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民団中央委員会

2002年度基調



2002年度活動方針を討議した第55回中央委員会

求心力強化し難局打破へ
「協議会」で民族金融機関支援

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今年度の展望

2002年の世界は、昨年10月から始まった国際的な反テロ戦争の余波で緊張状態が継続するとみられる。今年1月末、米国のブッシュ大統領は一般教書で反テロ戦争の継続を宣言し、テロ支援国家としてイラク、イラン、北韓を名指して「悪の枢軸」と規定しています。まかり間違えればこのようなテロ支援国家と名指しされた国家に対する戦争へと拡大する可能性があり、世界的な緊張激化が憂慮されます。

 さる2月19日に韓国を訪問したブッシュ大統領は、金大中大統領の対北包容政策(太陽政策)を支持し、北韓が美国との対話に応じるよう促しました。反面、ブッシュ大統領は、金正日北韓政権が住民を飢えさせたまま核開発とミサイル輸出などを通じてテロ支援国家と深い関係を結んでいる規定し、対内的に人権と自由を抑圧している独裁国家と指摘しました。それだけでなく、金正日政権を金大中大統領の善意の対北政策を受け入れずに悪用していると非難までしました。

 これに対する北韓の反応は美国の戦争挑発であり、主権侵害で北韓抹殺策動であるとして激しく反発しています。

 わが政府は、韓半島で再び戦争が起きてはならないとの立場から北韓を継続説得し対北包容政策を堅持しなければならないとの姿勢を鮮明にしています。このため美国との政策調整と合わせて国民的な合意形成に引き続き努力しています。

 今年の南北関係は、美国の対北強硬策と国内的に政権交代期にあたることから流動的状態続くとみられます。

 日本社会は現在経済的危機状態にあります。物価は継続下がり、失業者は増加しており、企業倒産が続出する「デフレ不況」状態おちいっています。不良債権を優先的に整理し構造改革を断行すると登場した小泉政権も遅々として進まぬ不良債権整理、金融改革の不徹底が金融危機を招き、日本国民の支持率が落ちています。このような日本の状況に対し、もし国際的な信認度まで下がり始めれば、それこそ日本の全般的な危機がやってくると憂慮されます。

 わが同胞社会は、いうまでもなく日本社会の経済、社会的動向の圧倒的な影響下にあります。4月から始まる「ペイオフ」解禁にともなう信用不安と長期的な不況に加えて狂牛病による打撃などで、大変厳しい状況にあります。これに対処すべきわが民族信用組合も、全国的な機能発揮をすべき金融機関のない状態で地域別にばらばらなまま、このような事態に対応しなければならない不安な状態にあります。

 同胞社会は、そのうえに3世、4世時代に入り、帰化者は年年増えている現実に照らしてみるならば、民団、総連を問わず積極的に対応できていないのが現実です。21世紀初頭同胞社会の経済はもちろん、大衆組織も再編成が切実に要求されています。

 このように対内外の与件が厳しい時だけに、本団は在日同胞の指導母体として求心力を強化して指導性をいっそう発揮しなければなりません。

 今年度は、次のような方針をたて、全力を尽くして活動致します。


■地方参政権運動の持続的推進

 継続審議案件として今通常国会(第154回)に持ち越された参政権法案が、必ず成立されるよう全団的力量を結集し積極的な運動を展開していかなければなりません。参政権をめぐる日本政局の動向は、決して楽観的ではありません。日本自体が経済的な危機をまず克服しなければならない立場にある状況のもとで急を要す「デフレ対策」と金融危機対策、それに予算案とその関連法、有事法制問題、選挙制度改革などの課題が山積しています。そのうえに「2002年ワールドカップ大会」も実施しなければならないために、参政権法案がいつ審議採決されるか予測困難な状況です。

 本団は、昨年12月に韓日・日韓議員連盟合同総会で決議された「今度の通常国会での実現のために積極努力する」という共同声明の精神を生かして日本国会議員に継続呼びかけていかなければなりません。韓日共同開催の「2002年ワールドカップ大会」を成功させる活動を通じてワールドカップ大会前までに成立されるよう世論化に力を注いでいかなければなりません。

