民団新聞 MINDAN
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共生へのキックオフ 鼎談・2002W杯

ホスト都市の韓日・在日<神戸>



左から 矢田立郎神戸市長
具謨俊民団兵庫本部団長
金演権駐大阪韓国総領事館神戸事務所長

韓日共催W杯の成功めざして 住民交流通じ「国際化」推進

 日本中を震撼させた95年の「阪神・淡路大震災」。未曾有の混乱と瓦礫の中で、神戸市は「市民に夢と希望を」との一心で、W杯招致を決めた。そして、W杯の開催決定は復興への大きな励みになった。震災からすでに7年。鼎談企画第5弾は、神戸市の矢田立郎市長と駐大阪韓国総領事館神戸事務所の金演権所長、民団兵庫県本部の具謨俊団長に、W杯と蘇る神戸について語っていただいた。


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よみがえる神戸の姿
子どもたちに夢と希望を 矢田
臨場感あふれる競技場に 金

 具 02年ワールドカップサッカー神戸招致委員会が、誘致活動を展開する過程の95年1月に阪神・淡路大震災が起きた。未曾有の被害を受ける中での活動は、相当な心痛があったのではないか。

 矢田 このような時にこそ神戸開催を実現することにより、市民とりわけ次世代を担う子どもたちに夢と希望を与えたいと招致活動を継続した。その気持ちは市民全体に根付いていた。一日も早い復興を願い、神戸開催決定を一つの励みにして、復興に努力してきた。昨年1月から9月にかけて、まち全体をステージとして開催された「神戸21世紀・復興記念事業」では、震災の復旧・復興支援に対する感謝のメッセージを発信し、よみがえる神戸をご覧いただいた。人口も151万人で震災前の姿に戻りつつある。

具団長

 具 W杯本番では、震災時に支援していただいた国内外の多くの皆さんに復興した神戸の姿を見せることができるだろう。私たち民団でも地域住民の立場から成功を願う気持ちを表したいと思い、在日韓国人後援会への募金とは別に、神戸開催推進委員会に対し独自に200万円を伝達したところだ。

 金 会場の神戸ウイングスタジアムは、陸上トラックを併設していないスタジアムと聞いた。サッカーをはじめ、ラグビー、アメリカンフットボールなど、ゴール型球技専用のスタジアムの魅力は何か。

 矢田 選手がプレーするフィールドと観客席が非常に近いことだ。メインスタンドとタッチラインまでが約9メートル、バックスタンドまでが約6メートルで、臨場感溢れる設計になっている。また、大阪の長居競技場などとならび、中心市街地内に立地するという、市街地型スタジアムであることから、全体にコンパクトな設計となっている。外観は丸みを帯びた球体フォルムを取り入れることにより、近隣の方々への圧迫感を和らげるとともに、日照(日影)や風の(ビル風)の影響を最小限にとどめるよう配慮されている。

 金 その他にも車椅子席70席、車椅子用地下駐車場70台、触知盤の設置、日本語・英語・中国語・韓国語の四カ国語表示など、ユニバーサルデザインを心がけたことが見て取れる。会場へのアクセスとフーリガン対策については。

 矢田 昨年7月に開通した地下鉄海岸線御崎公園駅から徒歩5分の距離だが、安全な大会運営を期してスタンドに応じて分離誘導を行う。西側メインスタンドと南サイドスタンドの観戦客は、地下鉄を利用するルート。東側バックスタンドと北サイドスタンドの観戦客はJR兵庫駅から徒歩約25分のルートへ誘導する。試合終了時の退場の際には観戦客が一時に集中するため、臨時バスの運行を予定している。


金所長

開かれた都市
もっと暮らしやすい町に 具
W杯後も民団の活躍期待 矢田

 金 神戸市は「国際理解のための市民講座」を92年から毎年12月に開催するなど、国際化にも熱心であるが、ここに住んでいる外国人市民への期待を聞かせてほしい。

 具 神戸は日本を代表する国際貿易都市として発展し、海外文化の窓口の役割を果たしてきた。タウンミーティングを積極的に進める市長には、W杯を契機に外国人がもっと暮らしやすい都市になるようリーダーシップを期待したい。

