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安安重根義士の隠れた素顔
人間ドラマとして描く

史実に忠実に映画化へ
在日韓国人が制作協力


 韓国の抗日独立運動家・安重根義士による伊藤博文狙撃事件が、史実を基に日本で劇場用に映画化されることになった。安義士を行動に駆り立てた背景にある日本の韓国侵略と植民地化を直視しつつ、獄中の安義士と日本人関係者との心の触れ合いも人間ドラマとして描く。歴史認識問題をめぐって対立を繰り返してきた韓日両国だけに、映画は双方が過去の整理をしていくうえで役立ちそうだ。

 映画のタイトルは「安重根と伊藤博文 二つの祖国〜一九〇九年十月二十六日ハルビン」(上映時間百二十分)。韓国併合をめざした初代統監・伊藤博文と「東洋の平和と韓国の保全」を目指した安重根義士の生き様を対比させながら「人間ドラマ」として描く。

 安義士は韓国で抗日独立闘争の英雄として知られている。日本の韓国侵略の動きに対して義兵闘争を展開し、伊藤博文をハルビン駅頭で射殺した。日本では一部で凶暴な犯人として受けとめられているが、当時の日本人関係者の中には安義士の人間性に共感する人も少なくなかった。

 それは、検察官の横溝孝雄が政治犯たる安義士の扱いに最後まで苦慮したことでもわかる。また、通訳の園木末喜は安義士が死刑執行の直前まで自分の母の病気をきづかってくれたことに驚き、感激する。こうした安義士の人間性を表した隠れたエピソードも紹介する。

 制作委員会(高瀬廣居委員長、拓殖大学客員教授)が人間・安重根を映画化したいと思い立ったのは九六年十二月のこと。国際韓国研究院の崔書勉院長に相談した結果、安義士に関する当時の尋問調書ならびに裁判記録、そして獄中で記した『自伝』および『東洋平和論』を基に可能な限り史実に忠実に描くことで一致した。これまでとかく虚像ばかりが一人歩きしてきたといわれているだけに、安義士の実像が初めて鮮明な形で浮き彫りにされるものと期待されている。

 全体の三分の二は旅順監獄での取り調べシーンと処刑場面で構成されるが、日本人関係者との心の通い合いも含め、ドラマとして見応えのあるものになりそうだ。

 制作委員会では「この映画は、安重根と日本側裁判関係者との対話を通して浮かび上がる安重根像と政府の間で揺れ動く当局者の心模様を描く。安重根が獄中で記した『東洋平和論』が日韓両国並びに二十一世紀に向けたアジアの未来像の礎になることを願い制作します。安重根を知らない戦後生まれの人に見てもらいたい」と話している。

 出演者の半分を占める韓国人の配役については、九月中に韓国でオーデションを行い決める。なお、韓国語と日本語の堪能な在日韓国人の出演も考えており、九月末から応募を呼び掛けていく。制作発表記者会見は伊藤博文が狙撃された十月二十六日に行う。

 問い合わせは03(5443)3957の株式会社アクシスまで。

(98.8.19 民団新聞)



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