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「大検」免除

文科省が検討入り表明



心待ちの民族学校生
負担軽減に期待感

 文部科学省は日本の各大学に進学する民族学校生らに義務づけている大学入学資格検定(大検)を来年度から免除する方向で検討していることがこのほど明らかとなった。実現すれば、大検受験にあたって高等学校の定時制課程や通信制課程に在学するなどしてきた民族学校生の負担は大幅に軽減されるだけに、各学校とも歓迎している。

 韓国系民族学校では大阪の白頭学院と金剛学園が学校教育法の「第1条校」としての認定を受けており、生徒は日本の国公立を含むすべての大学を自由に受験できる。

 これに対して、東京韓国学校と京都韓国学園、および朝鮮学校は法律上「各種学校」の扱い。これら生徒は、高等学校卒業者と同等以上の学力があることを認定してもらうためにはいまのところ「大検」に合格するか、定時制高校や通信制の学校に通うしか方法がない。その「大検」ですら、民族学校生が無条件に受けられるようになったのは一昨年からだった。

 京都韓国学園から生徒が「大検」を受けるようになったのは4年前から。同学園では進学希望者の便宜を図るため、全員に通信教育を受けさせた。李虎雄校長は当時を振り返りながら「日本の高等学校と同等の教育をしていながら認められず、あえて通信教育まで受けさせなければなかった屈辱。お金もさることながら、意識面であえて寝ている子を起こしてしまったのではと思うと苦々しいものがあり、いまさら思い出したくもない」と顔をしかめた。

 一方、東京韓国学校では、かねてから「大検」に関係なく在日同胞の受験が可能な公立と私立の大学が全国に少なくとも80校以上を数えるという。このなかには早稲田や慶応などの著名大学も多い。それでも「大検」が免除になれば「センター試験一本に集中できる。外国語の選択科目に『韓国語』が入ったのも有利な材料」と歓迎している。

 文部科学省では03年度からの導入に向け、今月下旬に開かれる大学審議会に諮問する方針。


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「実態追認」の声も 資格認定は大学の判断

 文科省が「大検」免除を正式に決めても、受け入れは各大学の個別の判断になる。これまでにも大学によっては民族学校生の受験を認めてきただけに、一部には「実態の追認にすぎない」(徐龍達桃山学院大学教授)と指摘する声も。ただし、「大検」を受けるため定時制高校に通わざるをえず、通信制教育を受けてきた生徒には確かに「一歩前進」といえるだろう。

 残された課題は、独自の資格審査をする大学がどれだけ出てくるのかという点。これについて大阪市立大学教授の朴一さんは「民族的偏見で民族学校出身者を受け入れない大学があるとすれば、そんな大学はいずれ淘汰されていくでしょう。国立大学にしても、いずれ独立行政法人になっていくというのが時代の流れ。基本的には受け入れる方向にいくでしょう」と楽観視している。

 一方、桃山学院大学の徐教授は、これまでの市民運動の経験からも「各大学に公開質問状を送るなど、門戸を広げる働きかけも必要なのでは」と話している。


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大学入学資格検定

 大学入学資格を持たない者に対し、高等学校の卒業生と同等以上の学力があるか否かを認定するための国の検定。基本的に中学校を卒業していれば受験できる。ただし、民族学校は一部を除いて各種学校扱いのため、その在籍生徒は高等学校の定時制課程、ないしは通信制の課程に在学していなければ受験資格を与えられなかった。00年からはこの規制もなくなり、民族学校生も無条件に受験できるようになった。

 ただし、9〜10科目に合格することが条件。

(2002.07.17 民団新聞)



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