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金大中大統領、建国50年慶祝辞(全文)

国難克服へ新たな決意



 親愛なる国民の皆さん!

 本日は光復五十三周年の記念日であり、大韓民国政府樹立五十周年を迎える歴史的な日です。

 私はこの場を借りて国民の皆さんに心から敬意を表するとともに、北韓同胞と海外同胞にもあたたかい言葉をかけたいと思います。

 この意味深い日を祝いつつ私は、国民の皆さんと共に、新たな決意と覚悟で臨みたいと思います。これは国家の進むべき方向を新たに確立し、国の機構を正しく立て直して、民族の再飛躍を成し遂げるために国民全てが賛同する「第二の建国」を提唱する日であります。

 大韓民国建国五十年史は私たちに栄光と汚辱が伴った波乱の時期でした。国土分断と同族間の争い、そして数十年間にわたった軍事独裁による苦難と逆境に勝って、私たちは世界十一位の経済大国をこの地に建設しました。

 それだけでなく私たちは五十年ぶりに成し遂げた与野間での平和的な政権交替を通じて「国民の政府」を築きました。世界のあらゆる民主市民らがこれを高く評価しました。

 しかし、「国民の政府」は国民と共に政権交替の喜びを交わす暇がありませんでした。私は当選するや否や六・二五以降最大の国難を克服しなければならないという重い責務を担ったためです。

 この六カ月は、永らく累積した弊害を清算して誤った慣行を変えるにも短い期間でした。

 本格的な改革はこれから開始です。私たちが進む道は苛酷で、力のいる苦難な道ですが、勇気ある国民にとっては機会と可能性を与えるはずだとの確信を持っています。

 私はきょう、政府樹立五十周年を迎えて「国民の政府」が「第二の建国」を通じて追求する哲学と原理、そして総体的改革の未来像を国民の皆さんにお話しできることをうれしく思います。

 愛する国民の皆さん!

 昨年十二月、大統領に当選して以来、私は一時も休むことなく国家の危機を克服するために渾身の努力を尽くしてきました。

 国民の皆さんの声援と協力に助けられて外国為替危機が一旦収拾されました。かなり多くの外国為替保有高と共に為替レートと金利も下方安定しています。物価もある程度は安定傾向を維持しています。経常収支の黒字は大きく増して外国人投資環境も画期的に改善されました。

 労使間の大妥協による労使政協議機構が創設され着実に運営されています。金融、企業、労働、そして公共部門の四大構造調整が力強く推進されています。

 また、対ASEM外交と対米外交でも期待以上の成果を上げたと思います。これら全てが国民の皆さんの声援のおかげです。深く感謝する次第です。

 しかし、国難を克服して民主主義と市場経済の完成に向けて進む道はまだ遠く険難です。過去の遺産がずっと私たちの足かせとなっています。

 この間、権力を握った人たちは政経癒着と官僚支配金融そして不正と腐敗を重ねてきました。

 その結果、経済を含め私たちの社会のあらゆる部門は総体的に不実化し、国際競争力は弱くなりました。外国為替危機は必然的な人災でした。この原因は必ず究明して将来の教訓にしなければなりません。

 私たちは「第二の建国」を推進しなければならない数多くの理由を抱えています。私たちは政治、経済、社会等あらゆる分野で放漫な態度を改め無駄を省き、効率を高める構造調整作業に拍車をかけねばなりません。もちろんこれは高度成長に達した私たちに課せられた大きな試練であることに間違いありません。

 残念ですが、現在の苦痛を避ける道はありません。ひたすら国民と政府がひとつになり、苦難の現実を直視してこれを克服することによって、一日も早くこの試練のトンネルを抜け出る道だけなのです。


競争力高めよう

 今日の低効率と高費用の体制では、これ以上、国際競争の中で生き残れません。国家の生産性と競争力を高めるための構造改革が不回避です。永らく官治経済に押さえられていた未完の市場経済を「第二の建国」を通じて競争力のある体制に完成させねばならないのです。

 一方、私たちは知的に高度な能力を備えた人的資源を大きく育成しなければなりません。私たちの未来は、国民個々人の創造的実践能力を培養することにかかっているのです。

 教育革命、情報革命、先端技術革命、ベンチャー企業革命、そして文化産業を率いてゆく人材養成が私たちの国運を左右するのです。幸いにもわが国民は、皆が国難克服に賛同する態勢をとっています。果敢な改革と新しい出発を渇望しています。

 大統領である私に強力なリーダーシップで改革を率いろと要求しています。「国民の政府」と与党に対し、改革の先鋒になるよう促しています。野党に対してもこの苦難の期間だけは争いを中断して政府の努力を支援してくれるよう要求しています。

 親愛なる国民の皆さん!

