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最高裁判断「年内にも」

鄭香均さんの都庁国籍任用差別訴訟



弁護団が期待

高裁「違憲」判決から間もなく5年
国民主権論どう解釈

 在日韓国人2世の保健婦、鄭香均さんの管理職試験受験を認めなかった東京都を「違憲」とした東京高裁判決から間もなく5年。弁護団はこれに対する最高裁の判断が、早ければ年内にも示されるのではと期待している。どのような判決になるかは予断を許さないが、判決いかんによっては定住外国人の公務就任権運動の今後に大きな影響を及ぼしそうだ。

 東京高裁は97年11月、都が鄭さんの管理職試験受験の機会を奪ったことを「外国籍の職員の課長級の管理職への道を閉ざすもので、憲法第22条第1項(職業選択の自由)、第14条第1項(平等原則の保証)に反する」との逆転判決を下した。これに対して都は早速上告、審理は最高裁第3小法廷で続いている。

 原審で違憲とされ、その状態が5年近く続くのは極めて異例とされる。このため、最高裁第3小法廷の判断が示されるのも「早晩遠くない時期」と見られている。

 最高裁でも論点のひとつになると見られているのは、外国人による地方公務員の管理職昇任が国民主権に反するのかどうかという点。

 東京都は「公務員の就任は参政権。参政権は外国人に及ばない」と一貫して主張してきた。これに対して東京地裁、東京高裁とも憲法解釈から外国人の公務就任権について問い直している。

 東京地裁は判決で、「当然の法理」とのからみから、間接的な統治作用に関わる公務就任権は「憲法上(外国人には)保証されていない」として鄭さんの訴えを棄却。ただし、「法律で明示的に禁止されているわけではない。立法がなされれば可能」と含みを持たせた。

 東京高裁判決でも「国民主権の原理に反しない限度においてわが国に在住する外国人が公務員に就任することは、憲法上禁止されていない」としており、基本的な構図として大きな違いはなかった。ただし、「国民主権の原理に照らして(外国人の)就任が認められるものと、そうでないものがある」と踏み込んだ点は地裁判決と決定的に異なっていた。

 これは外国人を一律、形式的に排除することは憲法違反になるとの判断を示したもの。鄭さんの訴訟代理人、新美隆弁護士は「憲法の人権条項を適用したのは画期的」と評価している。

 近づく最高裁判決の行方について、新美弁護士は「東京高裁の結論が維持される可能性が高い。高裁の判断を逆転させることは逆に大きな混乱を招き、リスクが大きすぎるのでは」と予想している。一方で「国民主権論については、あいまいな議論が続いている。外国人の公務就任権の限界を考えようという動きもあり、マイナスに転化される危険性もはらんでいる」と、一抹の不安ものぞかせている。


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鄭香均訴訟とは

 東京都の外国人保健婦として88年に採用された鄭さんは94年3月、上司の薦めで管理職試験受験を申請した。これに対して都は「当然の法理」を盾に「外国籍の人は管理職試験を受けられない」と拒否。鄭さんは東京地裁に提訴した。一審判決は敗訴したが、東京高裁での控訴審で逆転勝訴した。


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高裁判決維持を期待 支援団体

 最高裁判決で高裁判決がそのまま維持されたとすれば、判決はただちに行政庁を拘束する。判決の成果を「在日」の人種保障にどうつなげていくのかについて鄭さんの訴訟を支援してきた市民団体「都庁国籍任用差別を許さない会」の水野精之さんは、「全国の自治体に判決文を郵送し、国籍要件撤廃に拍車をかけていきたい」と意気込んでいる。

(2002.10.16 民団新聞)



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