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無年金同胞、経過措置なく20年


立法不作為責任論も



無年金同胞救済の必要性認めていた%本政府
沖縄、小笠原返還時には特別措置日本人対象

 82年の難民条約発効に伴い、日本の国民年金法における国籍要件が撤廃されてから20年。いまだに永住外国人の障害者、高齢者が年金不受給のまま放置され続けている。これまで小笠原諸島や沖縄の本土復帰などの際には経過措置をとってきただけに、永住外国人に特例措置を認めないのは不合理と、「立法不作為」責任を追及する声も高まっている。

 無年金同胞は現在76歳以上の高齢者と、同じく40歳以上の障害者で、各数千人が該当するといわれている。本来なら高齢者で月額3万4000円余りの老齢福祉年金、障害者ならば同8万3000円余り(1級)〜6万7000円余り(2級)の障害基礎年金が支給されているはずだった。

 こうした人権侵害に対しては、日本政府・国会でも早くから救済措置の必要性を認めていた。79年4月9日、当時の橋本厚相は国会で「現在外国人に適用されていない制度につきましては…国際人権規約の趣旨に沿うよう努力していく」と約束。また、園田厚相も81年2月28日、在日外国人への経過措置をめぐる質問に「(難民条約の批准の後で)考えていかなければならぬ」と答弁している。

 85年に衆参両院で国民年金改正法が成立した際には「無年金障害者の問題について福祉的措置も含めて検討する」との付帯決議を行った。同様の付帯決議は94年11月の国民年金法一部改正の際にも確認されている。

 京都では聴覚に障害のある在日同胞7人が00年3月、障害年金の支給を求め提訴した。弁護団はこれまでの口頭弁論で、「現実に少数者への差別があり救済の必要性が認識され、立法の可能性もありながら(20年も)作らなかったのは国家賠償法のうえで違法とされる」と訴えてきた。

 これに対して厚生労働省側は「82年の国籍要件撤廃は当初から対象としていた人の立場を回復するというのではなく、制度の適用対象を拡大したものであり、それ以前に発生した老齢ですとか障害の事故に対して給付するのは年金制度の仕組みとして無理」という立場を崩していない。

 しかし、一方では94年に中国残留帰国子女にも特別立法で年金支給を決定しているだけに、外国人にだけ経過措置をとらないのは説得力を欠く。同弁護団は「国際人権規約の解釈からも差別であり、認められない」と反論している。


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国民年金制度改正≠フ歴史

 永住外国人は59年の国民年金制度創設時から国籍要件のため排除されてきた。82年には難民条約発効と共に国籍要件が撤廃され、在日外国人も強制加入対象となった。だが、同年1月1日現在で20歳を超えていた外国籍障害者は切り捨てられ、同じく35歳以上は加入しても受給資格期間(25年納入)が60歳までに足りないため、老齢年金が支給されない。また、60歳以上には老齢福祉年金が支給されない。

 86年の新年金改正法でも経過措置がとられず、同年4月1日時点で60歳を超えていた外国人は合算対象(カラ)期間が算入されないので老齢基礎年金は支給されず無拠出の老齢福祉年金の特例支給もない。

(2002.05.15 民団新聞)



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