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共生へのキックオフ

鼎談・2002W杯 ホスト都市の韓日・在日<静岡>



金副団長

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共生と国際性豊かな地域創造

 W杯開催の5月を迎えた。Jリーグ2チームを擁する静岡県は、「サッカー王国」として知られる。県内4カ所で4代表チームのキャンプも張られ、熱気の中で本番のその日を待つばかりだ。W杯鼎談企画第8弾は、静岡県の石川嘉延知事と民団静岡県本部の金光敏副団長に、W杯への期待と韓日国民交流行事の年にふさわしい「平成の朝鮮通信使」について語っていただいた。


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サッカー王国・静岡
留学生を親善大使に委嘱…石川
悲願の1勝≠コひ達成を…金

 金 W杯開催まで30日を切り、地元では日ごとに盛り上がりを見せているが、3試合が行われる「静岡スタジアム  エコパ」は、歓声のこだまを表すエコーと、環境のエコロジーから取ってエコ、パは仲間のパルと公園のパークから取ってエコパと名付けられたと聞いている。W杯のために新設されたスタジアムの特徴は。

 石川 「エコパ」の響きは耳に馴染みやすく、とても良い名前を付けていただいたと感謝している。エコパでは、誰もが安全で快適に利用できるようゆとりのある観客席、ファミリートイレ(多目的トイレ)、車椅子対応席、身体障害者対応エレベーターなどを整備し、ユニバーサルデザインの実現を図っている。オープンして1年が経つが、構想通りにいっている。日本代表選も順調に行うことができた。臨場感のある試合を快適に見ることができることから、プレーする人からも、見る人からも大変評判がいいようだ。

 金 日本代表をはじめ、ロシア、ウルグアイ、セネガルの4チームが県内4カ所をキャンプ地に選んだ。これはほかの開催地では見られないことだ。W杯などの国際イベントを開催するにあたり、静岡県は言葉の壁を乗り越えるためにどのようなことをしているのか。

 石川 静岡県では、通訳ボランティアを養成し、また、外国人留学生をふじのくに親善大使に委嘱して、県民との協働による行政を進めている。通訳ボランティアでは、韓国語、英語、フランス語、スペイン語、中国語の5言語、計436人が養成講座を修了して、これまで様々な国際イベントで活躍している。また、ふじのくに親善大使は、32カ国1地域から静岡県に来た留学生179人に委嘱しており、ワールドカップに向けた市民のためのロシア語教室の講師をするなどの活躍をしている。これらの皆さんの活躍を大いに期待している。

 金 在日韓国人としては、何としても韓国チームに悲願の1勝を達成してほしいが、在日3世以降の若い世代は、韓国の選手よりもJリーグを通じて日本選手に馴染みが深い。日本選手チームが活躍して地元のエコパで順々決勝を見たいと思う気持ちも強いはずだ。Jリーグ2チームを擁する県の知事として、日本チームの勝算をどう見ているのか。

 石川 近年、日本サッカーは、Jリーグ効果により急速に強くなっている。ファーストラウンドのH組は、どこが勝っても不思議ではないと言われ、力が拮抗しているが、自国開催のメリットを生かして予選を突破し、ベスト8に進出して、エコパでの世界の強豪との対戦が実現することを期待している。静岡県出身選手の活躍も楽しみの一つであるが、まずは日本と韓国の両代表チームが共にすばらしい成績を収めることを望んでいる。


石川知事

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韓日交流の取り組み
「朝鮮通信使行列」を再現…金
民団の協力、大変心強い…石川

 金 御殿場日韓友好協会の副会長を務める張清志副団長の地元では、韓日の小・中学生によるサッカー交流を毎年続けている。友好協会のメンバーは韓国が好きで、W杯抽選会の時には釜山にも出かけたというくらいだ。清水市でも「全国少年・少女草サッカー大会」に6、7年前から韓国のサッカー大会で優勝した小学生チームを招待している。地域に根づいたサッカー文化の上に、韓国との交流が深まっているが、実に喜ばしい。県と済州道とは山が取り持つ縁があるようだ。

