民団新聞 MINDAN
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子どもとの対話を進めよう




 「子どもたちに読ませるページもつくってほしい」。

 先日、「民団新聞」あてにメールで届き、中央委員会でも出された意見です。「在日」をいかに生きるか、という古くて新しいテーマと子どもたちに明るい青写真を見せてあげたいとの願いは、いかに時代が移ろうとも親が抱く普遍的なものなのでしょう。


■子どもの表情の裏側に

 今、在日同胞社会は基盤を築いた1世世代に替わり、日本で生まれ育った2・3世が9割を超えています。2世の親が3世を育てる、さらに3世が4世の誕生を見守るという時代に移り変わっています。

 変わったのは同胞社会だけではありません。韓国や在日韓国人を見る日本人の目も1世の時代とは違い、受け入れられるようになってきました。それには、在日同胞の日本定着に伴う認知があるのでしょうが、1988年のソウルオリンピック前に起きた「韓国ブーム」によるところが大きいと思います。そして今、韓日両国が共催するワールドカップを直前にして、第2の「韓国ブーム」が到来し、日本からは「遠い国」だった韓国が近づいています。

 同胞の子どもたちを取り巻く環境は日ごとに良くなってきました。外国人登録の手続きから指紋押なつが廃止され、就職の門戸を制限してきた国籍条項も各地で開放されつつあります。そして、何よりも1世の時代を象徴していた貧しさから救われたことが、同胞社会最大の喜びと言っても過言ではないでしょう。


■アッパ、オンマの出番

 しかし、表面的な変化とは別に子どもたちは豊かな気持ちでいるのだろうか、と気にかかります。「在日の子どもたちの精神構造は今も昔も大差ない」とは、子どもの教育に永年関わってきた人の言葉です。

 悩める子どもたちの原因がすべて出自から派生しているとは思いませんが、暗い影の部分には「なぜ、ここは日本なのにぼくは韓国人なんかに生まれたんだろう」という素朴な疑問があるようです。では、何をどうすれば子どもたちは伸び伸びと生きることができるのでしょうか。

 「水を飲む時には、初めて井戸を掘った人の苦労を思え」と言われます。差別的な制度の改廃の影には、先達の必死の決意と実践があったことを忘れないためにも、まずは親が身近な同胞史や親自身の生き様を子どもたちに伝えていきましょう。無言の背中よりも雄弁な心の内を見せることが大事です。「在日」を生きてきた親の口から体験に裏打ちされた「人権宣言」が飛び出せば、子どもたちの生きる勇気にきっとつながるはずです。

 親が心を開かなくては、子どもとの距離も縮まりません。アッパ、オンマの皆さん、最近、子どもたちの目を見てきちんと対話をしていますか。

(2002.04.03 民団新聞)



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