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重国籍児童の教育に指針を




 日本の戸籍法が、父方の血統を継承する父系主義から、母方の血統をも含めた父母両系主義に改正されてから17年が経過しました。法改正の結果、正式に婚姻した韓国国籍者と日本国籍者から生まれた子どもは、韓日両方の国籍を併せ持つ重国籍者となります。いわゆるダブル≠ニいわれる人たちです。


■まず学校現場で把握が必要

 日本国籍があるために、外国人登録を行わず、日常生活においても表面上は、日本国籍のみを保持する人たちと何ら変わりありません。このような子どもたちは、韓日の国際結婚が増えるとともに着実に増加しています。

 本来この人たちは、韓国と日本の両方の文化を父母から受け継ぐことができる立場にあります。しかし、韓日双方の文化を受け継がせるべく教育している家庭は、多くはないのが現状ではないでしょうか。マイノリティとしての韓国文化を学ばせず、マジョリティとしての日本文化に重きを置く発想が蔓延しているのは、悲しい状況と言えるでしょう。

 そして何よりも、日本の学校教育の中で、これらダブルの子どもたちに対する視点が欠落していることが、大きな問題ともなっています。現在の日本の公教育における手続きでは、ダブルの存在を見分けることができません。先に大阪市内の小中学校23校を対象に行われた調査でも、ダブルの児童・生徒は全く把握されていなかった事実が指摘されています。

 過去、同胞児童に対して「日本人児童と全く同じに教育しています」と、一部の日本人教師がしてきた回答は、マイノリティへの取り組みを理解していないものだと言えるでしょう。急速に国際化する日本社会の中で、違いを認め、共に生きる社会をめざす、「多文化共生」という視点が必要とされているはずです。


■民族的ルーツ学べる場へ

 大阪を中心として、民族学級や民族クラブが設置されてきたのも、同胞児童・生徒に民族的に生きる道を保障し、豊かな民族文化を学ばせるためではないでしょうか。であるならば、民族的な生き方や文化を学びたいというダブルの児童・生徒に対する教育的な取り組みが必要とされてしかるべきではないでしょうか。

 ダブルの存在に対する教育的視点を考えようとする地域の教育委員会も出始めたと聞いています。しかし、そのような取り組みは、多くはありません。

 まずは、重国籍の子どもたちの存在に、光を当てることが必要でしょう。すなわち、個人の情報が流出しない手だてを考えた上で、公教育の中で重国籍の児童・生徒を把握できるような手続きが取られなければならないでしょう。その上で、民族的なルーツを明らかにし、双方の文化を継承する取り組みが必要とされるでしょう。

(2002.06.19 民団新聞)



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