 私は政府樹立五十周年を迎えて漢江の奇跡を成し遂げた国民の底力をもう一度集めて「第二の建国」を始めようという国民の皆さんの声を聞いています。私は精一杯自身の命を捧げて、皆さんが命令したことを成就しようとします。

「第二の建国」は、私たちが歴史の主人として国難に陥った国を救い、その運命を新たに開拓しようという時代的決断であり選択なのです。また、「第二の建国」は産業化と民主化の底力を土台に民主主義と市場経済を完成するための国政の総体的な改革であり、国民的な運動を示しています。

 「第二の建国」で進む道は大韓民国の法を忠実に継承しながらも歴代の権威的な統治方式とは明確に違わなければなりません。

 取りあえず「国民の政府」が標ぼうしてきた新しい国政哲学の民主主義と市場経済の併行発展で進むことだけが、私たちが今から追求しなければならない国政の方向です。「国民の政府」はこのような国政哲学を基礎にその実践原理として自由と正義そして効率を重視します。

 私たちは今日、意味深い大韓民国政府樹立五十周年を迎えて「第二の建国」に向けた門出の第一歩を踏み出します。

 「第二の建国運動」は、政府が上から一方的に導くことでなく、国民が生活の現場で知恵を集めてつくりあげるものなのです。そうしてこそ成功できるのです。

 国民の皆さんが生活の中で主人としての責任意識を持って国事に参加して、お互いに協力して大韓民国の国際的競争力を世界最高の水準に高めることが「第二の建国」でなくて何でしょうか?私たちみな共に明日の勝利を約束する「第二の建国運動」の隊列に参加しましょう。

 敬愛なる国民の皆さん!

 「国民の政府」は「第二の建国」を計画して推進しようと次の通り国政運営の六大課題を提示します。


国政の六大課題

 第一は権威主義から参加民主主義への大転換を成し遂げて国民と政府の間に相互通行の政治を作ります。

 過度な中央集中の弊害を正して行政、財政、教育、治安等あらゆる分野で地方政府の権限と責任を果敢に拡大します。地方警察制度も実現します。

 何より「国民の政府」は国民の国政に対する参加意識をくじけさせる不正腐敗を徹底的に清算するという固い決意を明言します。

 特に、全ての国民が、心から喜びながら国政に参加できるように亡国的な地域対立を必ず清算いたします。このために人事と地域発展の公正な処理が徹底的に履行されるでしょう。

 私は大統領として全地域の全国民を敬愛します。私は四千五百万国民の大統領であり七千万民族のための大統領になるつもりです。私に地域の差別は決してありえないということを国民の皆さんに堅く誓います。

 進んであらゆる政党が全国的に平均して国政に参加できるようにするために政党名簿式比例代表制を導入します。低効率高費用の国会制度も大きく改革されねばなりません。人事聴聞会制度も公約した通り実施します。

 各自治体別に重要な問題に対する住民投票制の導入も推進します。言論も自らの努力と国民の世論によって改革を断行しなければならないと信じます。

 二十一世紀は参加政治の時代です。国民があらゆる国政分野に参加できる機会が最大限保障されなければならないのです。これが「第二の建国」の政治的基本目標です。

 第二には官治から経済を解放させて市場経済の自律性を高める構造改革に全力を尽くします。

 不必要な政府規制を果敢に減らし、企業・金融・労働・公共部門など四大分野の構造調整を迅速且つ効率的に遂げるでしょう。

 今後は企業を成功的に運営して黒字を出して世界との競争で勝利して外貨をたくさん稼いだ企業人だけが愛国的企業人として尊敬を受けて発展できるようにします。

 一方、輸出を増やして外国人投資を積極的に誘致しようと思います。このために輸出金融を果敢に支援して外国人投資促進法を年内に立法化します。

 「第二の建国」下からは、何よりも情報と先端技術中心の知識基盤産業国家を建設するために心血を傾けることでしょう。

 有望な中小企業とベンチャー企業を戦略産業として育成します。また農漁民の生産物が適正価格を受けられるよう物流体制を変えるために農業政策を画期的に転換します。

 このように官治経済の弊害を一掃して、あらゆる経済活動が市場経済の原理に従って達成されるよう条件を完備することが「第二の建国」が指向する経済的目標ということをもう一度強調しようと思います。

