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梁石日さんの直木賞候補作

「夜を賭けて」映画完成



韓日合作映画「夜を賭けて」の一場面

差別と貧困にあらがい生きる在日群像描く
金守進監督 韓国で50年代の大阪再現、
ロケ9月に韓日同時公開へ

 舞台はかつてアジア最大の兵器工場だった大阪造兵ひょう跡地の廃墟。ここから「国有財産」でもある鉄の残骸などを掘り出そうと、夜な夜な近くの集落から出没する在日同胞らと、その窃盗行為を取り締まろうとする警察官の姿を喜怒哀楽豊かに描いた。

 当時、鉄屑は高く売れた。窃盗行為は、真っ当な就業先などなかった一部の在日同胞にとっては非合法ながら数少ない生活の術でもあった。ひとやま当てて貧困から脱けだしたい―そんな見果てぬ夢を捨てきれないでいた。

 しかし、警察との攻防が激しさを増すにつれ、ついに死者を出す事態に。業を煮やした警察はついに集落の一斉手入れに乗り出す。原作は梁石日さんの実体験が元になっている。

 映画は、いまにも崩れ落ちそうな集落でわずかな食べ物を分け合いながら生きる当時の在日同胞コミュニティの在り様と人間模様もたくましく、そして生き生きと描く。このほか、北送による家族生き別れの悲劇といった今日的な問題も描いている。

 金監督は「戦後の生活と差別、なぜ『在日』が日本にいるのか、離散家族の問題など『在日』のすべてを凝縮している」と原作への思い入れの深さを話す。劇団新宿梁山泊を主宰する傍らで原作が直木賞候補にノミネートされた95年から映画化の夢を抱いてきた。

 ロケはほぼ全編、韓国で行った。韓国人撮影スタッフの協力のもと、全羅北道群山に100軒の家と町並み、そして運河まで設け、解放後10年ほどを経過した大阪市内を部分的に再現した。その大規模なセットを生きたものにするため、1週間ほど前から役者を実際に住まわせることもした。

 主なキャストは「バトル・ロワイヤル」や「GO」で売り出した山本太郎を主役に、清川虹子、吹雪ジュン、樹木希林、李麗仙らを配した。ヒロインには韓国の新進女優、ユ・ヒョンギョンを抜てきした。

 制作費5億円は東京で広告・企画会社を経営する郭充良さん(45)が中心となって製作委員会をつくり、韓国大手のエンターテイメント会社「サイダス」の協力も得ながら捻出した。音楽監督は朴保さん。5月には海外映画祭に出品を予定している。

 貧困と差別にあらがいながら50年から60年代初めの大阪でたくましく、したたかに生きた在日同胞群像を描いた韓日合作映画『夜を賭けて』(同製作委員会、金守進監督)がこのほど完成した。原作は梁石日さん(65)の同名小説で95年に直木賞候補作ともなった。シネカノンの配給で9月、韓国と日本で同時公開される予定。

(2002.03.13 民団新聞)



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