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10年継続の韓日歴史教育交流会

授業に反映へ



昨年12月の第9回交流会から(三千浦で)

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「相互理解の成果、次世代に」
晋州市と日本の社会科教師 今年は8月千葉で開催

 韓日両国の社会科教師の研究会が年に1回、韓日交流史に関する授業実践を持ち寄って報告、討論しあう「歴史教育交流会」を続けて今年で10年目を迎えた。一時期こそ双方の歴史観の違いを浮き彫りにする報告も見られたが、信頼関係ができるにつれてお互いに意識も変わっていった。いまは韓日友好の歴史に目を向け、授業にどう反映していくのかが共通の課題となりつつある。

 日本側研究会は韓国の歴史教育に取り組む専門の研究団体「日韓教育実践研究会」(石渡延男代表)。小学校から大学の先生まで50人ほどで構成している。一方、韓国側グループは慶尚南道晋州市を中心とする中・高校の歴史教師の研究会。93年8月、ソウル市内で第1回の授業実践交流を行ったのを皮切りに定期的な交流を続けてきた。

 これまでの授業実践報告を見ていくと、日本側教師は「とうがらしと創氏改名」「オリンピックと日章旗」といったテーマで日本の子どもたちに韓国との関わりをどう教えたか、子どもたちからはどのような反応が返ってきたかについて報告してきた。韓国側教師は交流が始まった当初、日本のかつての植民地支配の責任を真っ正面から問うなど、反日感情を前面に押し出した報告を行うことが多かった。

 93年当時は韓国国内で「克日論」が支配的だったとき。日本のことを授業で教えれば「親日派」と非難されることも珍しくなかったとされる。しかし、児童生徒の視点に立った授業実践の必要性を繰り返し説く日本側教師との間で交流が深まるにつれ、「民族主義史観」に重きを置いていた韓国側教師のかたくなな姿勢も変わっていった。

 転機となったのは東京で開かれた97年の第5回研究会でのこと。韓国側教師から「従軍慰安婦と望ましい韓日関係」「柳宗悦を通してみた韓日関係の歴史」など、韓日友好の歴史をどうつくっていくかという視点に立った報告が登場するようになった。

 当時を振り返って、日本側研究会の石渡代表は「交流を積み重ねることでお互いに信頼関係が生まれたのがよかったのでは。これで安心して相互批判もできるようになった」と話している。

 中学歴史教科書問題で揺れた昨年も、韓国の三千浦で滞りなく両団体の間で授業実践報告が交換された。千葉市内の公立中学校教師で日本側研究会の事務局長を務めている三橋広雄さんも「日本を見る目が成熟し、自国の『国史』教科書についても冷静な目を向けるようになった」と語っている。

 節目となる第10回の韓日授業実践交流は8月20、21の両日、千葉県館山市で開催される。今年は初めて両国の高校生による討論会も予定している。

(2002.02.27 民団新聞)



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