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慎武宏の韓国サッカーレポート

<アジアの虎の鼓動>存在感を世界に示す時



W杯開幕を目前に熱の入る韓国応援団

目前に迫ったW杯
アジアのサッカー韓・日の本当の使命

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チーム強化も紆余曲折の連続

 いよいよ2002FIFAワールドカップ(W杯)開幕が目前に迫った。大会開幕直前とあって、テレビや雑誌などでW杯関連のニュースを目にする機会も多い。それを目にしながら改めて月日の流れの速さを実感する今日この頃だ。

 思えば、2002年W杯の韓日共同開催が決まったのは96年5月31日だった。ともに単独開催を目指して熾烈な招致合戦を繰り広げてきた韓日だったが、FIFA(国際サッカー連盟)内部の権力争いの影響を受け、政治的な妥協案として共同開催が決定。だが、近くて遠い♀リ日関係もあって、当時は期待よりも不安のほうが多かった。

 実際、共催決定から今日に至るまでの道のりは紆余曲折の連続だった。

 例えば名称問題だ。「韓国/日本か、日本/韓国か」と大会正式名称の表記の順で揉めたこともあったし、昨年夏には教科書問題や小泉首相の靖国神社参拝問題などで両国関係が揺れた時期もあった。

 そうした数々の難題を乗り切っていよいよ本番を迎えようとしている韓日。ふたつの大会組織委員会が実存するため「共催ではなく分催」との見方も否定できないが、両組織委員会は抜かりのない運営で大会を成功に導かなねばならない。それが地球最大のスポーツイベントの開催を、世界のサッカーファンから託された使命なのだ。

 そして、もうひとつ。韓日両国にはなし遂げなければならない使命がある。ズバリ、決勝トーナメントに進出すること。それは決してノルマではないが、過去のW杯開催国がいずれもグループリーグを突破している以上、韓日両国には決勝トーナメント進出への期待がかかる。両国サッカー協会もそのために総力を結集してチーム強化に取り組んできた。そして、その歩みもまた紆余曲折の連続だった。

 98年10月からフィリップ・トルシエ監督にタクトを預けた日本。エキセントリックな指揮官はその特異な言動で常に世間を騒がせ、一時は解任の危機に立たされたこともあったが、ワールドユース準優勝、シドニー五輪ベスト8、アジアカップ優勝と着実にチームを進化させてきた。監督が持ち込んだフラットスリーという組織守備は完成の域に達し、中田英寿、小野伸二、三都主アレッサンドロなどタレントも豊富。今年3月のポーランド撃破で示された通り、4年目を迎えたトルシエ・ジャパンは世界の強豪と対等に渡り合える力を備えつつある。

 そのトルシエ・ジャパンの成長に刺激されたこともあって、A代表としては史上初の外国人監督を招いた韓国。98年W杯でオランダをベスト4に導いたフース・ヒディンク監督は、超実戦主義のもとで急ピッチに強化を進めてきた。度重なる敗北ゆえに非難の矢面に立たされた時期もあったが、コスタリカ、中国を相手にした今年4月のホーム2連戦でも1勝1分け。3月の欧州3連戦を含めると、5試合連続無失点だ。守備はかつてないほど安定し、攻守のバランスも整ってきた。ここにきてチームとしてまとまりつつあるのだ。


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決勝T進出は最大の関心事に

 それだけに期待も膨らむ一方だ。先日もある調査会社が韓日両国の成績を予想するインターネットアンケートを実施したが、実に70%以上の人々がトルシエ・ジャパンとヒディンク・コリアの決勝トーナメント進出を予想したという。今や決勝トーナメント進出は韓日両国において最大の関心事になっていると言っても過言ではないかもしれない。

 とはいえ、世界の強豪たちが一堂に集うW杯の舞台でそれをなし遂げるのは容易なことではない。日本はベルギー、ロシア、チュニジアと凌ぎを削り合わねばならないし、韓国に至ってはポーランド、アメリカ、ポルドカルと強豪揃いだ。決勝トーナメント進出のためのハードルは高いと言わざるを得ないだろう。しかし、だからと言って諦めるわけにはいかない。

 というのも近年、世界サッカー地図におけるアジアの存在感は薄れる一方なのだ。この閉塞的な状況を打開しないことには、韓国や日本はもちろん、アジアサッカーの発展もないとも言われている。それだけに韓日はアジアサッカーの存在感を世界に示さねばならない。それこそが、アジア勢として初のW杯を開催できる機会に恵まれた韓日の本当の使命なのだと私は思う。

 果して、トルシエ・ジャパンとヒディンク・コリアは5月31日から開幕するW杯でどんな活躍を見せてくれるのだろうか。世界がサッカーという熱波に包まれるのは、もう目の前だ。

(スポーツライター)

(2002.05.15 民団新聞)



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