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韓国理解へ心≠フ講演

10年で50カ所超える



韓日の歴史を
わかりやすく伝える禹さん

小中高校教育機関で韓日の歴史を中心に
福岡県本部副団長・禹判根さん

 4月から日本の公教育に取り入れられた「総合学習」の中の国際理解の一環として韓国の文化・風習を知ろうとする授業を取り入れる学校が増えつつある。そんな動きのはるか以前から、福岡・大牟田市を中心に、小中学校などで「韓国理解」を訴え続けてきたのが福岡県本部副団長の禹判根さんだ。講演先がこのほど50カ所を突破した。

 講演先は大牟田市の小中高校、福岡各地の市町村の教育委員会など教育関係が多い。大牟田市立の小学校で講演していないのは4校だけという。

 講演活動を始めたのは10年ほど前から。市立の平原(ひらばる)小学校で、平和教育の一環として、第2次大戦で最も被害を被ったアジア諸国の人を招いて話を聞く企画が持ち上がった。当時、民団大牟田支部の支団長だったために白羽の矢が立った。しかし、学校や市教委も興味と不安が半々で、教室の後方に教諭や市教委関係者が並んだという。

 講演後、子どもたちだけでなく、ぜひ教育現場の教師にも聞かせてほしいと市教委から要請を受け、県教職員組合の総会時に170人を前に講演したのが、活動の始まりだった。以来、あちこちの小中学校や教育関係者から講演の依頼が舞い込んでいる。

 日帝時代末期の1938年生まれ。4歳で渡日し、苦労の生活を続けながら、三井三池炭鉱で犠牲となった同胞を弔うための慰霊碑建立に奔走するなど、強制連行の象徴とも言える炭鉱犠牲者の問題に深く関わってきた。様々な交渉に当たるため数多くの歴史書も読破した。そんな経験が韓日間の歴史に関わる講演内容を緻密にしている。

 市民を対象にした講演では、必ずといって良いほど「差別がいやなら国に帰れ」「選挙権が欲しかったら帰化すればいい」という声があがる。中には嫌がらせをするかのように最前列で居眠りを決め込んでいる人もいるという。「言わんとすることを、わかってもらうことが一番」と懇々と説得するのが常だ。

 この間、数多くの学校で子どもたちに、強制連行や植民地支配など韓日の歴史を分かりやすく伝えてきた。植民地支配時代の暗い歴史だが、まず本当のことを知って欲しいという思いからだった。しかし、話は平和の大切さ、韓国と日本の未来にまで及ぶ。

 韓国人でありながら日本に住み、2つの名前を持つことに疑問を抱いた児童たちが、自主的に調べた結果、強制連行や創氏改名という事実を知り、そこからより深く韓日の歴史に踏み込んでいった大正小学校のような例もあった。

 自宅には、子どもたちから寄せられた多くの作文が、きちんと残されている。「ウさんのおかげで韓国に興味を持つことができた」「これから私が大人になるまでに、日本は変わると思いますが、その変わり方を決めるのは私たちです」と書いている。

 「この子たちが本当に差別のない新しい韓日関係を築いてくれることを願う」と、講演活動に力を入れている。

(2002.05.01 民団新聞)



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