民団新聞 MINDAN
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先進自治体の首長に聞く

対談 村西俊雄・安相鳳



村西町長

全国初、永住外国人の住民投票を認めた米原市

地方参政権付与は当然
国会でも真剣な議論を

対談
村西俊雄(滋賀県米原町長)
安相鳳(民団滋賀県本部団長)

 安 去る3月31日の投票日に向けて、民団では有資格者7世帯の同胞に投票を呼びかけ、当日は私も見守ったが、投票することでその地域の住民としての自覚や地域へ貢献しようという積極性が芽生えると実感した。

 村西 ある在日韓国人女性は「今までは選挙があっても私たちには関係ないと思ってきたし、周囲の日本人と距離感があったが、たった1回の投票で自分自身が周囲の人と明るく接することができるようになった」と語っていた。

 安 在日同胞が堂々と意見が言えるというのが大事だ。このたびの住民投票は特定の議題についての単発のものだが、永住外国人が日常的に地方自治に参画する道は?

 村西 たった1回だけの投票では意味がない。米原町の人権擁護審議会では、21世紀の人権問題の中に在日問題などを広くとらえる必要に鑑み、当該者への諮問を行ってきた。今後も審議会などに積極的に参加してもらうようにこちらから働きかける必要がある。

 安 永住外国人を住民として認知したきっかけは、県職員時代に真剣に取り組んだ公務員の国籍条項撤廃問題だと聞いている。国籍よりも有能な人材確保に力点を置いたものだが、その施策の積み重ねを土台に、町長に就任してからは住民投票を実現させた。

 村西 世界が非常にグローバル化してきて、どの地域にも外国人が住んでいるのが当たり前という時代感覚からすると、地方自治体はあらゆる人々と差別のない町づくりをしていかなくてはいけない。

 今後の日本が活力ある社会になっていくためには、外国人と一緒に地域社会をつくっていく考えがないと将来がないし、発展がない。

 安 その一方で依然として「国籍の壁」がある。民団の地方参政権運動についても、反対派は帰化を持ち出す。外国籍住民と共生、共存する意味をどう考えているのか。

安団長

 村西 外国籍のままお互いが認め合う社会がグローバル化時代だ。日本人もたくさん外国に住んでいるが、外国にいる日本人からかかってきた激励の電話では「外国人と結婚し、こちらで永住する覚悟だが、日本人としての誇りや国籍を失いたくない。市政にも参画したい」と言っていた。自分の国と住んでいる国での思いを大事にするというのは当たり前だ。

 安 在日同胞は日本人同様に義務を果たし、地域に貢献している。国籍を大事にしながら、地方参政権を行使したい。町長の基本的な考えは?

 村西 昨年12月、常設型の住民投票条例は否決されたが、その時点でも外国人の投票資格は入れていた。外国人の人権を重視した住民投票を認めないということは、恥ずかしいという意見が議会でも出された。外国人も地方自治法10条に明記されている住民として町づくりに参加してもらう。地方選挙権問題は最高裁で合憲とされた。もっと国会で真剣に議論してもらい、当然付与すべきだと思う。

 安 「米原発全国行き」の条例化によって、他の自治体でも外国人の住民投票が潮流のようになっていくことを大いに期待したい。それによって参政権獲得の外堀が埋められていくだろう。

 村西 英国の雑誌『エコノミスト』が「日本の病とは何か」という特集の中で「元気な地方もある」として、市町村レベルではただ一つ米原が外国人住民投票を認可した事実を紹介した。住民投票は自由に決められるわけだから、外国人問題を抜きには語れなくなるはずだ。

 それが地方参政権につながっていくのではないか。

(2002.08.15 民団新聞)



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