民団新聞 MINDAN
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オリニの未来見つめて<1>

各地の保護者会・オリニ会の動き

兵庫県在日外国人保護者の会(5/20)


3カ国語を使って行われる「鳴き声クイズ」

 新年度が始まってはや一カ月が過ぎた。全国の各学校では、在日同胞のオリニたちがそろそろ新しい環境に慣れ始めたことだろう。オリニたちが本名を名のり、多文化共生教育の中で健やかに成長することを願い、各地で同胞の保護者会が結成されている。今回から連載で親たちの思いにスポットを当てる。


……………………………  兵庫県在日外国人保護者の会(以下、保護者の会)は、91年5月19日に誕生した。「カッチ ハジャ 共に生きよう」との思いで、多くの在日同胞の親や日本人教師との出会いを重ね、活動を続けてきた。

 会の代表は金慶子さん(48)。3人の子どものオモニだ。結成前年の90年に娘の恩師との出会いがきっかけで、各地の学校で講演活動を始めるようになった。

 対象は保育園児から大学生までと幅広く、日本のお母さんたちを対象に韓国料理や民族衣装の試着を通じて異文化に触れさせる試みも好評だ。韓、日、英の3カ国語を使う鳴き声クイズには、保育園児も喜ぶ。中学校の全校生徒を対象にした講演では、古代から2000年までの年表を使って韓日の歴史を話す。豊臣秀吉の朝鮮出兵と植民地時代だけを赤く塗っているのは、それ以外の友好の時代が長いことを視覚に訴えるためだ。

 これまで年間30回から50回のペースで、「在日」の思いを語ったり、ハングルを教えてきた金さんだが、もともとエネルギー全開だったわけではない。

 初めての子どもを小学校に入れた時は、1,300人のマンモス校の中でわが子だけが本名だった。かつて通名でびくびくしていた金さん自身の反省から、子どもには本名で堂々としてほしいと思って送り出したのに、いじめにあうことになる。

 本名使用自体が迷惑だ、と思い悩んだ金さんは一度も先生に掛け合わず、次第に孤立していった。「親の方が肩に力が入っていた。周囲に心を開いていなかった」。

 その頃、「在日」を考えるセミナーに出かけ、全朝教の先生や生き生きしているオモニたちに出会った。一緒の悩みを抱えていたオモニたちを知り、「肩の力が抜けた」。それからは足しげく会合に通った。

 地元の伊丹市で開かれる各種の「在日」講座を土台に、八八年には「サラムの会」を自主的に発足させ、阪神大震災の年まで約80回にわたって毎月講師を呼んだ。

 「何も知らなかった日本人が変わった。この会がいろんな取り組みの原点になった」。

 保護者の会は今、県下の各地域で教育方針の策定を実現させようと全力投球している。在日外国人の子どもと日本人の子どもが、共に生きる多文化共生教育の実現だ。

 「一人の教師の努力に負わせるのではなく、全体の取り組みに広げるために教育方針がぜひ必要」と強調する金さんだ。

 保護者の会は国籍を問わない。誰でも入会できる。趣旨に賛同される方は、郵便振替口座「01180-5-64464」の兵庫県在日外国人保護者の会へ年会費1,000円を送金すればいい。問い合わせは金代表へ。電話は0727(79)4996。

(1998.5.20 民団新聞)



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