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在日へのメッセージ

宇惠一郎(読売新聞解説部次長)



W杯の後に来るもの

 最近、読売新聞と韓国日報が行った日韓共同世論調査によれば、W杯サッカーの日韓共催を機に「日韓関係がよくなる」と見る人は日本で51%、韓国で49%に上った。

 たしかに両国関係にとってW杯効果は絶大だ。新聞、雑誌の特集から、映画、音楽の相互交流は目白押しで、隣国の姿は、等身大の実像を持って捉えられるようになった。慶賀の至りである。

 「しかし待てよ」というひねくれた考えもまた、もたげてくる。

 88年のソウル五輪に際しても、日本では韓国ブームが吹き荒れたが、祭りの後、急速にその熱が冷めた、あの奇妙な熱狂とその後を思い起こすためだ。今の状況も、何かを置き忘れてきた性急さを否めないのだ。

 「まあ、そう小難しいことは抜きにして」と、3泊4日のソウル旅行から帰った20代の女友だちから写真を見せてあげると酒に誘われた。

 「出会った韓国人も普通にやさしいしイ。でも韓国の日本ブームもはすっぱでエー。日本の歌手もあまり知らないのよね」「じゃ、君は韓国で知ってる歌手いるの」「そりゃ知らないけど、でも食い物はうまいのよね」

 日本人を迎える韓国人もポジャンマチャで、「歴史を反省しろ」とからむこともないのだろう。彼女が感じたようになぜかやさしいのだ。遠慮なのか。「W杯共催に向けて未来志向で」というのが、「しばり」となっているのか。

 あと2カ月、祭りは幕を開ける。宴の後に「しばり」が消えた時どんな日韓関係が待っているのか。それからが「未来志向の日韓関係」の始まりなのだろう。どうも小難しいことに気をもんでしまうこのごろなのだ。

(2002.04.03 民団新聞)



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