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共生社会へのステップ



 在日同胞が最も多く住む大阪から明るいニュースが飛び込んだ。

 大阪府人事委員会が十月二十八日、府職員への外国人採用を規制している「国籍条項」を警察部門を除く全職種で撤廃し、これまで日本人に限ってきた一般行政職などの採用試験で、外国人に受験資格を認めることを決めたものである。

 公務員採用試験の国籍条項を撤廃するのは全国の都道府県では、神奈川県、高知県、沖縄県に次いで大阪府が四番目で、大阪府内では、すべての市町村で国籍条項が撤廃されたことになる。

 一部の職種・職階に制限を設けているものの、民団の地道で粘り強い要望活動が実ったものであり「共生社会実現へのステップ」として今回の大阪府の措置を歓迎し、他の自治体にも波及していくことを心から願いたい。


「地域住民」として認められる

 ちょうど二年前の十月二十六日、民団は創団五十周年大祝祭で「共に生き、共に育み、共に創ろう」とのスローガンを掲げ、地域住民の一員として日本社会との共存・共栄をめざしていくことを誓い合った。

 また昨年十月、大阪で開催された「なみはや国体」で、「大阪は全国で最も在日同胞が多く住む街であり、われわれ在日韓国人も地域住民として国体の成功に参与したい」と申し出た民団の趣旨に府側が理解を示し、オリンピックの聖火に値する国体の炬火(きょか)リレーや開会式のアトラクションという公式行事に在日同胞が初めて参加した。

 そして今年十月、金大中大統領が日本国を公式訪問し、小渕恵三首相との首脳会談で共同宣言「二十一世紀に向けた新たな韓日パートナーシップ」とこれを具体化する「行動計画」に署名した。共同宣言には「在日韓国人が両国国民の相互交流・相互理解のための架け橋としての役割を担う存在」との認識も盛られた。

 金大統領はまた、国会演説をはじめあらゆる機会を通じて「在日韓国人が今後、日本社会により多く貢献できる立派な構成員となれるよう、制度的条件と社会的雰囲気がさらに改善されるよう」と地方参政権の実現を訴えた。


パートナーシップへの契機に

 金大統領の訪日終了から間もなく、韓国政府が日本文化の開放の基本方針を発表した。このような時期、大阪府の国籍条項開放はまさに、在日同胞と日本市民との「パートナーシップ」確立に向けた大きな一歩と言える。

 祖国解放直後、異国の地で暮らす同胞が相互扶助の精神によって創られた民団は、日本社会での差別と闘ってきた。そして一九七〇年代から本格的に在日同胞の権益擁護運動を展開した。


地道な活動が実を結ぶ

 当時、在日同胞に対して二百項目をこえる行政差別が存在していたが、民団の運動によって一つひとつ勝ち取り、現在ではそのほとんどが撤廃されていった。同胞が団結し地道で粘り強い活動を続けてきた結実と言えよう。

 二十一世紀初頭、韓日両国には「二〇〇二年ワールドカップ」の共催という大きな共同作業がある。成功のためには両国国民の心と心のパートナーシップが不可欠である。

 そのためにも、両国の架け橋的役割を担う在日同胞を地域社会の構成員として認める日本社会の変化を望む。

(1998.11.04 民団新聞)



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