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在日へのメッセージ

氷室興一(日本テレビ中国総局)



日朝会談特番のウラで

 小泉訪朝が決まった瞬間から報道局内は当日に向けた準備で大騒ぎに。社会部は拉致家族の日程を他社に先駆けて押さえる役目。政治部は首相同行機に少しでも多く記者を乗せようと政府と交渉し、外報部は北京や露ウラジオストクなど別ルートから平壌入りを果たすよう特派員の尻を叩いた。

 また、番組班は専門家との出演交渉だ。拉致家族には高齢の方が多く体調等への配慮が必要な反面、他社に抜け駆けされることも避けなくてはならず、担当者は苦労していた。スタジオ出演を依頼したい専門家だが、「第一級」は数が限られていて各社取り合いになる。評論内容が、例えば「訪問成功!」とか「失敗」とか偏り過ぎても宜しくないので、「硬」「軟」合わせ複数取り揃えようとすると、そのスケジュール調整は三次関数を解くよりも難しくなる。

 もっと厄介なのは政治家だ。反小泉的な意図を持っている人ほど「11人が全員戻って来ないと訪朝は失敗」などとハードルを上げて来る。コメントも素直に受け止められない。

 平壌に入る記者は会談終了直後から「内容は?」、「その評価は?」などと東京のスタジオから問い掛けられる。事前取材や日頃の研鑚が問われるわけだが、何か発言するには相当な勇気が求められる。ベテラン記者でも胃薬を欠かせない。

 金正日総書記は常に人を驚かす演出を仕掛ける。(突発事象は事前準備をいとも簡単に吹き飛ばす)それに惑わされず冷静な報道が出来たか?今回の「騒ぎ」を一番冷静に見つめているであろう在日の皆さんの評価をうかがいたい。

(2002.09.18 民団新聞)



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