民団新聞 MINDAN
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慎武宏の韓国サッカーレポート

<アジアの虎の鼓動>
決定力不足に悩む韓国



帰化問題が浮上している
ブラジル出身のサンドロ選手
(21・FW 水原三星)

■□
北韓選手補強と外国人選手帰化案
性急で唐突感否めぬ…
ヒディンク監督は消極的

 韓国代表への不安が高まっている。W杯イヤーの開幕とともに始動したヒディンク・コリアだが、1月のゴールドカップでは1勝1分け3敗で4位に終わり、2月に敵地で挑んだウルグアイ戦も1―2で敗れた。結果が伴わないだけにファンやマスコミの不安は募るばかりだ。

 そして、その反動からか、代表チームへの戦力補強が急課題とされており、ふたつの強化策が話題を集めている。北韓選手の一部補強と、外国人選手の帰化作戦だ。

 北韓代表選手の補強問題は、年末年始にかけて一気に浮上した突然の補強案だ。かねてから北韓のW杯参加に意欲を燃やしてきた大韓蹴球協会の鄭夢準会長が「優秀な北韓選手の一部を韓国代表に補強する方法もある」と発言。これを受けて、協会は北韓サッカーの情報収集に乗り出し、2月には北韓が参加したキングスカップに技術委員を派遣した。

 もう一方の外国人帰化作戦は、以前から噂されてきた補強案である。

 協会は昨年、KリーグでプレーするFWシャーシャ(ユーゴスラビア)、DFマシエル(ブラジル)の帰化を検討したが、本人の意志もあり頓挫した。しかし、ここにきて再浮上。昨季Kリーグ得点王のFWサンドロ(ブラジル)の帰化を真剣に検討し始めているというのだ。とはいえその実現性は低い。

 例えば北韓代表選手の補強案だ。南北交流ムードにも貢献することニナルダケニ韓国サイドハ熱意満々ダガ、肝心ノ北韓サイドガ2002W杯にまったく興味を示さない。今後、北韓サイドがその気になったとしても、FIFAの承認が必要で、もし特例処置が認められても、長らく国際舞台から遠がっていた北韓には即戦力になりうる人材はいない。実際、キングスカップで久々に国際大会優勝した北韓だが、そこに韓国の即戦力になりうる選手は皆無だった。

 サンドロの帰化問題についても、乗り越えるべきハードルが多い。

 外国人が韓国籍を取得するには、韓国居住5年以上が原則だが、サンドロはまだ3年目。協会は韓国に特別な功労があれば、大統領の承認のもとで韓国籍を取得できる「特別帰化」という方法をとる構えだが、最終的な決断を下すサンドロ自身が、「韓国には愛着があるが、ブラジル国籍を失うことの意味を考えると躊躇する」と、突然の帰化話に戸惑いを隠せない。そんな状況下で果たして帰化への法的処置はスムーズに進むのか。まったくの未知数だ。

 個人的には、どちらの案も手放しで賛同できない。確かに北韓選手の一部が韓国代表に加われば、変則的ながら南北合同チームが実現する。これは韓半島の人々はもちろん、在日同胞にとってもドリームチームだ。だが、W杯開幕までわずか3カ月の状況下で加わった北韓選手が果たして韓国代表に馴染めるのか。戦術統一や意思疎通面での不安は尽きない。

 サンドロについても同じだ。昨季のKリーグ得点王に輝いたスピードとテクニッは確かに魅力だ。韓国代表はゴールドカップで深刻な得点力不足を露呈したが、サンドロの加入でその課題解決につながるかもしれない。しかし、周囲との連携や意志の疎通を図るための時間が少なすぎる。ヒディンク監督も「外国人選手の帰化問題を検討するには時期的に遅すぎた」と消極的だ。

 ただ、大韓蹴球協会のある幹部はこう語る。「W杯成功は国家的懸案。大統領への直訴を含めて、できることはすべてやる」。

 北韓選手の補強と外国人選手の帰化計画。そのなりふり構わぬ奇策は性急で唐突感が否めないが、W杯に賭ける韓国の並々ならぬ意欲も感じずにはいられない。

(スポーツライター)

(2002.02.27 民団新聞)



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