民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
次期臨時国会で成立を

永住外国人の地方参政権獲得運動



地方参政権を求め
都心をデモ行進する
在日同胞ら4000人
(01年6月5日)

意見書1503自治体で決議
差別のない共生社会の実現を目指して

排他的な帰属意識
国際化時代に逆行

生活者住民の立場から
地方自治に貢献したい

 日本の与党3党は7月29日の党首会談席上、永住外国人の地方選挙権法案について「次期臨時国会で審議を促進する」ことで合意しました。法案が国会に提出されてから間もなく4年。残念ながら今国会では審議すらされませんでした。この機会にあらためて私たちの求める地方参政権法案について考えてみたいと思います。


■なぜ必要か

 私たちが地方参政権保障を自らの権益擁護運動の総括的課題として位置づけたのは、地方参政権を行使することが住民としての立場から地域で国籍の相違を超えて相互に等しく、平等な立場で共生しうる前提と考えたからです。

 いまや世界的に見れば国家連合、二重国籍の容認などが進みつつあり、国民主権という観念的な枠組みはそれ自体が相対化されつつあります。

 永住外国人に地方参政権を保障することこそ住民自治の具体化に求められるべきものであり、このことは日本における民主主義の成熟と開かれた国際社会の実現にもつながるものです。

 21世紀の日本にあっては、少なくとも納税の義務を果たし、生活者住民として地域生活共同体と密接な関係を形成している永住外国人に対して普通地方公共団体の参政権を認めるべきなのです。


■世論も後押し

 民団が地方参政権を要求する活動に取り組み始めたのは87年からです。しかし、本人の意思によらず一方的に日本国籍をはく奪された歴史的経過からすれば、地方参政権獲得運動は必然ともいうべきものでした。

 幸いにも「与えても憲法違反ではない(憲法許容)」という95年の最高裁判決が追い風となり、私たちの運動は加速化しました。民団の地方議会への積極的な働きかけが実り、今年8月5日時点で36都道府県、1467市区町村と合計1503自治体(採択率45・51%)が定住外国人市民の参政権付与を求める決議をあげています。

 国会においては新党平和(公明)と民主党が98年10月の第143国会衆院に法案を共同提出、99年の第145通常国会から審議されるようになりました。なお、98年12月に共産党が被選挙権を含む法案を、00年1月にも与党2党(公明・自由)、同じく7月に与党2党(公明・保守)、野党(民主)も各々法案を提出しました。なお、共産党は同年10月、参院に法案を提出しています。


■感情的な反論

 法案は00年11月の第150臨時国会で参考人聴取を行い、採決段階にまで至りながら延期に。翌01年の151通常国会では自民党が反対、与党間の調整が難航し、結局は審議に入ることができないまま継続審議となりました。

 反対派は、当初「韓国も外国人に地方参政権を認めていない」という相互主義からの反対でした。

 ところが、韓国国内でも定住外国人の参政権を認めるとの方針が発表されるや一転、「地方であっても国家の一部分であり、国家の根幹に関わること」と、司法判断で許容すると認めているのにも関わらず「憲法違反」だと主張しました。

 なかには「帰化すべきだ」「日本国籍を拒否する人たちになぜ選挙権を与えるのか」「日本の将来と心中しない者に参政権を与えるべきでない」と感情的とも思える本音も見られました。さらには参政権法案の流れをなにがなんでも断ち切ろうとばかり、国籍取得緩和法案まで登場しました。

私たちは、そのような動きに危惧を覚えます。これは日本の国際化にも逆行します。


与党に法案の成立を働きかける
民団中央本部代表。自民党本部で
山崎拓幹事長と(02年1月8日)。

■違いを認めて

 本来、参政権問題とは与えるとか否かという法制定の問題ではないはずです。これは日本に住む外国人市民と日本人市民の共生のためのシステムづくりであり、日本社会の国籍による外国人差別をなくす試金石ともいうべきものです。共生の実現は「平等社会をつくること」であり、「違いを認めあう」ということです。決して国籍の均一化、同化と日本国籍を求めるものではありません。