 まず、日本各政党そして政府に対する立法化促進活動を強化していかなければなりません。韓日議連関連国会議員はもちろんのこと、友好親善団体の協力も求め、小泉日本首相の訪韓を契機に日本政府の理解を求るように、本国政府の協助も要請していかなければなりません。

 次には地方議会に対するわれわれの要望書採択運動を強化していかなければなりません。各地方で、要望書採択に積極的な努力を傾けるならば、日本の全自治体議会の50%を越え、これは日本人口の80%以上がわれわれを支持ことになり、世論化に大きな力となるでしょう。中央と地方が一体となり、力を合わせて邁進していかなければなりません。

 3番目に、参政権の本来の趣旨からして、地域社会で日本市民との共生・共存・共栄という意味で一般日本市民の理解と協力を求めていかなければなりません。良識ある日本市民、市民団体と力を合わせ、彼らとともに場合によっては大衆集会、署名運動、国際的な世論喚起など、多様な活動を持続的に展開することによって、法案成立に大きな力となるようにしていかなければなりません。

 本団は、参政権獲得に紆余曲折があり遅延されるような場合があっても、中長期的な観点に立ち、ねばり強い努力を継続していかなければなりません。


■民族金融機関支援

 この4月からのペイオフ解禁を目前にして日本の金融危機があらためて叫ばれています。昨年末、日本金融当局の政策決定によって同胞系信用組合が破綻組合を引き受けることになりました。これは幸いなことです。しかし、ペイオフ解禁以後には地域別に信用組合が分散対処しなければならないという困難な状況に直面しています。本団は、このような状況を直視し現存組合の存続と引受組合の健全な発展のために全在日同胞の力を集め、この難局を克服するのに全力を尽くさなければなりません。

 まず、現存組合の該当地域民団は信用組合の幹部と商工会議所幹部らで構成する「同胞金融支援地域協議会」を早急に組織するようにしなければなりません。この「協議会」を通じ各組合は可能な情報公開を行い、問題点がなんであるかを明白にし、当面した資金流動性の不安を解消するよう預金流出防止策、引当金増額等の具体的対処をしなければなりません。

 さる2月16日、「あすなろ組合」管轄下、5個地方本部(新潟、長野、群馬、山梨、栃木)の3機関長と商工会議所代表、それに信組幹部らが一堂に集まり、「協議会」を構成しました。団員と一心同体となり名実共に民族金融機関として地域同胞社会に根を下ろした組合に発展させていくことを決議しました。他の地域でも早期に組織しペイオフ解禁事態の克服に全力を尽くさなければなりません。

 2番目には、破綻組合を引き受けた組合の健全育成のためにも「協議会」を組織して積極的に対処していかなければなりません。引受信用組合には、在日同胞が不況下にもかかわらず多くの資金が、あらたに出資金として投入されたことを考える時、2次破綻は絶対にあってはならず、健全経営を通じた安定的な発展が切実に要求されています。このような意味で引受組合該当地域でも「協議会」を構成して対処していかなければなりません。さる3月6日、近畿地方協議会でも近畿産業信用組合の健全育成のための協議を行っており、東京本部も「あすか信組」幹部らと一緒に同胞信組として発展させるための会合を連続的にもっています。

 第3に、同胞金融機関の現況からして、日本の金融改革過程に対応しながら全国的機能調整を行う機構がない状況を、いつまでも放置できません。ペイオフ解禁後の同胞信用組合の再編を含む多様な形態を追求せざるをえません。今同胞金融機関の中・長期的な方向を念頭に置いた対策機構が設置されなければなりません。そのような意味で、中央本部が触媒となり信組代表らと商工会議所代表、それに在日同胞社会の各界各層から幅広く関係者と専門家で構成する「全国在日同胞金融問題協議会」を組織して対策を講究しなければなりません。

 この全国協議会を通じて一致した意見と政策をもって本国政府の支援要請と日本金融当局の協助を要望しなければなりません。このような活動を通じて21世紀の早い時期に同胞経済活動を再生させる金融機構を再構築していかなければなりません。


