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公務員開放、問われる質と中身




 定住外国人の公務員採用への道を閉ざしてきた「国籍条項」の壁が今春、千葉市を最後にすべての政令指定都市で崩れ去りました。政令市は都道府県同様、国の直接指導を受けるため最後の牙城≠ニされてきただけに、門戸開放の波が政令市の一般事務職すべてに及んだ意味は大きいといえます。


■任用制限に踏み込まず

 ただし、その撤廃の中身や質の面では、課題を依然積み残したままであることがあらためて鮮明になりました。その課題とは、土地収用や税の賦課などいわゆる「公権力の行使」を伴う一部職場への配置を制限した部分開放であり、「専決権のある課長以上」「政策決定に関わる係長以上」には就けないという任用制限なのです。

 今年から京都市役所に初の外国籍一般職として採用された在日同胞3世の女性(21)は1日の発令式の日、「将来は税金に関する仕事をしたいけど、税の分野では国籍面での障害が少しある。それも撤廃されればいいと思う」と控えめに語っています。「国籍にとらわれず、一市民として市に貢献する仕事がしたい」との思いで難関を突破しながら、能力ではなく、その属性で差別されているのです。

 地方公務員の職務とは、決められた法律、規則に従い遂行されるものであり、国籍は本来、問題になるはずもありません。国籍を理由に管理職の試験を受けられなかった鄭香均さんが東京都を訴えた裁判でも、東京高裁は判決で「自治体は個々の仕事の内容を具体的に検討して外国人が就いてはいけないというのであればその理由を明らかにすること」を求めています。


■武生市などは完全撤廃

 「公権力の行使」にあたるとして政令市がおしなべて開放を見送った消防職についても、国籍制限を撤廃している自治体は多数見られます。福井県武生市では「当然の法理」を「あまりにも抽象的で妥当性がない」と、「国籍条項」を撤廃しました。さらに、採用にあたって「一般職として同じスタートラインに並んだ職員に、配置や任用で差が出る運用は好ましいものとは思われない」と結論付けました。現実に兵庫県川西市では、在日同胞の管理職が誕生しました。武生市や川西市のような採用方法こそこれからのスタンダードとなっていくべきです。

 「当然の法理」は内閣法制局が53年に示した見解です。それから間もなく半世紀が経とうとしています。その間に私たち在日同胞は日本に永住・定住し、日本人住民と同じように義務を果たしながら生活を送ってきました。

 私たちは「部分開放」を一定の前進と評価していますが、制限の撤廃も現実になっているなか、さらなる検討を望みます。それでも日本人と異なる取り扱いに拘泥するのであれば、自治体は国の見解によらず、具体的で説得力のある理由を示すべきです。

(2002.04.24 民団新聞)



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