民団新聞 MINDAN
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永住外国人の地方参政権
日本各界に聞く<2>

衆議院議員・冬柴鐵三さん




参政権は民主主義の根本

 衆議院の冬柴鐵三議員(新党平和)は日韓議員連盟に所属し、「在日韓国人地位向上特別委員会」の委員長として、九七年九月に「永住外国人に対する地方公共団体の議会の議員及び長の選挙権等の付与に関する法律案」を起草した。この試案では、永住者(一般永住、特別永住)で、選挙権を望み、外国人選挙人名簿に自ら申請した者に付与するという「申請主義」を採用している。一方、被選挙権については、将来の議論に委ねるとして除外している。今世紀中の法制化に意欲を示す冬柴議員に話を聞いた。


◆◇◆◇◆◇


◆定住外国人の参政権についてどう考えますか。

 在日韓国人は国籍は違うけれども、日本の地で生まれ、日本の中で骨を埋めていく。そういう人たちの人権を守るためには、住民として政治に参加する参政権は、民主主義の根元に関わるものだ。「代表なくして課税なし」という言葉があるが、代表を選ぶことができないのに納税の義務を負担しているのは不自然だ。


◆法律案を起草した契機は何ですか。

 今から四回ほど前の合同総会の共同声明に参政権の趣旨が盛り込まれ、在日韓国人の法的地位向上に誠心誠意取り組むことが謳われた。私も委員長として立法化準備に取りかかった。ところが、案外障害があることがわかった。

 一つは、朝鮮総連から「民族を分断するものである。絶対反対だ」という意思表明だ。私の地元(兵庫県尼崎市)にも総連の方がたくさんいらっしゃるし、強い反対要請もあった。民団からも参政権というのは選挙権と被選挙権が両方与えられるべきだと強く言われた。いろいろ検討してみると選挙権については理解を示す人が多いが、被選挙権になるといろんな意見が出てきた。

 私の党だけだったら今日にでも出せるが、成立させるのが目的だから、日韓議連の主たる先生方が提出者になり、賛成者になっていただいて衆議院に提案したいということで、検討をお願いした。

 しかし、政局が毎日のように変わり、なかなか結論が出ずに約一年間そのままの状態になっているという残念な状況だ。


◆地方参政権の付与範囲については。

 九五年の画期的な最高裁の判決は、外国人であってもその地域と密接な関係を持つに至った、例えば永住者にその意思を地方政治に反映させるために、投票権を与えることは、憲法の禁ずるところではないというものだった。

 私としては日本で永住権を取っておられる方に与えるべきだと考えている。そうなれば在日韓国・朝鮮人の九〇数%は付与される。


◆朝鮮総連の反対運動については。

 例えば、母国の北朝鮮が強く反対するということになると、それに反して日本で選挙権を取得した場合に、その人が母国で不利益を受けることがあっては申し訳ない。いろいろ考えた末、永住者のうちで選挙権が必要だという人には申請をしていただく。外国人の選挙人名簿を作り、それに申請をして記載された人に与えるということにすれば、処理ができるのではないか。


◆これからの日本のあり方は。

 国家とか国民という考え方ではなく、二十一世紀はまさに国家という垣根が低くなって、そこに住む地球市民、住民が主役になると私は予感している。それが世界の趨勢だ。

 地域に住んでいる人が地域のことは決める。日本国民たる住民と外国人たる住民との二種類の住民が、地域をどうするか決めていくべきであろう。

 在日韓国・朝鮮人、台湾出身者に対して、われわれ日本人は重い歴史を担っているという認識だ。したがって一般永住、特別永住という資格を日本が特別法で与えているのも(私もその法律制定に関わったわけだが)当然、他の外国人とは違い、限りなく日本人に近い扱いがされている。

 各地方議会で推進決議をされた地方の住民を足し算すれば、圧倒的多数の地方は在日の方に地方参政権を付与すべきであるという意思を示している。

 在日韓国人も日本にとけ込んで経済の発展などに貢献されてきた。参政権を基礎にしてより一層、限りなく日本人と同じような法的な保護を受け、日本の発展のためにも寄与していただくことを期待している。


◆九月四日からソウルで日韓・韓日議連の合同総会がありますが、何らかの進展は期待できますか。

 ここまでできているのだから早く提案したい。日韓議連は派閥横断的に政党、党派を超えて存在するわけだから、法案に同意される議員を糾合して一日も早く提案したい。小委員会での意見を総会で出し、共同声明の中に盛り込みたい。

 金大中大統領がお見えになる節目の年に衆議院に提案できたらと思う。そこからいろんな議論が始まるだろう。時期は別にして、成立することは間違いない。これを否定するようでは国際国家日本とは言えない。

(1998.9.2 民団新聞)



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