 矢田 外国人市民の市政への参画の一環として、政策提言会議には民団の金光男事務局長をはじめ6人の外国人委員に参加していただいている。市職員採用についても、消防職以外の全職種で国籍条項を撤廃し、現在外国籍職員が4人いる。福祉の分野では、制度的無年金者に対する救済制度として、91年から重度心身障害者特別給付金、98年から在日外国人等福祉給付金を開始した。

 具 在日韓国人は地域社会の構成員であり、民団は神戸市内最大の外国人団体だ。00年12月に主催した金大中大統領ノーベル賞受賞を祝う会には、県知事をはじめ県内の政財界の方々も呼びかけ人になっていただき、韓日親善が深まる契機になった。

 矢田 05年の神戸空港完成による、海、空、陸の国際物流拠点の形成を目指している。また、21世紀の成長産業である医療産業をポートアイランド2期に集積し、神戸経済の活性化の拠点を形成する。民団にはW杯以降も日韓交流の掛け橋として一層の活躍を期待すると同時に、住民同士の交流を通じて地域の国際化の推進への役割を期待している。


矢田市長

市民レベルのもてなし
各界で活躍の在住外国人 金
韓国語ボランティア制も 具

 金 神戸には在住外国人4万4千人のうち約2万5千人の韓国同胞が生活し、各界で活躍している。韓日間では年間360万人、1日1万人を超える人々が往来する時代になった。日韓共催の趣旨を生かし、大いに大会を盛り上げてほしい。

 具 神戸で行われる6月17日のセカンドラウンドは、Cグループ1位とHグループの2位が対戦することになっており、Hグループには日本が入っている。在日韓国人も神戸市民として日本が2位で1次リーグを通過し、地元でセカンドラウンドを戦ってもらうことを期待している。

 矢田 日韓共催の精神をスタジアム以外でも発揮したい。チュニジア大使館の方が須磨区板宿の「カルタゴ」の像を視察に訪れ、地元商店街が歓迎セレモニーを行った。同地区では小・中学校も参加して地域ぐるみでチュニジアの応援活動プランを検討している。他の地域でも,市民応援団活動に取り組んでいこうという動きがあり,関係部署と連携をとりながら,支援していきたい。

 金 山の緑と海の青さ、豊かな自然環境が神戸の魅力だ。六甲山からの夜景は1000万jの眺めと言われている。また、外国人によって建てられた洋館が残り、東洋と西洋とが交じり合った独特の美しい街並を誇る。この機会に神戸をアピールしてほしい。

 矢田 世界各国からのお客様を心からおもてなしするよう、各国語で挨拶できるよう一言挨拶集を作成する。また、神戸でファーストラウンドの試合を行うナイジェリア、スウェーデン、ロシア、チュニジアの4か国を応援する「市民応援団」活動を推進する。スタジアム周辺の4つの小学校では、それぞれが1つの国を担当して、出場国の大使館や在神の方々を招いた交流会で、その国について学び、大応援旗へ応援メッセージを書き込んだ。新学期以降は他の小・中学校に広げる方向で、この応援旗は3月下旬から三宮センター街に掲出する予定だ。

 具 民団は韓国語ボランティア制度を立ち上げ、大会成功に協力している。他にも多くの外国人コミュニティ団体が、観戦に訪れる外国人に通訳や観光PRを行い、観光分野でも観光ガイドボランティアとして北野・三宮地区の案内スポットなどのマップづくりを計画していると聞いた。

 矢田 そのほか、神戸アスリートタンクラブなどのNPOを中心に、これまでのスポーツクラブの枠組みを超えたネットワーク「こうべスポーツ応援団」を作り、インターネット上での各開催地情報の提供やクリーン作戦などを展開していく。

(2002.04.03 民団新聞)



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