| 同胞介護福祉士と 昼食の準備をするハルモニ |
最適ケアを模索・母国語で会話も
家庭的な居場所を提供
青丘社が毎週1回、試験的に着手
【神奈川】痴呆症や老人性うつ症の在日同胞高齢者を母国語でケアするデイホーム「虹のホーム」が、4月から川崎市南部の在日同胞集住地区、桜本で試験的にスタートした。同地区で川崎市ふれあい館(「重度館長)を運営する社会福祉法人青丘社(李仁夏理事長)による「高齢者生活支援事業」の一つ。地域で障がい者の生活支援に携わる「おおひん虹の会」と提携している。
このデイホームは週1回、少人数の同胞お年寄りに家庭的な居場所を提供するのが目的だ。このため、実施にあたっては4月から3LDKの民間アパートを借り入れた。同胞ら専門の介護福祉士が2,3人でケアにあたっている。
対象者は現在、入院中のハルモニも含め3、4人。少数に絞ったのは、日本語を忘れ、母国語でしか意思疎通の手段を持たない同胞のお年寄りがどうしたら気持ちの安定を取り戻せるのかを探る「研究プロジェクト」も兼ねているためだ。
朝9時半過ぎ、家族に付き添われたお年寄りがやってくる。開所当初、「帰る、帰る」といっていたお年寄り(83)も3カ月目に入ってやや落ち着いてきた。これは母国語で献身的なケアにあたる同胞介護福祉士の存在が大きいようだ。
ここでは本人の「自己決定」を尊重、既存の施設サービスのようにルールや時間でお年寄りを追い立てたり、縛ることはしない。昼食用の食材選びに始まり、入浴時間までその日1日をどう過ごすかはお年寄り自身が決める。
スタッフの一人、金美辰さんは、「家庭的な雰囲気を出すためになにがいいのか、いまも試行錯誤の状態が続いている」と話す。一方で、「習慣の違う人の介護のために何に気をつけなければならないのかをつきとめることは、日本社会全体の課題。この実践で得られた研究成果をまとめ、一般に広めていきたい」と意欲を燃やしている。
お年寄りの付き添いで「虹のホーム」にやってきた家族の一人は、「いい顔している」と述べるなど、普段の表情にイキイキとした変化が出てきたことを認めている。母国語でコミュニケーションがとれることが、お年寄りの情緒安定に役立っているようだ。
青丘社の高齢者支援プロジェクトは97年から始まった。現在、このデイホームのほか在日同胞高齢者交流クラブ「トラヂの会」、居宅介護支援事業所・訪問介護事業所「おおひん地区まちなかほっとライン」などに関わっている。
(2002.06.19 民団新聞)
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