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在外国民の基本法制定を



 去る八月末、韓国法務部は「在外同胞の法的地位に関する特例法」試案を発表した。この試案では在外国民と韓国系外国人を在外同胞という一つの枠組みで処理している。この韓国系外国人に対して内国人と同等の待遇を与えることに対して韓国与論はもちろん、在外同胞社会をはじめ居住国の政府からも物議が醸し出されている。


■在外「国民」は別の法体系で

 民団でも、国籍を問わない韓民族の血統を持つ海外居住者に対する法整備に対して、韓国籍者である在外国民と外国国籍者である韓国系外国人を、同列に扱うには無理があると判断している。また、韓国憲法の在外国民の保護規定に則った法制定を十数年にわたり要望してきた経緯からしても、この特例法に対する意見を明らかにし、自国民である在外国民に対する基本法を制定する必要があると要望してきた。

 ただ、今回の試案は基本的に韓国内の法的地位という制限はあるものの、在外国民の地位向上のための特例制度として、住民登録の代用措置を講じたことは本国での長期滞在者にとっては日常生活の不便が解消されるなど、これまで抱えていた多くの問題解決につながることは否定しない。

 しかし、在外国民と韓国系外国人を適用対象としているため、血統主義による大民族主義と誤解されかねない。他国籍者に対するこのような措置に対して、在外同胞が居住している国家の政府が懸念を表明しているのも事実だ。

 このように在外国民と韓国系外国人を一つの法律で処遇しようとすること自体に無理がある。在外国民は韓国籍を所持しているにもかかわらず、これまで国民としての恩恵を受けてこなかった。このような現実を鑑みると、別途の法制定が合理的で、まず在外国民の基本法を優先的に制定すべきというのが民団の基本的見解である。


■韓国系外国人と区別すべき

 本来であれば、このような在外同胞の待遇は、国内居住国民、非居住者である在外国民、元韓国籍所持者およびその子孫である韓国系外国人と区別して考えるべきだ。その場合、同じ国民でありながら在外国民は国内での非居住者という位置付けしかない。そして非居住者ゆえに納税および兵役の義務を果たせないことによる多少の制限は甘受しなければならないのも当然だ。しかし、国民が国籍を所持する政府から擁護を受けるのは必要最低限の権利でもある。われわれ在外国民は韓国政府にしかそれを求められないのも事実だ。

 韓国系外国人は国籍所持政府からの恩恵が受けられることを考えれば、むしろ韓国国内の外国人政策の一環としてその特例措置を講じるべきだろう。納税の義務を果たしている在韓中国人などの長期滞在外国人の待遇も考えるべきではないか。地方参政権や地方公務就任権の付与など長期滞在外国人に対する待遇改善が図られるならば、現在、われわれが日本で推進している地方参政権運動や生活権拡充運動に弾みがつくのは言うまでもない。

 人権意識高揚という国際的潮流からしても、在外国民および韓国系外国人、そして長期滞在外国人の待遇を基本的人権を擁護する観点に立脚して対処してもらいたい。

 そうすれば、自ずから在外国民は別途の法体系にならざるを得ないはずだ。その上で在日韓国人の歴史性と現実的な特殊性に照らした「特例措置」を講じてほしい。

 今からでも遅くない。今回の特例法試案を土台に、在外国民基本法をはじめとした法整備に早急に取り組むことを望む。

(1998.9.30 民団新聞)



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