民団新聞 MINDAN
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永住外国人の地方参政権
日本各界に聞く<5>

参議院議員・浜四津敏子さん(公明)



 公明代表・参議院の浜四津敏子議員は東京都の選出で、「ヒューマニズム(人間主義)の政治」を掲げている。公明党時代から定住外国人への地方参政権付与について、一日も早い法制化の実現を一貫して主張してきた。弁護士出身の浜四津議員は、在日同胞の歴史的経緯や人道的立場、また九五年の最高裁判決を踏まえ、機は熟してきたと見る。今後も党をあげて最大限取り組む姿勢だ。


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≪政策決定への参与こそ合理的≫


■ヒューマニズムの政治がめざすものは。

 政治というのは、そこに生活する一人ひとりの人間が人間として大事にされること。それを保障し、実現するのが政治の本来の使命だ。国や民族、あるいは思想・信教・信条が違っても、これからは国内政治も国際政治も大事な命、人生、家族を持っている同じ一人の人間として、最大限に尊重されることを一番基本に置かなければならない。


■在日同胞の国籍の違いがネックになっていますが。

 日本国籍がなくてはならないという国籍要件は、非常に限定された考え方だと思う。

 地方参政権というのは、地域住民がその地方の政治にどう参加していくかという問題で、ことに定住外国人は税金を納めながらも、自分たちの身の回りの政治、政策決定について何も参加できないというのは、非常に不合理だ。

 日本国内で行われることは、基本的に日本国民だけが利益を受けるというようなおかしな方向で線引きされてきたが、不合理な線引きについては、きちんと合理的なものに転換していかなくてはならない。


■参政権は「同化につながる」とか、「帰化すれば」との意見については。

 私たちが準備している法律案では、希望する方のみの選択でいいと考えている。望まない人に強制はしない。機会の平等は保障し、権利行使の選択は当事者にあるわけだから、法の下の平等にも抵触しない。

 「帰化すれば」というのは傲慢な議論だと思う。民族としての誇りがあるわけだから、その国籍を捨てろというのは、人道にも反した見方だ。


■金大中大統領の訪日をどう迎えますか。

 戦後五十数年経ちながら、過去の不幸な歴史についてきちんとした事実認識をしてこなかったと、金大統領がおっしゃっているが、当然のことだと思う。

 歴史というのは、人類共通の歴史として残していかなくてはならないというのが、私たちの基本的な認識だ。

 日本にとって都合が悪いとか、一部の人の都合のいいように事実認識を積み重ねていくというのは、それは歴史ではなく、小説になってしまう。

 普遍的な事実をきちんと裏付けを元にして積み重ねていくべきだ。歴史は本来一国だけに通用するものでなく、人類全体に通用するような共通の歴史を残していかなくてはならない。歴史認識を誤ると、未来の歩むべき方向をまた誤るということになる。

 金大統領の訪日を契機に、今世紀中に人間としての信頼関係が築けるようなものにしたい。

 国と国との関係といっても、究極的には人間と人間の関係が基本になるから、誠意を持って対応すれば友情が始まるし、国と国との関係もそこを発想の原点にしたいと思う。


■二十一世紀の日本と在日同胞の役割について。

 人間よりも国家や制度が大事という逆転がまかり通った結果、二十世紀は戦争と暴力とイデオロギーの時代になった。その世紀に訣別して、平和、福祉、環境、人権のために貢献できる国づくりをめざすべきだ。それがヒューマニズム。

 国籍を超え、あらゆる差別を超え、人間が大事にされる世紀にしていきたいし、その中核を成すのが日本の役割だ。軍事大国化や経済至上主義、一国至上主義であってはいけない。

 在日韓国人はまさしく二十世紀の不幸な歴史の中で、人間として扱われない思いを身を持って経験してきた。

 「一番不幸な経験をした者が、一番幸せになる権利がある」という言葉をある指導者が述べたが、人間主義のために思いを同じくすることができると思う。

(98.9.30 民団新聞)



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