 私たち民団は地方参政権の早期実現に向けてこれからも運動を継続していくものです。


■□
運動の理念

 (1)日本の地域社会で在日韓国人が「住民」として差別なく堂々と生きていける権利の獲得

 (2)民族や国籍の相違を乗り越え人権を尊重する「共生社会」の実現

 (3)日本における民主主義の成熟と開かれた国際社会の実現

 (4)アジアの平和と人権確立への寄与


■□
運動の意義

(1)「住民権運動」―永住外国人住民の人権運動

○住民としての歴史的根拠と最高裁判決による法的根拠

○生活者として「住民」認知と市民的権利の保障

(2)戦後処理運動の一環

(3)日本社会の真の国際化運動


■□
法案の国会提出状況

98年10月 民主党と新党平和(公明)が共同提出

98年12月 共産党が被選挙権を含む法案を提出

00年1月 与党2党(公明・自由)が法案提出

00年7月 与党2党(公明・保守)と野党(民主)が各々法案提出

00年10月 共産党、参議院に法案提出


■□
国会での審議の状況

第145回通常国会(99.8.11―12)

第147回通常国会(00.5.23)

第150回臨時国会(00.11.15―29)

参考人聴取

第151回通常国会(01.6.29閉会)継続審議

第154回通常国会(02.1.21―7.31)

審議再開されず

(※ただし、与党3党党首会談で「次期臨時国会で審議を再開する」ことで合意)


公明党本部で神崎武法代表らと
(02年1月7日)

■□
これまでの経過 87年〜02年7月

87年   在日韓国人の権益に関する全国統一要望展開(第6次)―日本の地方自治体選挙への参加を要求する活動開始

88年3月 本団第38回定期中央委員会―日本の地方自治体参政権を獲得していくことを決議

91年1月 在日韓国人3世以降の法的地位及び処遇などを取り決めるいわゆる「91年問題」の韓日覚書合意―特別永住許可、指紋廃止のほか「地方自治体選挙権について大韓民国政府より要望表明」

92年3月 本団第42回定期中央委員会―生活権拡充運動の最大目標として地方参政権運動を打ち出す

93年9月 大阪府岸和田市議会が日本全国自治体のなかで初めて定住外国人への地方参政権付与を日本政府に求める意見書採択

94年1月 定住外国人の政党入党認知(さきがけ島根)

94年4月 本団第44回定期中央委員会―地方参政権獲得運動を権益擁護活動の総括として推進/地方議会での意見書採択要望活動を本格的に展開していくことを決定/民団の名称・綱領・規約から「居留」削除―定住宣言

94年10月 福井地方裁判所判決(選挙人名簿不登録の違憲確認)―「選挙権保障は日本国民に限定されているが、市町村次元の定住外国人の選挙権は憲法の許容範囲内にある」と明示

95年2月 日本最高裁判所判決で定住外国人への地方選挙権付与は違憲ではないとする憲法判断を明示

95年3月 本団第46回定期中央委員会―地方参政権獲得運動に全力投球確認

98年10月 地方選挙権法案、初めて国会に提出(民主・公明)

98年10月 金大統領訪日、韓日首脳会談/日本国会演説で「21世紀の新たな日・韓パートナーシップ共同宣言」

99年9月 法案、初めて国会で審議―歴史的意義

99年10月 与党3党、付与で合意

00年5月 金大統領・森首相首脳会談―地方選挙権、年内(20世紀中)付与要請

00年11月 日本国会、民団前団長から参考人聴取

01年6月 「永住外国人に地方参政権を!6・5全国決起大会」、国会請願・街頭示威活動(全国4000人)

01年6月 地方選挙権法案 継続審議(第151回通常国会)、中央団長が抗議談話文発表

01年10月 金大統領・小泉首相 首脳会談

01年5月 与党、国籍取得緩和法案の今期国会提出「見送り」表明

02年2月 草川昭三公明副代表、参院本会議での代表質問で首相の決断を求める

02年6月 ソウルで全国拡大幹部会議、政府及び各政党に陳情

02年7月 金大統領・小泉首相首脳会談―日本側の積極的な対応要請

02年7月 与党3党党首会談、永住外国人の地方選挙権法案について「次期臨時国会で審議を促進する」と合意する

02年7月 第154回通常国会(会期02年1月21日〜7月31日)でも継続審議

(2002.08.15 民団新聞)



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