民団新聞 MINDAN
在日本大韓民国民団 民団新聞バックナンバー
オリニの未来見つめて<6>
各地の保護者会・オリニ会の動き

民族共生教育をめざす東京保護者の会


オリニと父兄がひとつになった
運動会は今年で3回目を迎える


今年も3回目の運動会
本名名乗れるきっかけを

 子どもたちが本名を名のり、出自を明らかにして堂々と日本社会で生きていくこと。それは在日同胞の親たちの共通の願いだ。しかし、子どもたちが通う日本の教育現場には、その「受け皿」がまだ十分に準備されていないのが実情である。

 九五年五月に結成された「民族共生教育をめざす東京保護者の会(金敬得代表)」は、その前年に日本の教師らが設立した「民族共生教育をめざす東京連絡会」とともに東京都教育委員会に「民族共生教育基本方針」の策定を求め続けてきた。しかし、都教委の壁は厚く、未だに方針は出されていない。

 「同胞の親たちがもっと集まって、声を大きくあげなくては」と、同会に関わる在日二世の李福子さん(45)は言う。会に参加しているのは本名で生活を送る保護者たちだが、「本名か、通名か」で悩んでいる同胞にもすそ野を広げたいとの思いが常にある。

 二カ月に一度、学習会を開いているのも同胞同士が互いの思いを共有する中で、絆を育みたいと考えているからだ。

 各界で活躍している人たちから民族教育の実践について学ぶ今年の学習会では、三月に立命館大学の文京洙教授が「私の民族教育」について自身の体験に基づいて語り、五月にはアイヌ民族として初の国会議員になった萓野茂参議院議員が、七十人を超す参加者を前に在日同胞と同じように同化を強いられてきたアイヌ民族の歴史に触れた。そこでは排他的な日本の風土が改めて浮き彫りになった。

 排他的と言えば、長女にまつわる思い出がある。高校卒業まで朝鮮学校に通った李さんにとって、在日同胞としてのアイデンティティーを持つことは当然のこと。日本の学校に送っても民族的な自覚と誇りを育てようと、長女の就学時期に夫の呉崙柄さんと「コブクソン子ども会」をスタートさせた。八四年九月のことだ。

 しかし、長女はある日、「なぜ自分だけ韓国の名前なの。みんなと同じように日本の名前がほしい」と言ってきた。その長女も中学生になり、通名を名のる同級生の「しんどさ」を目の当たりにしてから変わった。

 通名の子は必要以上に日本人のように振る舞っていたが、日本人からは「あの子はほんとは韓国人だよ」と蔭で言われていたのである。

 「本名で生きるということで緊張するのも事実。しかし、娘はありのままの自分を出せるという気楽さを実感した」と李さん。「民族」を否定せずに育ったわが子の成長を見ながら、もっと在日同胞が自分を隠さず、日本社会に名のり出ようと訴える。その集まりが地域の「コブクソン子ども会」で、十四年目を迎える現在も毎週一度、日本の小学校を借りてウリマル勉強などを続けている。

 また、連合体としての「保護者の会」では、八月一日から二日の週末にかけて、神奈川県の丹沢湖畔で親子サマー・キャンプを計画している。大自然の中で保護者と子どもたちが川遊びやバーベキュー、キャンプファイヤー、温泉を楽しむ。十月には今年で三回目となる恒例の「在日」交流大運動会を開くことも決まった。

 「保護者の会」への連絡は03(5689)8636へ。

(1998.6.24 民団新聞)



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