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在日へのメッセージ

小林一博(東京新聞論説委員)



いつか「半島周遊船」で

 少々頭に酒がのこったまま、カーフェリーで釜山に降り立ってから30年近くが経つ。それから、日本やソウルで、たった1回だが北朝鮮を訪ねて、朝鮮半島を見続けてきた。

 南北対立はまったく変わらず、「東西冷戦の化石」ともいわれるが、この半島には、6千万もの人間が住んでいて、生臭く生きている。化石どころではない。

 30年で一番変わったのは日本と韓国の関係だ。小泉純一郎首相がよく言うように、65年の日韓国交正常化の時、両国人の往来は1年で1万人だったが、いまでは1日に1万人が行き来している。極端なことを言えば、政治の世界を除けば、両国の友好関係は年々良くなってきた。人々の交流がお互いの理解を深めたのである。

 また、在日の影響も大きい。日本人の多くが焼き肉を好むようになったのは、在日の焼き肉店を通じてである。時に「日本は単一民族の国」などという政治家もいるが、他の民族の存在を認め、「共存」の必要性を考えるうえで、在日の果たした役割は大きい。「日韓の架け橋に」と飛び回っている在日も少なくない。一方で、北朝鮮を後ろ盾にする在日によって、日本人の韓国観、北朝鮮観が大きくゆがめられた面もある。

 朝鮮半島の北半分で軍事独裁体制が続く中で、東アジアの新しい秩序、平和と安定を確保することは難しい。日韓の人たちはもちろん在日も含めて、この地域から緊張をなくす時代の変化を後押しする必要がある。

 いつの日か、朝鮮半島周遊の遊覧船のデッキで一杯酌み交わしたいですね。長い間のご愛読ありがとうございました。

(2002.04.17 民団新聞)



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