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オリニの未来見つめて
各地の保護者会・オリニ会<15>

奈良・在日外国人保護者会



数多くのオリニが参加した今年のサマーキャンプ


民族文化や人権学習も

 在日同胞が点在している奈良の地に、奈良・在日外国人保護者の会が発足したのは九二年九月十三日のこと。現在の代表は三代目の金厚子さん(46)で、東大阪市出身の在日二世だ。

 保護者の会に集まる同胞自身が民族の言葉や歴史、文化を知らないことに気づいた金代表らは、毎月一回の例会では人権学習やチャンゴや歌、踊りなどの民族文化を学んできた。

 オリニを対象に九三年には初めてサマーキャンプを実施し、予想を上回る三十家族約八十人を集めた。県下ではすでに奈良市(八三年三月)、奈良県(八六年六月)、天理市(九一年九月)が在日外国人教育方針・指針を策定しており、学校を通じて同胞家庭にキャンプの案内をしてもらったことが大きい。

 運営に慣れていない親たちの手作りキャンプは、本名の名札づくりから始まった。普段は通名で生活していても申し込みの段階で、本名の大切さを理解してもらう。「民族名を名のる機会を大切にしたい」と金代表。日本の教師や民族学級講師も関わり、年々充実した内容になってきている。

 「自分たちが子どもの頃は、ウリノレやチャンゴに接すると身を引く感じがあったのに、目の前の子どもたちは民族文化を素直に楽しみ、伸び伸びしている」と生駒オリニ会の李和子さん(42)は当時を振り返る。

 民族に触れるサマーキャンプは年中行事として定着し、子どもたちは夏が来るのを楽しみにしている。運営に参加する同胞青年や保護者が学ぶことを通じて、橿原、大和高田、桜井、生駒にオリニ会を誕生させる契機にもなった。

 九六年十月には生駒オリニ会が結成され、日本の学校が休みになる第二、第四土曜日に民族に親しむ場をつくっている。

 「小さければ小さいほど自然に生活の中に民族を取り入れる。中学生になって民族にどう向き合うか。小学校の六年間がとても大切」と李さん。

 親同士が交流を図る定例会は二カ月に一度開かれ、子育てや子どもの将来について心おきなく意見交換をする。そこでは「当事者の声を反映させるために、教育指針の策定委員になろう」「就学案内が通名で届くのはなぜ」「一人ひとりの親が力を合わせよう。子どもの教育問題では引けない」などの生の声が相次ぎ、保護者が立ち上がっていった。

 保護者の会では地方参政権がない同胞の声を行政に伝えようと、子どもの教育権や外国人住民の権利について県下十市の市長選に公開質問状を提出したこともある。候補者からは必ず返答があり、実際に面談する中で橿原市と生駒市に指針策定を実現させた。

 「指針に基づいて民族学級などの公的な民族教育を実現させるのが当面の課題。自分の民族を持ってこそ他者と共生できる。在日に生まれてよかったと子どもに思わせたい」と金代表。自分を知り、自分を好きになる生きる力を培う教育環境をめざす。

 年一回のサマーキャンプだけでなく、オリニたちに出会いの場を増やそうと、九七年十一月に開催して好評だったオリニ・フェスティバルを今年も十一月八日(日)の午後一時から橿原市の畝傍北小学校の体育館で開くことになっている。

 「奈良保護者の会」への連絡は、0743(79)1420へ。

(1998.9.2 民団新聞)



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