民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
オリニの未来見つめて<3>
各地の保護者会・オリニ会の動き

広島在日コリアン保護者会


広島在日コリアン保護者会では
本名使用問題を取り上げたシンポジウムも開催した

 「本来名前は一つしかないはず。その名前をなぜ二つも子どもにつけて混乱させるのか」。

 親自身が植民地時代の通名を引きずり、在日同胞であることを隠す現実が、また新たに哀しい「在日」を再生産している。解放後五十年以上も過ぎた在日同胞の一つの現実だ。

 広島在日コリアン保護者会の黄菊枝代表(48)には、今でも忘れられない苦い思い出がある。それは長女が生まれた23年前の出来事だ。本名で出生届を提出したところ、役所はそれを受け付けなかった。1970年代は在日同胞にとって本当の名前すら否定される時代だった。

 時は流れ、3人の子どもは日本語読みの本名で日本の学校に行くようになったが、本名を名のっているのはわが子だけ。全朝教(全国在日朝鮮人教育研究協議会)の先生方と知り合い、家庭訪問などで交流を深めていく過程で、当時小学4年生の末っ子が、ハングル読みの本名にしたいと宣言した。「この先生なら、この友達の中なら大丈夫」と子どもは肌で感じとったようだ。

 「わが子がここまで考えているのか」と感心し、わが子から教えられた黄さんは、子どもを支え、家族で応援することにした。先生方の熱意にも心を動かされた。その半面、まわりの同胞はどうしているのか気になった。子どもには同胞の友達がいないこともわかった。同胞家庭を訪問すると、通名の中に隠れている同胞がほとんどだった。

 子どもに同胞の友達をと考え、黄さんらは96年3月9日に「保護者会」を発足させた。会では「子どもを孤立させない。そのために親が頑張り、認識を高め、連帯しよう」と決めた。

 北であれ、南であれ、帰化同胞であれ、在日同胞のルーツを持つ同胞ならば誰でも会員に受け入れる。現在、同胞会員は33人。日本の教師も賛助会員として名を連ねている。

 互いの情報交換を中心に、年3回は懇親会を持つ。「情報がないから孤立する。親たちの思いをためよう」と会報チュモニも発行している。日本の教師に働きかけて、教員研修で話をする機会を与えられた時には、在日同胞がどういう思いで日本の学校に子どもを通わせているか、を本音で語る。反応は「知らなかった」が圧倒的で、在日同胞への理解が少ない。教師にも在日同胞の友人がいないのが、一つのネックになっているのかもしれない。

 「在日同胞の存在をもっと世の中に知らせてほしい。そうでないと、子どもたちが親の世代になっても状況は変わらない」。

 95年12月の広島市に続き、97年5月に広島県が教育方針を策定したことも大きな喜びだったが、何よりも多くの同胞や共生を実践する教師と知り合えたことが、一番の成果だと思っている。

 「同胞が互いのいい所を認めて、この在日社会を生きていく」。保護者会は5月30日、在日コリアン人権協会・広島と「在日コリアン教育シンポジウム」を開催した。「本名で通わせて!」と訴えるシンポは盛況だったという。

 保護者会への問い合わせは事務局へ。電話は082(822)1785。

(1998.6.3 民団新聞)



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