 第三には独善的民主主義のような閉鎖的思考から抜け出し、普遍的な世界主義で進む新たな価値観を持たなければなりません。

 既に始まったWTO体制は、今後数年内に経済的国境をなくすはずです。これからは世界と共に競争して協力する中で生存して共に繁栄していかなければならないのです。

 ところが世界にはいまだに韓国を「近づくのが難しい国」と考える人が多いのです。これではだめです。世界を友人とするために韓国のイメージを積極的に改善しなければならないのです。良いイメージこそが、輸出と観光そして投資誘致のための必須条件です。私は世界主義時代に適応できるように各種国際交流を促進して、人材の養成に積極的に取り組みます。オープンな心で世界を受け入れ、世界へ進む世界主義こそ「第二の建国」の元で私たちが進む道なのです。


三位一体の教育

 第四に、物質中心の工業国家を創造的知識と情報中心の知識基盤国家に変えなければなりません。

 民族の運命を左右する情報と科学技術の水準を画期的に向上させなければなりません。このために「国民の政府」は教育立国の理想の元で、今日の消耗的な教育を創意的な教育に変えるために率先します。

 何よりも、知・徳・体、三位一体の全人教育を実施しなければならないのです。入試地獄がない大学入試制度を実現して学父母の負担を大幅に減らします。実力のある学生だけを卒業させて学閥主義も打破します。そして教職者の水準を画期的に向上させる措置を推進します。

 学校に行くことが楽しい教育を実現することによって、子供と青少年自らが未来に対する夢と希望を育むことができるようにします。このような教育改革のための総合的な実践方案を、すでに活動を始めた「新教育共同体委員会」が推進するはずです。

 創意的で多様な教育と共に二十一世紀の基幹産業である文化産業を画期的に発展させなければなりません。教育と文化の育成を通じた知識基盤国家の建設が、すなわち「第二の建国」の理想なのです。

 第五に、労使間の対立と葛藤の時代に終止符をうって、和合と協力の時代に向けた新労使文化を創出する歴史的大転換を成し遂げなければなりません。

 苦痛と成果の公正な分担に土台をおいた信頼は「第二の建国」の基礎です。

 特に私は、従業員自主制と社会保障制度の強化等で経済成長の成果を公平に分配します。世界的な趨勢によって私たちも労使双方間に和解と協力の関係を成し遂げることこそ国際的無限競争の中で共に生き残れる道であることを心に刻まなければなりません。このような新労使文化創造の使命を帯びて労使政委員会が誕生しました。

 公正な条件の中でお互いに対する信頼と譲歩によって、労使間に大妥協を成し遂げなければならないです。そして少なくとも九九年末まで争議のない労使協力体制を成就させることを期待して止みません。

 と同時に、政府は今十兆ウオンに達する巨額を投入して、失業対策にあらゆる力を注いでいます。来年にもこれをより一層強化します。今後あらゆる勤労者は例外なく雇用保険の恩恵を受けるようになります。日雇い勤労者にも公共就労事業または生計費補助金を支給します。

 私はこの場を借りて国民の皆さんにはっきり約束します。今後あらゆる失業者に対して食べることと、着ること、そして医療の恩恵と小中等学校教育費に対する最小限の保障を必ず実現して、職業を持っていない国民の生活を守るために全力を尽くします。

 このような努力こそ「第二の建国」が追求する新労使文化創造のための後押しになるはずです。

 第六に、去る五十年間韓半島を支配してきた南北対決主義を越えて、確固たる安保の基盤上に南北間交流協力の時代を開いていこうと思います。

 「第二の建国」の旗幟(きし)のもと「国民の政府」は南北間の長い間の不信を解消して、政経分離の原則によって南北間の経済的交流と協力を増進しようと思います。合わせて南北間に文化、宗教等いろいろな分野の交流も促進するでしょう。

