民団新聞 MINDAN
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永住外国人の地方参政権
日本各界に聞く<4>

衆議院議員・中野寛成さん(民主)



 大阪で開かれた第一回権益問題シンポジウムに民社党を代表して出席して以来、二十数年間にわたって在日韓国人問題にかかわってきた中野寛成・衆議院議員。現在、民主党の代表代行、日韓議員連盟副会長をつとめる議員に地方参政権問題を聞いた。


◆◇◆◇◆◇◆◇


≪協定永住者を優先的に≫


■永住外国人の地方参政権についてどのようにお考えですか。

 北欧をはじめとした諸国では、在留外国人の選挙権を認めている国がある。ただ、その地域の国はノービザ、場合によってはノーパスポートで国境を越えることができ、外国の会社に通勤する例もあるような歴史的経緯がある。

 日本の場合、一気に同じようなわけにはいかない。しかし、日本の国際化も考え合わせると、やはり住民の権利としての地方参政権は前向きに進めていかなければならない。

 しかし、日本の歴史的背景や国民感情からいって、そう簡単なことではない。そのために、まず在日韓国人を中心とする、いわゆる協定永住者に地方参政権を持っていただくことから始めるべきではないか。

 協定永住者は、強制的に日本人とされ、しかも強制的に韓国人に戻された人たち。いうならば一時期は選挙権を持っていた。このような歴史背景を考えると、まずは協定永住者の地方参政権を優先的に“復活”させることが自然ではないかと思う。


■すでに法案を作られているとおうかがいしましたが、概要と上程時期についてはいかがでしょう。

 新進党時代に私が座長をつとめ、事務局長の冬柴議員とともに作ってきた。現在、日韓議連で働きかけているが、なかなか態度が硬い議員が多い。提案することが一歩前進になるという判断がつけば、冬柴議員が所属する新党平和と民主党とで共同提案したい。

 時期については提出することが目的でなくて成立させることが目的なので、そのタイミングと提出方法をにらみ合わせていきたい。また、他党の議員により一層認識を深めてもらうことも必要だ。

 ―九五年の最高裁判所の判決や鄭香均さんの高裁判決でも、定住外国人について地域との密接な関係をあげていますが、今後日本国籍と外国籍という線引きでなく、永住外国人という枠組みが確立していけるのでしょうか。

 公権力に直接関与するか否かということが裁判所の判断基準になってきたと思う。これまでの国籍要件は事実上徐々に薄れてきたということが言えると思う。一連の判決は、いうならば日本の裁判所がこれらの問題についてかなり踏み込んできたということだ。


■付与の範囲について先ほど協定永住という枠が出ましたが。

 二つの意味がある。一つは、協定永住者から付与することが歴史的な理由から見ても説明が付きやすい。もう一つは、協定永住者の皆さんの長年のご労苦にまず報いる、という面がある。これは大事なこと。

 対象を広げ、運動の幅が広がった方が法案成立には有利かも知れないが、まずは比較的在日歴の浅い他の外国人よりも協定永住者の歴史的経緯を踏まえれば、まずそこから始める方が筋道だと思う。


■被選挙権について。

 この問題は公権力に絡んでくる問題。今後、国民の理解を深めながら考えていくことが大事だろうと思う。現在「被選挙権も」といえば選挙権さえも獲得することが先に延びる可能性があるかもしれない。注意深く見定めながらプロセスを考えなければいけない。


■被選挙権が段階的に後になるとすれば、段階を乗り超えるためには何が必要でしょう。

 地方参政権が付与された後の皆さんの政治参画の姿勢が、その後の国民感情を定めていくことになる。民団が地方議会の意見書活動をしてこられたことは地域住民の理解を深め、暗黙のプレッシャーになっている。それと同時に民団の皆さんが、一途な気持ちで日本の国会議員の心を揺り動かすことが大事だと思う。私たちも、もちろん一層努力を重ねたい。

(1998.9.16 民団新聞)



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