 石川 静岡県と済州道には、温暖な気候、みかんやお茶といった自然の豊かな恵み、ワールドカップ開催地という共通点に加え、それぞれの国の最高峰がある。こうしたことから、両地域の山岳連盟が、富士山と漢拏山の交流登山を実施しており、昨年9月には合同で富士山に登頂し、今年5月には漢拏山の山頂を目指すと聞いている。県としては、これらの市民交流を全面的にバックアップしていくつもりだ。

 金 昨年10月、東海道400年祭事業の一環として、常葉学園大学の金両基教授のご尽力で民団と朝鮮総連、そして日本の市民団体が朝鮮通信使の行列を再現する試みがあった。あいにくの雨で市内行列はできなかったが、目抜き通りをコリアタウンにして韓国の味や韓国の音に触れる機会になった。通信使は「韓日国民交流年」の今年の記念行事として、11月に再現するが、自治体側の準備を聞きたい。

 石川 昨年の雨は大変残念だった。朝鮮通信使は、徳川家康が日本と朝鮮半島の平和と友好のために受け入れたもので、第1回通信使はここ静岡で家康に会見している。また、東海道を移動した通信使との交流の逸話なども県内各地に残されている。こうしたことから、朝鮮通信使の行列を静岡で再現したいという強い思いが市民団体にあり、今年はこれを、「静岡・コリア市民交流フェスティバアル」と銘打って開催する。こうした市民レベルの盛り上がりは、大変喜ばしいことであり、県としても積極的に応援していきたい

 金 韓国から来日する50人から60人規模の平成の朝鮮通信使使節団を迎え、民団は自治体と日本の民間をつなぐ役割を果たしたいと思う。日本の家庭に民泊してもらい、静岡の郷土文化、日本の良さを体感してもらいたいと思う。このようなことが、韓日の架け橋的存在である民団の役割だ。

 石川 ありがとうございます。韓国からの参加者については、より静岡を知っていただくためホームステイでお迎えしたいと思っている。ホストファミリーは静岡県国際交流協会を通じ、県民から広く募集する予定だが、民団の協力をいただけるのなら、大変心強い。


左から石川嘉延静岡県知事・金光敏民団静岡副団長

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「富国有徳」の県づくり
真価問われるのは今後に…金
参政権付与へ働きかける…石川

 金 静岡県は日本人の価値観の平均値を示す地域だと言われ、他地域からも注目されている。W杯を前後して韓日親善交流が進んでいるが、この動きを一過性に終わらせないためにも真価が問われるのはこれからの取り組みにかかっている。すでに96年には「静岡県国際化推進プラン」も出されているが、地域住民の立場から地方参政権の早期解決のために知事の英断を期待したい。

 石川 グローバル化が進む中、永住権を持つ外国人が地方参政権を持つことには賛成である。生活に直結する地方政治に参画する権利はあった方がよいと考える。ただし、現実問題として、地方自治体は国がやるべき仕事を多く担っており、国の安全に直結する下請け的機能も果たしているのが現状である。こうしたわが国の内政構造を改め、地方分権推進の中での参政権付与という方向で議論が高まるよう広く働きかけていきたい。

 金 W杯は「世界に開かれた静岡」を演出する絶好のチャンスだ。「推進プラン」が謳うように、「地域社会との共生と国際性豊かな地域創造」が地域活性化の鍵だ。

 石川 静岡県は、新たな総合計画の基本理念に「富国有徳」の魅力ある県づくりを掲げた。これは、美しく雄大な富士山のように真に豊かな地域であると同時に、豊かさを有意義に生かす有徳の志を兼ね備えた魅力ある地域にしようという提案である。静岡県は、日本を代表する要素を全て備えているので、富士山とともに「富国有徳」の静岡県を広く知って欲しい。

(2002.05.01 民団新聞)



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