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洪由姫さんドイツ語スピーチで優勝



独日の戦後補償焦点に
歴史教育の「差」にも取組み

 昨年12月8日、東京・築地の浜離宮朝日小ホールで開催された第4回全国ドイツ語スピーチコンテストで、外国籍で初めて優勝した在日3世の洪由姫さん(23)=川崎市高津区在住。韓国で生活した経験を絶好の機会ととらえ、ルーツやアイデンティティを大切にしながら将来、韓日の橋渡し役になりたいと話す。

 昨年度のスピーチコンテストでは、応募者20人の中から第1次の原稿審査を通過した15人が、スピーチと質疑応答で競い合った。

 テーマは「私がドイツに見るもの」。同年9月までの1年間、ドイツ留学で学んだことや経験をもとに、アイデンティティの問題、戦後補償問題などの話を盛り込んだ。

 同コンテストでは全般的に、質疑応答に重点が置かれる。主催の日独協会は、「深く考えているテーマがアピールできた」点を評価したと話す。


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 88年ソウル五輪の年、父の仕事の関係で小学校4年から6年間、一家でソウルに暮らした。当初、韓国を意識的に拒否した。学校や友人たちと無理矢理引き離されたという思い、言葉も理解できず環境にも馴染めないことに対する小さな抵抗だった。

 気持ちに変化が生じはじめたのは中学校に上がるころから。日本人学校に通いながら、韓国人との接触を通して初めて言葉や人、文化を知ろうと思ったという。その思いは日本に戻って一層強まった。

 「自分は韓国でもっと吸収すべきことがあったのでないか」。幼い頃から韓国人だと言われて育ったものの、韓国人が何か分からなかった。

「自分の国」と言われてきた韓国での生活は、貴重な体験として、後の人格形成に大きな影響を及ぼす。


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 入学した都立国際高校には、多様な国籍の生徒がいた。ありのままの自分が普通に受け入れられた。この頃から自分のルーツに興味を持ち、また、韓国と日本が関わった歴史を中心に勉強した。資料を読み解くうちに、日本の韓国に対する考えや戦後補償問題など、今もって解決されない韓日間の「深い傷」を知る。


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 大学入学の時に専攻したドイツ語を道しるべに、文化、戦後補償問題に関心が広がっていった。ドイツ留学を含め、そこから学んだものは多い。

 日本がいう「国際化」に異論を唱える。「自国の歴史を知らなければ、相手の国の歴史も踏まえて相手の立場は理解できない。共に理解するのであれば、過去のことも共に理解して、未来を見るという形で進めるべき」。国は自分にとってアイデンティティの一つと考える。歴史を紐解いていくことは、自らのアイデンティティを探ることにつながるとも。

 持って生まれたアイデンティティや歴史を大切にしたいという思いは人一倍強い。韓日を知る在日として、両国のために貢献できればと話す。

 この間、歴史教育の問題にも取り組んできた。21日から1カ月間の予定で韓国へ出発した。卒業課題のレポートで、韓国、日本、ドイツの歴史教育の差を比較するために学校を取材する。

 今春、TV東京で社会人としての第一歩を踏み出す。希望は報道部。配属は5月に決定するが、追いたいテーマはすでにある。

(2002.01.24 民団新聞)



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