■ワールドカップ成功への寄与

 きたる5月30日から、アジアでは初めて、また韓日共催で開催される「2002年ワールドカップ」を成功させるのに、在日同胞も声援を惜しんではなりません。

 このワールドカップ大会の成功を通じて韓日間の架け橋的役割を十分に発揮し、日本社会のなかで共生・共栄する存在として在日同胞をアピールしなければなりません。そのためには、まず、同胞経済は厳しい状況にありますが、それでもわれわれが可能な努力は全てしなければなりません。募金活動は遅くとも5月末までには完了し、誠金を韓・日両国のサッカー関連組織に伝達しなければならず、あわせて誠合が開催される地域にも支援しなければなりません。

 次に、ワールドカップ大会参観団を全同胞的に組織し誠意をつくして応援しなければなりません。できるならば朝鮮総連傘下同胞らも参加させ在日同胞和合の契機となるように努力しなければなりません。


■民族社会教育・活動の活性化

 在日同胞社会は3世・4世の時代に完全に入り、同胞子弟の90%以上が日本学校に通っています。このような現象は、同胞社会存立のための主体性の危機をものがたっています。

 民族的主体性は、いうまでもなく民族教育と民族文化の生活化を通じて形成されます。本団の教育方針は、4個校にしかならないが民族学校教育を根幹にしながら児童から成人にいたるまで同胞を対象にした民族的社会教育に重点を置いています。

 まず民族学校支援は4個校に対する支援を継続しながらも、京都韓国学校の財政的危機を勘案する時、京都韓国学校に対する支援を重点的に行わなければなりません。

 民族社会教育活動では、第1に昨年成功だった「オリニ・ジャンボリー」を今年も実施し、オリニ民族教育のあらたな柱として定着させていかなければなりません。北海道から鹿児島まで全国各地にいる子ども(児童)たちが同一の場に集まり、お互いの友情連帯感を育みながら、本国の子どもたちとの交流を通じ民族意識自覚の芽を育てていかなければなりません。「オリニ・ジャンボリー」を通じ在日同胞次世代の主体性形成に大きな契機をつくっていかなければなりません。

 2番目には、在日同胞社会の主軸をなしている2世・3世らの主体性確立のための民族教育として講座制「民族大学」を活性化させていかなければなりません。すでに常設された地方民族大学を、その内容をいっそう充実化させていかなければならず、最近2、3年内に実施していない地方本部では、今年は必ず実施し、教育的な成果をあげるよう努力しなければなりません。

 3番目に「オリニ土曜学校」を全国化させなければなりません。現在18個地方本部、約20個所で実施していますが、これを全国化し、われわれの子どもたちが幼年期から民族的な自覚をできるように全力をあげなければなりません。活用可能な支部事務所は、こうした教育の場所として積極活用しなければならず、これはまた組織強化にも助けとなります。

 最後に、今年から日本公教育内の民族教育を拡充するよう図っていかなければなりません。同胞子弟の90%以上が日本学校に通っている現実を直視するならば、これに対する対策が急がれます。日本文部省そして地方自治体の教育委員会、各級学校に「民族教育権」が確立されるよう要望活動を展開すると同時に民族学級、国際学級等の設置要望活動も合わせて実施しなければなりません。

 21世紀初に本団活動の主力を教育活動に置き、同胞社会の土台構築に全力を尽くさなければなりません。


■組織強化と支部活性化

 21世紀に入って同胞社会が大きく変化しています。同胞人口の減少・構造的な高齢化、帰化者の増加、そして日本の長期不況による経済的困難、情報化時代にともなう価値観、生活スタイルの多様化など、このような社会変動に対する民団の対応と役割が、いっそう要求されています。

 このためには本団組織が強化されなければなりません。本団組織の強化は、わが同胞と団員らの拠点である支部組織の活性化を通じてのみ可能です。

 支部活性化は、まず支部が団員の要望、要求による活動を展開することによってなされます。団員に対する便宜提供(旅券申請・戸籍整理から日本自治体から得られるサービスの案内など)と文化的な要求(文化趣味、サークル活動)そして研修、講習等の学習に対する要望、オリニ土曜学校、オモニ教室等を支部の条件に照らして活動を具体的に推進しなければなりません。このような活動を通じて団員が集うようになり団員が集うことによって支部が活気にあふれるようになります。

