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社説
本国要路訪問を大きな契機に


 「私は民団を政府の重要な機関の一つであると見ている。私や与党を支持しなくても構わないが、民団は今後も在日同胞のために努力しながら、大韓民国とわが国民を愛してほしい」。

 この言葉は四月二十九日、本国の各省庁などに在日同胞の要望を伝える過程で、青瓦台(大統領府)を訪れた民団幹部二十三人を前に、金大中大統領が述べたものだ。

 IMF寒波の中で出帆した金大中政権は、「国民の政府」を標榜している。「人民の、人民による、人民のための政治」という有名なリンカーンの演説を連想させるが、これは特権層を排して国民が主人公であるとの民主化宣言に他ならない。


本国との一体感で危機克服を

 在日韓国人も在外国民である限り、当然「国民の政府」が行う施策の対象であり、その政府を支える立場にある。団員五十万人を擁する民団は、これまでも本国の国難や国事に対しては、一体感と共同歩調で対応してきたが、世代が移り変わってもこの基本方針が揺らぐことはない。

 同様に、民団に対する本国の支援も基本的には変わらないことをこの度の訪問で改めて確認することができた。

 民団は外貨支援の継続も含め、危機克服に尽力していくことを再三強調してきたが、大統領をはじめ、本国の各界が民団を中心にした在日同胞の支援を高く評価するとともに、今後の役割について大きな期待を寄せていることもわかった。本国投資がそれである。


海外同胞の力を活用するために

 金大中大統領は民主主義の確立と市場経済の導入を基本政策の柱に掲げ、それが韓国の生きる道であると力説している。すでに英首相からは韓国への投資を決める声明も引き出した。

 民主主義については、死線を何度も乗り越えながらも民主化を訴えてきた金大統領自らが韓国の舵取りをしていくことで、不安要素はないと見ていいだろう。

 しかし、市場経済についてはどうだろうか。外国からの投資拡大の側面から在日同胞企業家、とりわけ国内に長期滞在している在日同胞の力を最大限に活用していくのであれば、現行の住民登録制度は非居住者とはいえ、在日同胞には支障が多すぎると言わざるをえない。

 事業を展開するのに不動産購入はおろか電話加入一つ自分の名前で登録できないという話は、外国人よりも不便を強いるものである。医療保険すら受けられないという事実は、人権に抵触しないだろうか。

 金大中大統領は民団に所属している在日同胞が韓国籍を維持しながら生きている事実に謝意を表す一方、韓国籍でない海外同胞についても自身のプリ(根)に対して自尊心を持って生き、出自が違うという特殊な事情によって他国で差別されることがあってはならないと強調。在日同胞を含む海外同胞五百五十万人の力を積極的に活用していくことを明らかにした。

 民団は在日同胞の求心体として、常に同胞の生活実態に根ざした活動を展開していく。在日同胞の願いを包み込む「国民の政府」に期待は大きい。(98.5.15)



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