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●共生へのキックオフ 鼎談・2002W杯

ホスト都市の韓日・在日<茨城>



ここに住んで良かった℃タ感へ

 Jリーグ発足当時から日本のサッカーシーンをリードしてきたのが、鹿島アントラーズだ。地域密着型のチームとして、茨城県民の期待も大きい。サッカー専用のカシマスタジアムは、国内最高の良質の芝だと評価も高い。W杯鼎談企画第3弾は、橋本昌県知事と日韓親善協会の人見實徳会長、民団茨城県本部の李信吉団長に、W杯と韓日親善などについて語っていただいた。


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茨城を世界に

快適・安心な交通輸送へ 橋本
地域同胞にとっても誇り 李

 李 茨城と言えば、最近ではJリーグ鹿島アントラーズの本拠地としても全国に知られるようになった。日本国内のサッカー専用スタジアムは埼玉、神戸と茨城の3つだけだが、4万1千800人収容のカシマスタジアムは私たちにとっても大きな誇りになっている。

 橋本 観客席とピッチが近いので非常に見やすく、FIFAのマタレーゼ副会長からも「劇場のような素晴らしいスタジアム」と高い評価をいただいた。芝はケンタッキーブルーグラスで国内最高の状態だ。

 人見 県民に広く開放している県庁の2階ホールには、縦10b横14bの巨大バナーが掲げられ、W杯成功にかけるなみなみならぬ決意を象徴している。

 橋本 開催500日前には、水戸駅カウントダウンボード点灯式、300日前にはビーチサッカー大会、100日前にはアントラーズの選手にも協力いただいた記念フォーラムや大型バナー設置など、100日単位で記念イベントを実施するなどして気運醸成に努めてきた。

橋本昌知事

 李 W杯は世界の人にも茨城の魅力を知ってもらう絶好のチャンスだが、具体策を聞きたい。

 橋本 JR鹿島神宮駅からスタジアムへ向かう国道51号沿いの「ワールドカップへの道」やスタジアム周辺に設ける「交流広場」での日本食などの提供、日本文化溢れる野点(のだて)などでのおもてなしを考えている。また、地元の市町やボランティアの協力により、主要な沿道で「花いっぱい運動」を実施したり、6カ国語の会話集を作成・配布し、県民が試合国などの言葉で歓迎できるようにしたい。スタジアム周辺には、イルミネーションや試合国の言葉で対応した案内板を設置、バナーなど歓迎装飾も施していく。

 茨城県の自然や特産物、歴史や文化などを見て、聞いて、味わっていただく。民団や親善協会の皆さんにも、是非ホスピタリティー事業に参加いただきたい。

 人見 国内外から多くの観戦客や大会関係者が来県されるが、スタジアムへスムーズに来て、安全にお帰りいただくことが大事だ。

 橋本 円滑な交通輸送を確立することが、今大会成功の大きなカギになると認識している。このため、大会関係者と観戦客の方面別輸送ルートの設定や大量輸送機関であるバス・鉄道の輸送力増強などを基本方針に、「交通アクセスセンター」の設置でバスや鉄道のダイヤ、シャトルバスの運行などの情報提供や臨時駐車場・直行バスの予約受付を行うなど、観戦客が快適で安心できる交通輸送を実現したい。


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国民交流のあり方

若い人たちに大いに期待 人見
自然な雰囲気が望ましい 橋本

 李 W杯が近づくにつれて、ますます色々なイベントが催されると思う。民団の傘下団体の婦人会はコーラスを通じて韓日の歌を披露し、去る2月23日に高齢者福祉施設の「ナザレ園」を慰問した。そこには在日同胞のお年寄りがいるわけではないが、地域社会での共生共栄をめざし、素人集団ながらも韓国民謡や日本の童謡をチマ・チョゴリ姿で披露した。大喝采を浴びたと聞いて鼻が高い。また、3月16日から6月16日までの3カ月間、岩井市の茨城県自然博物館で「コリアの自然史」という企画展が行われ、初日のセレモニーのアトラクションでも婦人会が歌を披露する。

人見實徳会長

 橋本 日韓共同開催を通じてこのような交流が広がり、両国民の友好親善が一層深まることを期待している。

 人見 W杯を契機に、日本と韓国間のサッカー・文化などの交流を促進し、日韓の子どもたちの友好親善と両国の理解を深めたい。茨城大学と韓国の忠北大学は91年から交流を始めているが、若い人たちのフランクなつきあいに期待したい。

 李 知事は自治省におられた90年に書かれた『図解 地方自治法』が韓国語に翻訳されたこともあり、韓国との縁もある。韓国の自治体と姉妹都市提携をしているところは県内にはないが、W杯を機会に韓国との交流を一層深めてほしい。

 橋本 スタジアムのある鹿嶋市と済州道の西帰浦市との間で昨年末から今年の1月にかけて市長が相互に訪問するなど関係が深まっている。自然な雰囲気で交流ができればいいのではないか。永住外国人政策についても外国語による情報提供や県民の国際理解の促進などを今後も進めながら、外国人が県民とともに「茨城に住んでよかった」と感じられるような環境整備に努めていきたい。


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進む官民連携

両国の架け橋的存在に 李
政治的問題とは区別し 人見

 人見 昨年7月のことだが、韓国・蔚山市の鶴城高校が来県し、「日韓親善ユースサッカー大会」を開催することになっていた。ところが、歴史教科書問題などの影響で延期となり、とても残念な思いをした。結果的には、12月21日から2泊3日の間、大会が実施されたことで安堵したものだが、政治的な問題と民間交流とは区別して行うべきだ。私たち民間団体としては、県のW杯開催準備室から通訳などの協力依頼があれば、これまで通り裏方でのお手伝いをしていければと思う。

 橋本 紆余曲折はあったが、本県では初めての試みとなった「ユースサッカー大会」では、日韓の若い世代の交流を深めることができた。その節は、民団の皆さんに通訳ボランティアとしてご協力をいただいたが、W杯本番でも日韓親善協会の皆さんともども是非ご協力を願いたい。

 李 韓日共催のW杯は、両国間の架け橋的存在として日本に住む私たち在日韓国人にも大きな意義がある。民団ではW杯の成功と寄与を目的として、「在日韓国人後援会」が募金活動をスタートさせ、茨城県本部では100万円を募金した。不況下にあっても、在日韓国人のW杯成功への誠意の表れだと思う。

 人見 茨城日韓親善協会は茨城県日韓女性親善協会と民団との3団体で、日本と韓国の交流と友好親善が一層深まることを願い、毎年、日韓親善合同新年会・賀詞交換会を開催している。今年はW杯の年ということもあって、700余名もの参会者で盛大なものとなった。民団傘下の婦人会の人たちが民族衣装で場を華やいだものにしていただいた。県を代表する各界各層の人たちが一同に会し、来賓として橋本県知事より毎年ご挨拶をいただいているが、ほかの県では例のないことではないか。

李信吉団長

 橋本 私も民団や親善協会の皆さんと交流することを楽しみにしている。茨城にともに住む一員として、より良い地域づくりに一緒に取り組んでいただければ幸いだ。

 李 茨城県では21年もの間、3団体がお互いに手を取り合い、地域社会に貢献してきた。この絆を大切にし続け、今後とも末長く日韓両国の架け橋として地域社会に寄与していきたい。

(2002.03.13 民団新聞)



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