 このような意味で、今年は地協別に支団長会議を開催し、研修と合わせて活動強化をはからなければなりません。地方本部の指導性を一層強化するための全国幹部研修および会議も開催していくようにします。

 加えて中央本部と地方本部の幹部が一体となり支部現地指導を強化するよう努力していかなければなりません。これとともに支部活動の基礎となる調査事業を完了し支部団員らの要望にともなう支部の統廃合も実施しなければなりません。そうして現実と条件にあった組織の再編成を促進しなければなりません。同胞社会の足下から変化する現実に能動的に対処可能な組織へと強化しなければなりません。


■全国的IT化促進

 「21世紀委員会」の「IT特別部会」の提言にもとづき21世紀情報化時代に対処するための努力を継続しなければなりません。

 昨年は「同胞ネットワーク構築元年」と定め、情報化の基盤整備のための中央本部の「LAN」構築を完了しました。

 今年は第2段階として全団員のデータベース化を構築しなければなりません。組織局が実施している実態調査が終わるのを見ながら、それと連係して実施しなければなりません。団員のデータベースを土台に、団員情報の共有と標準化を通じ各種統計の確立はもちろん、団員に対するサービスが可能となるでしょう。また、これを基盤に民団ホームページの整備拡充を通じて事業的な可能性も拡大可能です。

 つぎは、地方本部、支部とのネットワーク構築に力を注がなければなりません。日本全国に拡散して暮らしているわが同胞らが、このネットワークを通じ情報の共有共同活用が可能となります。これこそ在日同胞のIT共同体の出発となるでしょう。さらには海外韓民族とのネットワーク構築を図り、ITの国際化時代に積極的に対処しなければなりません。

 21世紀の早い時期に、われわれは「同胞ネットワーク構築」を完成しなければなりません。


■10月のマダンと「文化祭」の試み

 「10月のマダン(広場)」は、本来本団創団の月であり季節の良い10月を利用して多くの同胞らが一堂に集いチャンチ(宴)を行い、在日同胞の紐帯強化と素朴ながらも同胞の文化的な表現を行える「マダン」として出発したものです。近年では日本人らの市民祝祭に参与することによって、在日同胞の「存在」をアピールすると同時に「共生」を実現するための文化活動の一環として定着し始めました。

 このような「10月のマダン」を今年も積極的に推進しなければなりません。全国的な展開と一緒に地方別「特化」をしなければなりません。地方によりわれわれの祖先らと由緒深い歴史的な史実を再現するとか、または現代の在日同胞の特殊性、韓・日関係の未来像等を表現するなどして、さらに多様な内容へと発展させなければなりません。

 「在日同胞の文化」は、広くは在日同胞の多様なライフスタイルを通じた「自己表現」ということができます。民団中央は、中央自体が「文化民団」へと変貌しなければならないという意味から中央会館を文化活動が可能な空間として活用できるよう改修しました。今年、中央会館で10月、11月頃に「文化祭」的な活動を試図します。これを通じて在日同胞社会または日本社会で表現活動を行っている団体または個人を招請して文化マダンを創造できるよう努力しなければなりません。


■朝鮮総連同胞との和合と交流促進

 南北関係が極めて流動的であり、具体的な進展があるか楽観を許しません。朝鮮総連もまた、組織的な衰退現象が顕著で、組織防御が緊要とされ、民団との対話に積極的に出られないとみられます。

 しかし、本団は情勢と条件がどうであろうとも対話と交流をつうじた和合を実現できるよう努力しなければなりません。今年は、前半期韓・日両国が共催する「2002年ワールドカップ大会」に朝鮮総連同胞らと一緒に共同参観応援団を組織していくよう力を入れなければなりません。また、「10月のマダン」に多くの朝鮮総連同胞も参加させ共に楽しめるように努力しなければなりません。

◇  ◆  ◇

 21世紀の2年目に入った今年の韓半島の情勢や日本社会の動向は、本団の課業推進に有利に展開とはみられず、かえって地方参政権問題や同胞和合には厳しい与件が予測されもします。情勢と与件がそうであれば、なおさら本団を中心に一層団結し、本団の主体的な力量蓄積に力を注ぎ、忍耐心をもって課業推進に継続邁進しなければなりません。

(2002.03.13 民団新聞)



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