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慎武宏の韓国サッカーレポート

<アジアの虎の鼓動>欧州遠征の成果



フィンランド戦で大活躍した黄善洪

世界レベルのリズム掴む
肉体・精神的にもタフに

 スペインとドイツに行ってきた。3月5日から行われた韓国代表の欧州遠征を密着取材するためだ。

 今回の欧州遠征は、本番のW杯に向けた最後の海外遠征。Jリーグ組はもちろん、薛埼鉉、安貞桓といった欧州組も合流した実質的なベストメンバーで、チュニジア(13日)、フィンランド(20日)、トルコ(26日)との親善マッチも組まれた。

 結果は1勝2分け。チュニジアに0対0で引き分け、フィンランドには黄善洪の2得点で2対0で勝利。FIFAランキング25位のトルコ戦も0対0で引き分けた(韓国は41位)。

 とりわけドイツ西の工業都市ボーフムで行なわれたトルコ戦の引き分けは大きい。

 何しろ韓国にとっては実質的なアウェー。ドイツには約250万人のトルコ系移民が暮らしており、ボーフムはその数がもっとも多いとされている。案の定、スタンドはトルコサポーターで埋めつくされ、選手たちはボールを持つたびにブーイングされるなど、アウェーの洗礼を浴びた。しかも、トルコはほぼベストメンバーに近い布陣。欧州のビッグクラブでプレーする選手が集結し、観客の大声援を背にしながら果敢に攻めてきた。

 そんなトルコを無失点に抑えたのだから、価値あるドローと言わずにいられない。実際、今回の欧州遠征ではさまざまな収穫があった。

 洪明甫の復活で安定感が増した守備。黄善洪、崔龍洙、柳想鐵らJリーグで活躍するベテランたちによって飛躍的に向上した攻撃力。ヒディンク監督を悩ましてきた司令塔不在も尹晶煥の加入で改善されつつある。

 遠征期間中は98年W杯でベスト4に輝いたオランダ代表のフィジカルトレーナーを招いて体力強化プログラムも実施。高速化が進む現代サッカーでは、そのスピードとテンポを90分間持続できるエナジーが不可欠とされているが、「選手たちは国際水準のリズムをからだで覚えつつある」と語ったヒディンク監督の言葉通り、チームは23泊24日という世界的にも例がない長期の海外遠征を通じて、肉体的にも精神的にもタフになった。そういう意味では、今回の欧州遠征は大成功だったと言えるだろう。

 そんな欧州遠征中にこんなことがあった。スペインのカタルヘーニャで行われたフィンランド戦のときのことだ。

 平日の午後3時開始ということで空席が目立ったスタンドの片隅から、「テーハンミングッ!!(大韓民国)」と声が聞こえてきた。目を向ければ、そこには30人強の韓国人らしき集団がいる。試合後にその一団を訪ね話を聞いてみると、首都マドリッド在住の僑胞たちでバスに4時間揺られてやって来たという。

 ドイツで行われたトルコ戦でも、現地に住む多くの僑胞たちと出会った。

 ボーフムには200人あまりの僑胞が暮らしているが、現地の韓人会会長の話によると、そのほとんどがスタジアムに足を運んだという。そればかりか一部の人々は民族衣装に身を包み、スタジアム周辺で手作りのビラを配りながら、いよいよ目前に迫ってきたW杯の広報に汗を流していた。その熱心な姿に、感銘せずにはいられなかった。

 思えば、韓国代表の行くところにはいつも現地僑胞たちの姿がある。韓国代表を追いかけて世界各国を回ってきたが、タイでも、オーストラリアでも、レバノンでも、現地僑胞たちの姿を見なかった試しはない。そして、そこにはいつも熱い声援がある。「アウェーの厳しい雰囲気の中でかすかに、そして力強く聞こえてくるウリマルの声援が力になった」とは、トルコ相手に価値あるドローを演じてみせた選手たちの言葉だ。

 異国の地で力強く生きる彼らの声援は、選手たちに戦う勇気を与えているのだ。

 そんな熱い声援に支えられながら、欧州遠征を成功的に終えた韓国代表。わずかな休息を終えたのち、4月20日にはコスタリカと、27日には中国代表とテストマッチを行う。今度は地元の熱烈なる大声援を受けながら……。

(スポーツライター)

(2002.04.03 民団新聞)



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