民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
先進自治体の首長に聞く


対談 森貞述・崔東佑



森市長

全国初の常設型、投票権と請求権も認めた高浜市

審議会などの門戸開く
永住外国人の参加促進

対談
森貞述(愛知県高浜市長)

崔東佑(民団愛知県本部団長)

 崔 高浜市は介護サービス事業の基盤が整備され、福祉先進自治体として全国的に注目されている。今回の住民投票条例は全国初の常設型で、永住外国人の投票資格と請求資格を認めるもの。この全面改正案を全会一致で可決した市の英断を高く評価したい。

 森 複雑、多岐にわたる地方自治の問題の中で、これからは政策立案の中で住民の皆さんとの乖離を避け、協働で物事をつくりあげていく時代だ。住民が市政に意思を表明する機会を設けなくてはならない。

 昨年1月に地域に住む在日韓国人の方から手紙が届いた。「地域の住民として生活し、義務も果たしているのに市政に参画ができない」というもので、大きな課題だと受けとめた。

 崔 米原町のケースが前例になったようだが、その間のいきさつを聞かせてほしい。

 森 昨年6月に村西町長らが来庁され、「常設型の住民投票条例をつくりたい」と相談があった。結果的に12月議会では米原町の常設型は否決されたが、市町村合併問題に限る住民投票条例が可決され、永住外国人も対象に含むという英断をされた。

 崔 他の自治体からの反響の多さの受けとめ方は。

 森 マスコミを通じて住民投票の問題が俎上に上った。多くの自治体関係者、議会関係者から情報提供も含め問い合わせがあった。行政視察に訪れた自治体もある。市の方向付けをする時には、住民の意思表示が大切であることを改めて痛感した。地方分権時代に自治体が自分たちの裁量で意思表明や行動ができるという一つのきっかけをつくった。

 崔 国際化の時代になり、住民投票の問題は永住外国人の基本的人権の問題として他の自治体も取り上げていくと思う。

 森 市政全般に関わる問題については、議会も市長も市民もいつでも発議ができる。常に門戸は開かれているのが常設型だ。永住外国人には投票権だけではなく、請求権も認める。

崔団長

 崔 せっかくいい条例をつくっても永住外国人が投票に行かなかったら絵に描いたもちになる。民団としても住民投票のもつ意義を同胞に訴えていくが、市としても広報を通じ住民への啓発に努めていただきたい。

 森 広報紙を通じて周知徹底を図りたい。投票資格者名簿はプライバシー保護と本人の意思確認のため申請主義をとっているので、日本人の場合、申請する際の生年月日は元号が基本だが、外国人の場合は西暦使用も可能だし、名簿への日本名使用も本人の希望次第だ。3カ月ごとに年4回投票資格者名簿の登録を行っていく。まちづくり課に本人に直接お越しいただき、申請をしてもらえば済む。18歳以上の永住外国人は現在、268人だ。

 崔 在日韓国人は日本人と同様に納税などの義務を果たしている。私たちは住民として地域社会づくりに責任をもち、地域に貢献したい。永住外国人の地方参政権獲得をめざしたい。

 森 お互いがお互いの立場を認め合うことがスタートラインだ。それに基づいていろんなことができるのではないか。条例制定をきっかけに、門戸を開き、審議会、協議会などへの住民の公募のワクを広げていく。永住外国人が参加しやすいようにハードルを低くする。

 互いに血がかよった交流を続けていれば共生ができる。地方参政権は、あくまでも国政レベルの問題であるが、この住民投票条例が一つのきっかけとなり、議論が活発化すれば、将来につながるのではないか。

(2002.08.15 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