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共生へのキックオフ

鼎談・2002W杯
ホスト都市の韓日・在日<大分>



左から趙誠勇駐福岡韓国総領事・
平松守彦大分県知事・張永寿民団大分本部団長

世界の平和にも大きく寄与

 大分県の別府温泉と言えば、日本国内だけでなく、韓国からも観光客が訪れる定番観光スポットとして有名である。W杯鼎談企画第4弾は、九州で唯一の開催自治体となった大分県の平松守彦県知事と駐福岡韓国総領事館の趙誠勇総領事、民団大分県本部の張永寿団長にW杯と韓日交流、ポストW杯についても語っていただいた。


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九州では唯一の大分
ローカル外交で理解増進 平松
両国の幅広い交流推める  趙


 張 平松知事はFIFAW杯日本組織委員会副会長であり、大分県下の自治体や経済団体などで組織する「ワールドカップ大分推進委員会」の会長としてもいろいろと準備を進めてこられたが、そもそもW杯を大分に招致しようとしたのは何故か。

 平松 世界の人が交流する絶好の機会でもある。特に注目したのは、オリンピックは大都市中心で開催されてきたが、W杯は地方都市でも開催されてきたという点だ。まさに「地方分権の時代」にふさわしいと思う。

 張 大分県スポーツ公園内の会場、大分総合競技場(ビッグアイ)は、簡易開閉型なので天候にも左右されず、文化イベントも開催できる多目的スタジアムと聞いたが…。

張団長

 平松 同時に、環境にやさしいエコスタジアムを目指した。一昨年4月5日には県民や民団の方々とソウルでの「植木の日」に参加した。高建市長と「アジアの空をきれいにしょう」と話し合い、ソウルのW杯会場に「大分の森」をつくっていただいた。大分県でも昨年5月に「第1回豊かな国の森づくり大会」を開催し、韓国の方に来県いただき、植樹してもらった。今年も5月に予定している。ビッグアイ周辺にも「韓国の森」をつくり、植樹していただきたいと考えている。

 趙 韓国のセマウル運動に着目されたという知事は、79年の一村一品運動を皮切りに、学術やスポーツ交流などを含め、韓国との間で幅広い交流を推進してこられた。総領事館としては、九州で唯一開催する大分県の状況をきちんと本国に伝えて、開催期間中に大分を訪問する韓国からの訪問客に民団ともども便宜を図りたいと思う。

 平松 韓国との交流は九州の他地域からも歓迎された。韓国との共催に決まってから開催立候補を断念した都市もあるが、大分は一番に歓迎集会を開いた。21世紀の初の今大会は、アジアで初、しかも日韓の友好発展の礎になるばかりか、アジアの平和、ひいては世界の平和に大きく寄与するものと確信している。

 張 別府市の立命館アジア太平洋大学で学ぶ外国人学生800余人のうち、韓国人学生が一番多い。W杯期間中のボランティア活動では単位取得もできると聞いているが、単位以前にホスト国の人間として日本で充分活用してもらい、人間的な交流を深めてほしいと思う。

 平松 韓日間にもいろんなことがあるが、私が進めてきた草の根の交流を通したローカル外交は、国益の衝突をも和らげるものだ。地域と地域、住民と住民が直接交流することにより、相互理解が進展し、両国の平和に貢献するものと確信している。


平松知事

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「国民交流の年」に
平和・和解メッセージを 趙
地域に対する認識新たに 張

 趙 韓国ではW杯という良い機会を活用し、全世界の人々に活気にあふれた開放的な現代の韓国の姿を見せるため、2001年を「韓国訪問の年」に定めた。今年は両国政府間で合意した「韓日国民交流の年」であり、日本国民との真の交流のために様々な試みを計画している。

 張 昨年の教科書問題の余波で、韓国との交流行事が中断したり、日本からの観光客が減ったという話もあるが、ソウルの町中は日本語が飛び交ってもおかしくないほど日本人が多い。「百聞は一見に如かず」。ぜひこの機会に多くの日本人に訪韓してほしい。「韓国訪問の年」は今年も続いている。

 平松 別府市は木浦市と、国宝の宇佐神宮がある宇佐市が慶州市と姉妹都市交流を続けている。忠清南道の教育委員会と大分県教育委員会との交流、高校生との交流も活発だ。W杯を契機に、韓国との交流がより一層活発になると期待している。

 趙 韓国と日本が真にお互いをパートナーとして受け入れて、お互いを偏見なく理解できる機会を提供することが大事だ。また、北東アジアの文化と歴史を世界の人々に知らせ、この地域に対する認識を新たにするきっかけになればと願う。

 張 韓国も日本も世界から見れば、ファーイースト、極東の一地域という認識しか持たれていないのが現状だから。

 平松 一過性ではなく、W杯でアジアの人々との平和交流に向けた大きな流れをつくりたい。地域間交流を促進してアジアから新しい風を吹かせていく。大会が終わっても日・韓・中でサッカーの試合をやれればいいと思う。

 趙 W杯はスポーツを通じて人類が一つであることを感じる全世界人の祝祭だ。メディアを通じて、延べ360億人が観戦する。暗い過去を越え、新たな関係をつくっていく両国の仲むつまじい姿を全世界に見せることで、テロと戦争で始まった21世紀の方向を、平和と和解に変えていく東アジア発のメッセージを人々の心に伝えることができると期待している。


趙総領事

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ポストW杯の課題
「地方参政権」の解決必要  張
「内なる国際化」の実現へ 平松

 張 韓日両国の国民性には、熱しやすく冷めやすいという部分があるのではないか。韓日両国の狭間にいる在日韓国人としては、W杯後に祭の後のような冷めたムードにならないか気がかりだ。そうならないためにも、よりよい環境づくりのために、地方参政権の問題が一日も早く解決してほしいと願う。

 平松 永住外国人の地方参政権の獲得は、地方自治の趣旨からみて望ましい。国際化時代にふさわしい地域社会の形成にも寄与する。被選挙権についても、地方では少子化や過疎化が進みつつあり、大分県で育った有為な人材が、将来的には市町村長や議員など、様々な分野で活躍することがあってもいい。

 張 昨今の不況と就職難ダブルパンチでは、次代の在日社会を担う若い世代が希望を持ちにくい。知事のリーダーシップに大いに期待したい。

 平松 職員採用試験における国籍要件については、これまでも見直しを行ってきた。平成12年度の職員採用試験からは一般事務職など36職種についても国籍要件を撤廃、計63職種で国籍要件が撤廃されたことになる。

 趙 W杯が冷え込んだ経済を活性化すると同時に、在日同胞の底力を引き出す契機になればいい。

 平松 国連が定めた「人権教育のための国連10年」についての大分県行動計画では、外国人と地域住民が日常生活の中で異文化理解を深める「内なる国際化」を目指し、適正な雇用機会の拡大などの「外国人平等」を理念とした社会権、自由権の保障実現を施策指針としている。さらに、平成13年の大分県国際交流・協力推進大綱では、外国人も暮らしやすい地域社会の形成を掲げ、生活・文化情報の提供や県民との交流の促進を図ろうとしている。

(2002.03.27 民団新聞)



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