民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
難関突破を未来の糧に

熱い気持ちトランペットに込め



尹千浩さん
在日で初めてAYOの一員に選抜

 毎年アジア各国から選ばれた、若き才能ある音楽家たちで結成されるアジアユースオーケストラ(AYO)のメンバーに、初めて在日韓国人の尹千浩さん(20)が選抜された。現在、愛知県立芸術大学でトランペットを専攻。香港でのリハーサル・キャンプ後、アジア12都市でのツアー公演に向け期待は一杯だ。

 今年13年目を迎えるAYOは、米国人の芸術監督のリチャード・パンチャス氏と音楽監督の故ユーディ・メニューイン氏によって89年、香港で設立された。毎年、韓国、中国、日本などのアジア12カ国で行われるオーディションには、15から25歳までの2000人を超す若者が応募。メンバーは厳しい書類審査と実技審査によって決定される。

 これまで他のオーディションやコンクールに参加した実績はない。緊張の中、今年3月に実施された実技審査では、規定の曲と現場で楽譜を渡され読解力と演奏力を試されるオーケストラ・スタディーに加え、ほかの曲を聴きたいという審査員の要望に応えた。今年の合格者は104人。今回、アジア全体でのトランペット応募者97人中、定員5人の中に選ばれた。「自信は全くなかったけれど、できるだけのことはやった」と語る。

◇  ◆  ◇

 音楽好きの両親の影響を受け、幼いころからクラシックは好きだった。中学校の時に入部した吹奏楽部で初めてトランペットに出会った。トランペットの魅力は、シンプルな楽器だが、金属的な音から温かい木のような音色も出せる幅の広さと語る。

 クラシックのなかでも米国の作曲家、バーンスタインやコープランドの作品は相当聞き込んだ。中学3年の時、音楽の道を志すが、両親はこの時点で反対した。理由は、音楽家として成功することは生やさしい道ではなく、安定した企業に就職して生活してほしいと思っていたからだ。

 好きなトランペットを続けたい。改めて自分の意志を両親に告白。両親は本人の意思の固さを知ることになる。高校から本格的に練習するために個人レッスンを受けながら、日に6時間の練習をこなした。「毎日コツコツやることに意味がある。僕も毎日、努力はしました」

 AYOの存在を知ったのは高校生になってから。いつか受けてみたいと思っていた。

◇  ◆  ◇

 クラシックが好きだという。「同じ曲でもオーケストラによって音の違う面白さがあり、一つひとつの楽器が各役割を持って音楽を奏でるところが魅力」。13日から3週間、全メンバーが揃う香港でのリハーサル・キャンプに入った。AYOは毎年、オーディションによってメンバーが変わる。それだけにその年の出会いは貴重なものとなるのだろう。大学卒業後は、広い世界を見たいと留学を視野に入れている。

 「音楽や仲間、見たもの聞いたものを吸収して自分の糧にしたい。絶対、自分の財産になると確信している」

 いろいろな奏者がいる。テクニックもあり楽器を器用に演奏する人もいる。不器用でも気持ちだけは熱いプレーヤーになりたいと目を輝かす。

 キャンプ終了後の来月3日から日本(6都市7公演)、台湾、北京、上海などの12都市でツアー公演が行われる。初の檜舞台で熱きプレーヤーの姿を見られるのも間近だ。

(2002.07.31 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