 一方、既に明言した対北政策の三大原則、すなわち「北韓のいかなる武力挑発も容認しない。北韓に対する吸収統一を願わない。南北は相互交流協力を実現する」との立場を一貫して堅持します。これらを通じて私たちは韓半島に戦争の危険をなくして平和統一の基盤を積んでいくはずです。


北韓当局に明言

 私は今日、八・一五光復節を迎えて北韓当局に明言します。今日の冷厳な国際現実で、わが民族が生き残ろうとするならば、何よりも韓半島に和解と交流協力の新しい幕を開けなければなりません。私たちは既に締結された南北基本合意書のなかでお互いに利益になる共存共栄の関係をいくらでも実現できます。

 「国民の政府」は南北基本合意書の精神に立脚して北韓の安定と発展を支援する用意があります。私たちは金剛山開発と農業開発を含んだあらゆる経済協力を支援して推奨します。

 特に強調することは南北両側が、人道的精神と同胞愛で離散家族対面のための措置を行うべきだということです。そうすることによって血縁に対する懐かしさに胸かきむしられている彼らの苦痛を和らげなければなりません。

 このように今、南北間にはお互い協議して議論することがあまりも多いのです。既に南北間合意で構成されている分野別共同委員会を一日も早く稼動させなければならないのです。共同委員会の正常運営に先立ち、私たちは長次官級を代表した南北常設対話機構を創設して誠実な対話の場を持つことを提案します。私は北韓が願うならばこれら全ての問題を協議するために大統領特使を平壌に送る用意があります。

 親愛なる国民の皆さん!

 「国民の政府」は民主主義と市場経済という基本哲学と自由・正義・効率の三大原理の下、参加民主主義と市場経済の完成、世界主義と知識基盤国家の実現、新労使文化の創造と南北間の交流協力促進等に先立ち、先に述べてきた六大国政課題の実践を「第二の建国」の進む道にみなしたいと思います。このための総合的な政策とプログラムの開発、そしてその実践のために「第二の建国」のための国民運動が国民的参加の中で遂げられることを願ってやみません。

 「第二の建国」の旗幟の下、世界の中の先進国・韓国を建設する過程には多くの知識人と専門家、国民の参加が必要です。国民の皆さん、これからは積極的に賛同して国難を打開し、また立ち上がる民族の明日を力強く開きましょう。

 敬愛する国民の皆さん!

 これから私たちは「第二の建国」のための力強い出発をします。苦労も共にして、喜びも共にする「第二の建国」を成し遂げます。

 私は一生を国民の皆さんのそばで、自由と正義のために生きてきました。それゆえに言葉にできない苦難の歳月を四十年以上耐えてきました。私は必ず国民の皆さんの期待にそえることを固く誓います。

 数多くの試練と苦痛の中でも産業化と民主化の偉業を成し遂げた私たち国民の底力を私は固く信じています。二十一世紀が知識と文化の時代ならば、先祖から受け継いだ教育熱と永遠の文化遺産を譲り受けたわが民族こそ二十一世紀のために用意された民族だと私は信じます。

 私は一時の人気より後世の評価をより一層大切に考えており、二十一世紀に向けた「第二の建国」に渾身の努力を注ぎます。そうして国民の皆さんと共に九八年は全面的な改革に総力を尽くして、九九年末まではIMF管理体制を終結できるようにします。そして二〇〇〇年からはわが韓国が世界一流国家の隊列に参加する、民族の再飛躍を必ず実現させます。

 国民の皆さん、希望と勇気を持ちましょう。私たちはやり遂げることができます。祖国の光復と民主大韓の守護のために、そしてこの地に民主主義を実現するために献身し、戦って先立たれた愛国英霊たちが私たちを守ってくれることでしょう。

 私たち皆が手に手をつなぎ、ひとつになって「第二の建国」に向けて力強く進みましょう。この時代の栄光なる主人になりましょう。子孫らに誇らしい明日を譲りましょう。

(1998.8.19 民団新聞)



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