民団新聞 MINDAN
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共生へのキックオフ鼎談・2002W杯

ホスト都市の韓日・在日<新潟>



平山知事

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時代超えた若者の交流期待

 新潟県のサッカーW杯開催地に建設された「ビッグスワン」は白鳥をイメージした優雅なスタジアム。開会式後、日本での第1試合がキックオフされる会場でもある。W杯鼎談企画第6弾は、この新潟で準備に当たってきた平山征夫知事、崔元吁駐新潟総領事、金三中民団新潟県本部団長にW杯の準備状況や期待を語っていただいた。


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日本海側で唯一の新潟
「良い決定」と改めて認識…平山
韓国象徴の催し目白押し…崔

 平山 今回のワールドカップは世界で初めて日本と韓国の共同開催になる。単独開催ではなく、共同開催というかなり新しい方式で、決まったときは一瞬とまどいもあった。しかし、よく考えてみると、21世紀という新しい世紀で初めて、しかもアジアで初めてという大会を、日韓が共同で開催する意義を改めて認識する良い決定であった。

 昨年3月に完成した鳥屋野潟の「ビッグスワン」は4万2300人を収容できる。湖の側にあり、日本の開催地では最大の駐車場が設備され、デザインの美しさとあわせて大変評判はよい。スタジアムが立派に完成したことをはじめ準備はうまくいっている。

 昨年5月にコンフェデレーションズカップを開催したことで、混雑状況や輸送に関わる経験も積むことができた。

 崔 今回の韓日共催のワールドカップの大会は、両国間の相互協力を通じて、相互理解を深める本当に良い機会だと思っている。今世紀における、未来志向的な両国間の友好協力関係を発展させる最も重要なイベントだと考えている。

金団長

 特に今年は韓日国民交流年でもある。ワールドカップと国民交流年の意義を生かせば、相互理解に大きく役立つだろう。

 さらに、韓日両国間の共助・協力を通じた安全開催が最も大切であり、この大会が成功すれば北東アジアの平和と安定、ひいては世界の平和にも大きく寄与するであろう。

 金 ご承知の通り新潟は同胞数2500人程度で同胞過疎地帯。それにまた、端から端まで移動するのに5時間もかかるという地理的条件があって、統一した行動が取りにくい。しかし、県に設置されている推進委員会に所属しており、かなり多くの具体的な行事が予定されているし、すでに実施してきた。

 民団は、推進委員会の仕事の一部でもお手伝いできればと、現在推進委員会と行動を共にしている。

 崔 大会前後に新潟で韓国を象徴する催しが目白押しだ。少し紹介すると、4月26、27日にはナンタ(乱打)公演、5月初には韓国物産展、6月2日からは韓国写真展も開かれる。特にナンタは人気が高い。韓国の文化を十分に知ってもらえると思う。


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両チーム勝敗の行方
希にみる高揚した大会に…金
共に決勝トーナメントへ…平松

 平山 日本と韓国が良い試合をして、両方が決勝トーナメントに残ると大会ががぜん盛り上がる。これはもう間違いない。前回大会で、フランスが勝ち進んでいるときの雰囲気をパリで見ていた。これはもう大変だった。優勝した時、シャンゼリゼは100万人の人で埋まるすごい盛り上がりだった。「とりあえず1勝」と言ってますが、本当は決勝トーナメントに出てもらいたい。

 崔 韓国はヒディング監督が就任してから頑張ってきたが、なかなか成績が上がらない(笑)。しかし、最近の欧州遠征の結果を見ると、だんだん強くなっている感じがするし、必死に練習しているようだから、なんとか16強に入れるのではないかと願っている。

崔総領事

 平山 FIFAのランキングは、韓国が41位で日本は38位。ほとんど同じ。ただ対戦相手が、日本の場合22位のベルギーと23位のロシア、29位のチュニジア。すべてランクは上だけど、3カ国とも20位台と取り組みやすい。しかし韓国の場合、4位のポルトガル、13位の米国と強豪がいる。

 崔 36位のポーランドに、まず勝たなければ。

 平山 前回、日韓の開催都市の代表が集まったとき、金大中大統領との晩餐会で、それぞれが自国を応援して、どちらかが先に負けた場合、残った国を日韓が力を合わせて応援しようと提案した。両方とも決勝トーナメントに残れば最高だし、どちらかでも残れば双方が力を合わせて応援するのが一番いい。

 金 もし、韓日両方が決勝トーナメントに残ることができれば、今回の大会は史上まれに見る高揚した大会になることは間違いない。(一同同意)


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W杯以後の市民交流
近くて近い関係≠ノ尽力…崔
「交流センター」へ法人化…金

 平山 現在、新潟県内の在日外国人の登録者数は1万2000余人いるが、年々かなりのペースで増えており、国際化が進んでいる。

 大会を成功させることは、21世紀最初の日韓の共同作業として重要な意味を持つ。海を隔てて日韓は様々な歴史的な問題はあったが、未来志向で新たな第一歩を築いていくことが大切。そのことに今一番熱心に取り組み、参加しているのは若者たち。若者が新しい意識で時代を超えた交流を作っていってほしい。

 金 以前に比べれば、国際交流はものすごく増えている。国際交流が増え、国際化が進む中で、民団だけでは対応できない部分がかなり出ている。だから今考えているのは、民団を「国際文化交流センター(仮称)」として法人化して、政治、経済、文化などあらゆる部分で対応したい。今でも学校を含めて一般の市民たちからの韓国文化や経済に関わる依頼を受けており、精一杯の力を貸している。

左から金三中民団新潟本部団長・
平山征夫新潟県知事・
崔元吁駐新潟韓国総領事

 現実に、民団の仕事の半分以上は県や市はじめ日本市民の方からの交流関係の協力要請に応えることだ。それを中心に今年の早い時期に「国際文化交流センター」を設立し、専門部署を作って本格的に取り組んで行かなくてはならない時代が来た。具体的にはNPO法人化を目指しており、県とも研究を続けている。

 崔 最近の韓国人の日本に対する好感度、それと逆の日本人の韓国に対する好感度、両方とも高くなっている。ワールドカップが成功すれば、互いの認識もより一層良くなると確信している。特に両国の市民同士の交流ももっと幅広くなる。例えば、地方自治体間や青少年、文化、芸術、スポーツ、学術などの分野で人的交流が深まる。だから今大会は、両国の相互理解をもとに「近くて近い」関係へと発展する近道として絶好の契機だ。開催地域、新潟に赴任している総領事として、全力を尽くして両国間の交流に寄与したい。

 平山 今大会が日韓共同開催となったのは、誰かが意図して両国の新しい交流のあり方を仕組んだわけではない。たまたま双方が手を挙げて、双方とも熱心だったためにFIFAも決めかねて「共催」になったと思う。しかし結果として非常に良かった。逆に言えば、その結果を良くしようという気持ちが大切だ。

 歴史的問題は、事実としてあり、そこを日本人はしっかりと考えなければならない。また、それを乗り越えていく方法を双方で前向きに話し合っていくことも大切だ。新しい歴史認識の問題も含めて新しい日韓関係は、それぞれの地域の交流の中で良い方向に進みだすと期待している。

(2002.04.17 民団新聞)



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