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総連は「在日」に目を向けよ


 朝鮮総連はこのほど東京で第十八回全体大会を開催し、今後三年間の人事と当面活動の方向性を決めた。

 許宗萬責任副議長は報告で、過去三年間を「結成以来、最も深刻な試練を乗り越えてきた激しい闘いの時期だった」と総括しつつ、これを「力強く導いてくれたのは、総書記の賢明な指導」と、北韓当局と金正日に対する配慮を強調した。

 二日間行われた今大会を通して、在日同胞に対し北韓へのより一層の忠誠を強いている点や、人事面での混乱、財政難などがかいま見えてくる。民団が推し進めている地方参政権獲得運動への反対運動を継続していくことも謳われた。


北韓への忠誠強める

 朝鮮総連を大衆組織として発展させるためとして、まず第一に挙げているのが金正日の「思想と領導」の具現化である。本心からそう思っているのだろうか。一般の常識的な判断では考えもつかない“ユニークな発想″と言わざるをえない。

 年間に五千人以上もの組織離れを起こしている組織にあって、その原因を深く追求もせず、金正日思想を具現化することが組織発展につながると心底から考えているとしたら救いようがない。

 組織離れの主原因が極度の北韓偏重体質にあることを指導部層が知らないはずがなかろう。在日同胞の組織であるはずの朝鮮総連指導層の再考を強く促したい。

 人事面で、許宗萬責任副議長は自らを中心とする体制作りに失敗した。目指した老齢副議長の退任は実現せず、逆に直系と見られていた若手副議長が退任するなど目論見はもろくも崩れた。

 当分間は九〇才を越えた韓徳銖議長、新たに就任した徐萬述第一副議長とのトロイカ体制を組むことになる。このことは、許責任副議長の組織内部における信望のなさを露呈したものと受けとめられている。


財政難で職員を削減

 財政難を強く示唆したのも今大会の特徴のひとつであろう。中央本部職員の三割を地方本部、支部に配転するのは、表向きは「支部を強化する」との名目だが、実は体の良い人員削減に違いなかろう。

 日本の構造不況のほか、商工人の組織離脱が財政難の最大原因であるに違いない。各地で苦しい経営を余儀なくされている朝銀信用組合が、同胞企業に容易には手助けできない状況にある。

 不況下で必死に生き残りをかけて闘っている同胞企業家にとって、「金正日に忠誠を」云々では商工人の組織離脱に拍車をかけこそすれ、財政を好転させる契機を作ることはまず難しいであろう。

 朝鮮総連はまた、同胞社会は「民族固守か喪失かの岐路に立っている」との認識のもと、民団が力強く推進している地方参政権獲得運動を阻止するとの方針を継続して挙げている。

 地方参政権を得ることが、民族的自主性を抛棄するばかりでなく、同胞社会を同化、分裂させることになり、「民族喪失」につながると言うのである。

 その実、朝鮮総連が恐れを抱いているのは、地方参政権を得ることで組織内で自由選挙の風潮が起きはしないか、北韓への関心が相対的に希薄化するのではないか、というのが本音だと言われている。

 三年ぶりの全体大会で、朝鮮総連の旧態依然とした体質が改善される気配は一向に見受けられない。今後、同胞の組織離れはますます激しさの一途をたどることが容易に想像できる。

(1998.6.17 民団新聞)



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