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10年の消滅時効・判断

総連の北送責任に踏み込まず



元在日同胞の損害賠償請求棄却
東京地裁

 金日成総合大学で勉強できるなどという朝鮮総連の言葉を信じて1961年に北韓に帰国したが、実際は学校に通うこともできないまま工員として労働を強制されたのは朝鮮総連の責任であると損害賠償を提起した金幸一さん(60、ソウル在住)の裁判で、東京地裁527号法廷(三輪和夫裁判長)は8月30日、時効を理由に金さんの訴えを棄却した。

 判決は、原告がすべての損害を認識でき、かつ代理人を通じて日本の裁判所に裁判を提起できるようになったのは、遅くとも1966年であり、すでに10年の消滅時効が経過していると判断、金さんの訴えを退けた。

 原告側はこの間、金さんが日本に渡航することが可能になり、そして弁護士を通じて朝鮮総連を訴えることができると知った2000年10月14日を起算日とすべきと主張してきた。

 しかし裁判所は、日本に渡航しなくても、訴訟の代理人を立てて裁判を提起することは可能であるとした。

 帰国事業で朝鮮総連が推進主体として果たした役割について明らかにするという裁判の核心に触れないまま、時効を理由に訴えを棄却された形だ。金さんは控訴を表明している。

 原告代理人の藤森克美弁護士は「代理人を選任して訴訟を起こせたと言うが、パスポートも持たない一庶民が、日本の代理人(弁護士)を探せるだろうか。日本に住んでいる日本人でも難しいのに。庶民感覚で考えれば、どれほど困難なことかわかるはず」と判決を批判した。

 金さんは、「教育も医療も無料の地上の楽園」という帰国事業の甘言が流布される中で、北韓で大学進学を保障するという総連の言葉を信じて61年6月に帰国した。

 しかし、現実は極寒の町で機械工場の工員として使役された。金さんは厳しい管理下に置かれ、密告におびえる生活から脱出しようと62年11月、38度線を突破して韓国に脱出した。

(2002.09.11 民団新聞)



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