民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
蘇る友情の思い出

韓国での動員No1「友へ/チング」日本上陸



 韓国で大ヒットした「シュリ」「JSA」の観客動員記録を塗り替え、「チング・シンドローム」という社会現象まで引き起こした郭?澤監督の「友へ/チング」が4月6日から全国東宝洋画系で封切りされる。同映画は、70年代後半から90年代前半の釜山を舞台に、運命に翻弄される4人の幼なじみの壮絶な人間ドラマを描いた作品。同映画には過去への哀愁と懐かしさ、そして友との思い出など、人々が忘れてしまった「何」かを呼び起こすメッセージが込められている。


強烈なノスタルジーと共に絆の強さを描く

 昨年3月31日から7月20日まで、韓国で上映された「友へ/チング」は、「シュリ」「JSA」が持つ記録(約600万人)を半分にも満たない日数で抜き去り、820万人という韓国映画史上初の最高動員記録を打ち出した。

 韓国で爆発的な大ヒットとなった同映画だが、人々の共感を呼んだ点について郭監督は「歳月が早く過ぎ去ってしまう気がする現代社会において、人々は昔の思い出や忘れ去ったものを振り返りたくなる時がある。それがこの映画でモチーフとなって生かされていたのでは」と話す。


◇  ◆  ◇

 釜山は郭監督が25歳までの居住地。「友へ…」は監督の3作目。映画監督として自身のことを映画で語りたいと思っていた時期、子ども時代からの思い出が詰まっている同地を背景に、自らの実体験をもとに約2年間の執筆期間を経て半自叙伝的な脚本を書き上げた。

 郭監督は同映画で2つの友情を描いている。1つはやくざの世界に生きるジュンソク(劉五性)とドンス(張東健)の友情。もう1つは普通の市民として生きるサンテク(徐泰和)とジュンソクとの友情だ。

 ジュンソクとドンスの場合は、組織に属するがために本人の意思とは別に、その命令を遂行しなければならないという中で争わなければならないという状況に置かれている。

 また、ジュンソクとサンテクの場合は、2人が置かれているテリトリーが違うために一定の距離を保ちながら友情を維持できるという点だ。

 郭監督は、競争しなければいけない中での友情と、競争する必要のない中での友情を対比させることで、「友情というものが現実の中で、どのような形で存在しているのか自分自身に問いかけたかった」と話す。


◇  ◆  ◇

 郭監督が同映画で徹底して排除しようと決めていたことは、社会的、政治的な変動だ。それは「友情」を描くにあたっては必要のないことだと思っていたという。

 韓国で大ヒットした背景の1つに、人々がこの映画を通してノスタルジーを強烈に感じ取った点が挙げられる。

 果たしてこのノルスタルジーが日本で受け入れられるかという疑問は残るが、郭監督は「日本人が今からさかぼって10年か15年前の感情が、韓国人の感情と触れあうところがあると思う。そして文化的にも似ているところがあると思うので、受け入れてもらえると思う」と話した。

 男の友情を描きながら、生き様や別れを通して人間そのものの関わりについて考えさせられた。

 郭監督は「この映画を見終わった後、その人が心の深いところに残っていた友情の思い出を蘇らせて、昔の友だちに1本電話をしてくれたらこの映画は成功」だと語った。


■□
ストーリー

 地元の元締めを父に持つジュンソクは、口ベタだがケンカが強くて頼りがいがあり、皆から一目置かれていた。国民学校3年生の時に転校してきたドンスは、貧しい葬儀屋の息子で、ケンカっ早くて見栄っ張りだが憎めない存在。そして真面目なサンテクとお調子者のジュンホの4人はいつも一緒に遊んでいた幼なじみ。

 別の中学に進んだ4人だったが、再び高校で一緒になり、つるむようになる。しかし、ある事件をきっかけにジュンソクとドンスは退学処分になる。その後2人は闇社会に足を踏み入れ、やがて派閥抗争へと発展していく…

(2002.03.27 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