民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
山梨の貴金属加工・韓国人技術者
民団と協力し協会発足

互助の精神で結束


貴金属加工を営む
山梨の韓国人技術者

 【山梨】貴金属加工の盛んな山梨県に多住し、地場産業の下支え役となっている韓国人技術者らが6月7日、「山梨民団韓人貴金属協会」を正式発足する。発足後は民団山梨県本部とも緊密に連携をとりながら、同本部の活性化にも一役買うことになっている。民団組織と滞日韓国人の自助グループが協力しあう全国的にも珍しいケースとなりそうだ。

 山梨県に貴金属加工技術を持つ韓国人が移り住むようになったのは、「出入国管理令」が「出入国管理および難民認定法」に改正された1982年以降のこと。

 日本経済が急成長を続けるなか、中小企業は慢性的な人出不足に陥り、雇用主は専門の宝石工芸技術者を韓国国内に求めるようになった。

 特にバブル景気で労働力のひっ迫した89年から91年にかけては需要も急増した。

 現在までに法的な滞在資格を持って山梨県に滞日する韓国人就労者は家族も含め少なくとも500人。就労資格なしに、あるいはオーバーステイして働いている人たちを含めると1000人を超すといわれている。

 これら韓国人就労者のほとんどが、日本人の雇用主がビザの保証人になるために社会的に非常に弱い立場にある。専門的、技術的分野の就労者として比較的高い工賃を保証されている代わりに、労働法の適用を除外されている。

 アパートを借りるにも日本人の保証人が必要。ビザは1年更新で、貴金属加工以外の仕事には就けない。

 クリスマスプレゼント用や年末ボーナスを当て込んで需要が高まる9月から3月までは特に多忙を極め、土日を返上して深夜まで作業が続く。このため過労死した人もいるという。

 バブル景気が崩壊してからは、かつてのような忙しさはなくなったものの、逆に仕事量が減った分、同じ韓国人同士で受注を競うことになり、ダンピング合戦も珍しくなくなっている。これも個々バラバラで横の連絡がないためといえる。

 「自分たちの会を作らなければ…」―。こうした声は1年ほど前にも在日生活が長い50歳代を中心に出されたが、実を結ばなかった経緯がある。その後、30歳代の若手が発起人となった結果、ようやく今年4月19日に40人ほで「山梨民団韓人貴金属協会」創立準備会を発足させた。

 7日の正式発足を前に、民団山梨県本部(朴善国団長)では「可能な限りサポートしていきたい」考えだ。これは会の名称として民団の2文字を使うことを了解したことに象徴されている。

 朴団長は「民団員としては国民登録できることが条件だが、子どもはいずれ山梨に定住するかも知れない。準団員として相互に良い意味で協力しあえる関係をつくっていけるのでは」という。

李孝洙さん(山梨民団貴金属加工協会総務)の話
 仲間が亡くなったり、困ったことがあってもお互いの連絡が取れないのはさみしい。お互いに助け合うのが協会の趣旨だ。対外的には民団の後ろ盾がないと何もできないので、民団に助けてもらう代わりに私たちも民団に団費を払う。将来、会員が増え、協会が軌道に乗れば、韓国からの部品や材料の仕入れも民団を通すことで手数料を還元することを考えている。在日韓国人で加工の技術を習得したいという希望者がいればバックアップもしたい。

(1998.6.3 民団新聞)



この号のインデックスページへBackNumberインデックスページへ


民団に対するお問い合わせはこちらへ