地方参政権の採択率などを見ても、横浜市は日本全国の自治体のモデルケースだと思う。横浜という都市が世界に向けてオープンだからだ。

 これからの在日同胞は地域住民の一人として、時間とお金を10分の1くらい使う心構えを、生き方を持つべきだ。統一しても国に帰るわけではなく、日本の地域で生まれてそこで骨を埋めるのだから…。

 高秀 日々の生活と国家意識は違う。まずは日々の暮らしの中で、一緒に生活していくために互いが助け合うことがとても重要だ。

 黄 韓国人だ、日本人だと線引きせずに、一緒になって推進するという心構えがあれば大会は成功するだろう。私たち同胞の努力次第で、日本人との相互理解が大きく前進する。

 高秀 韓国の各首長とも連携をとりながら、それぞれ韓日10の開催地と連絡を密にとりながら残りの期間の準備を進めたい。世界初の共催が見事に成功するという例示をすべての試合を通じて世界に示したい。

(2002.01.24 民団新聞)



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