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共生へのキックオフ

鼎談・2002W杯 ホスト都市の韓日・在日<宮城>



朴団長

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市民レベル友好深める時代に

 開幕まで40日を切った韓日共催のW杯。両チームともに悲願の1勝に大きな期待がかかるが、「勝ち負けよりも韓国の成功が日本の成功、日本の成功が韓国の成功」という関係を築きたいと関係者は語る。W杯鼎談企画第7弾は、宮城県の浅野史郎知事と駐仙台韓国総領事館の朴正浩総領事、民団宮城県本部の朴鍾煥団長に、W杯と今後の韓日関係、日本人と在日同胞との共生について語っていただいた。


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宮城県民の盛りあがり
友好・交流進展の契機に…朴鍾
「五輪」以上の大イベント…浅野


浅野知事



 浅野 昨年12月18日、民団県本部からW杯宮城・仙台推進委員会とW杯日本組織委員会に200万円の貴重な寄付をいただいた。この機会に改めてお礼を述べたい。

 朴(鍾) 宮城県内に住んでいる約3000人の在日韓国人は、地域社会の発展を目指して共生・共栄のために貢献していきたいと思っている。その気持ちの表れだと受けとめてほしい。W杯が一過性のイベントに終わることなく、これまで以上に韓国と日本・在日同胞と日本人の友好・交流関係が進展する契機になることが私たちの願いだ。

 朴(正) 会場となる宮城スタジアムは2000年3月に完成し、すでにいろいろな大会で使われているようだ。銀色の屋根は仙台藩主、伊達政宗公のかぶとをイメージした三日月型で、ずいぶんと目立っている。

 浅野 2000年6月のキリンカップ、8月のJリーグオールスター戦、さらには昨年10月の第56回国体など、大規模な試合、大会が開催されてきた。この経験を踏まえ、大会関係者と一般観客の動線分離、自家用車などの乗り入れ制限などを図り、観客の輸送計画を策定している。

 スタジアムの収容人員は49133人で、国内の開催地の中では横浜、埼玉、静岡に次ぐ4番目の規模を誇る。また、障害を持っている方にも楽に、使いやすいようにと、車椅子席104席、難聴者対応観客席3500席、手すり付きトイレ・多目的トイレを設置し、随所にバリアフリー対策を心がけたのも特徴だ。 朴(鍾) 昨年J1昇格を果たしたベガルタ仙台の好調ぶりと合わせ、県民の盛り上がりは日ごとに高まっているようだ。

 浅野 私自身もW杯というものをよく知らなかったが、日韓共催が決まってから本格的に内容を知っていくと、オリンピック以上のビッグイベントということを遅まきながら分かるようになった。県民も94年に設立されたブランメル仙台(現ベガルタ仙台)によってサッカーというスポーツが身近になってきたと思う。

 朴(鍾) 宮城県の県民性も東北地方のイメージも一般的に閉鎖的だと受けとめられているのではないか。イメージチェンジをするチャンスだと思う。

 浅野 外国人に限らず、外の人に対しては愛想がある方ではない。しかし、今回は県民性を変える契機にもなるのではないかと思う。外国人がこれだけ多くやってくるのは、宮城県の歴史が始まって以来のことだ。いい意味でカルチャーショックだ。


朴総領事

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勝敗よりも共通認識
新たな歴史を共に築こう…浅野
お互いに本音で祝いあう…朴正

 朴(正) 知事はフランス大会にも行って来られたようだが、現地の様子とW杯の関係部署を訪ねてみて、宮城県が取り入れようと思った点は。

 浅野 全世界挙げてのお祭りだということを肌で感じ、そのインパクトの大きさを痛感した。ホテルに入った日がちょうど準決勝の日で、パリの中心部は熱狂した市民らが、決勝戦を前にして夜中まで騒いでいた。民間も政府もこの機会に徹底的にフランスを売り込もう、サービスを尽くそうという姿勢が貫かれていたのが印象的だった。国民全部が遠来のお客さんを暖かく迎え入れる雰囲気がつくられていたと思う。

 朴(鍾) 民団の代表として「推進委員会」の顧問に推挙され、開催400日前のカウントダウン点灯式にも参席した。韓国籍を持ちながら日本に住んでいる私たちにとって、共催自体に意義があるし、東北6県という一つの大きなエリアで考えると、宮城での3試合を必ず成功裏に終わらせてほしい。6月18日に行われる3試合目は、日本が入っているHグループの1位が出場する。日本が出場するようになれば何はさておき応援に行きたい。

 浅野 日本は組み合わせがよかったと言われるが、どこも強豪ぞろいで1つ勝つのも大変だと思う。1位はとても望めるわけではないが、可能性がないわけでもない。日本チームにはぜひ1位通過で宮城スタジアムに来てほしい。

 朴(正) 大事なことは、韓日がお互いに本音でお祝いを交わすことのできるいいイベントだから、勝ち負けよりも今度こそ「日本の成功が韓国の成功、韓国の成功が日本の成功になる」という関係を築いてほしいということだ。最近、日本の新聞の世論調査によると、「韓国に親しみを感じる」という日本人が約70%に達している。5、6年前の調査結果が40%台だったことからすると、やはりW杯が持つ付随効果の表れだと言うことができる。

 浅野 正直言って、日韓共催に決まった時はショックだった。なぜ、日本の単独開催にならなかったのか、嬉しさも半分くらいだった。だが、その後訪韓し、「これまで韓日は必ずしもいい歴史だけではなかったが、W杯開催を機に新しい歴史を一緒につくっていくことができる。その意味で共催はすばらしい」と言われて共感した。

 宮城スタジアムは人口約3万人の利府町にある。開催自治体で一番小さいが、むしろ小さいからこそ地元の小学校が宮城に来る外国の文化や言葉を知る機会を持つことができる。


左から、朴正浩駐仙台総領事、
浅野史郎宮城県知事、
朴鍾煥民団宮城本部団長

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韓日の真の友情を
厳しい関係克服してこそ…朴正
「地方参政権獲得」実現へ…朴鍾

 朴(鍾) 昔と違って今は、韓国人だからといって子どもたちがいじめられる時代ではないし、両国の市民レベルで友好を深めようという時代になった。民団などの運動が実を結んだ結果だと思うが、得られていないのが地方参政権だ。この地で生まれ育ち、この地に貢献したいという気持ちをわかってほしい。

 浅野 国籍が違っても税金を払っているということは、地域にも大いに貢献をしてもらっているということだ。韓国は日本にとって一番近い国なのに、これまで遠いという感じがなきにしもあらずであった。今や韓国の選手がJリーグにはなくてはならない存在のように身近になった。今回の共催は大きな財産だ。必ず成功するだろうし、お互いがお互いを必要とする存在になって友情も深まるはずだ。明るい日韓の未来を展望している。

 朴(鍾) 本国に対しては昨年「教科書問題」などの政治問題が起こったにせよ、たった1回かもしれない訪韓の機会を失う子どもたちの心情をどうフォローするのか。民間交流は遮断してほしくなかったと今でも思う。

 朴(正) そういう厳しい関係を克服してこそ、韓日の真の友情が芽生えると信じている。W杯を機に上半期だけでコンサート、写真展など、文化行事が3倍に増えたが、できれば、仙台市と光州市が4月20日に姉妹提携の正式調印をしたことでもあるし、経済分野での関係が深まることを期待したい。

(2002.04.24 民団新聞)



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